「マリオネットの心」が突き刺さる アイマスクエストⅣ 112話 「時は来たれり」 感想

アイマスクエストⅣ 112話 第八章16「時は来たれり」

「呼吸を忘れそうになるほどの緊迫感! アイマスクエストⅣ 107話 「激昂」 感想(後半)」
107話の感想記事にこんな(↑)タイトルをつけていましたが、今回もホントヤバかったです。
二転三転する物語に翻弄され、その度に心臓がバクバクし、
衝撃的なラストにしばし凍りついた後、プハァ〜っと大きく息を吐く……そんな感じだったかなw
一つの動画を見るのにここまで体力を要するとはなー、自分でもびっくりです。
もう今のマスクエは生半可な気持ちで向き合っちゃいけない。
毎回己の全身全霊を持ってして、視聴に臨むべきなのだと思わされました。
……いや今までもそのつもりではあったんですがw

(以下ネタバレ注意!)

春香の成長

本題に入る前に、まずはジャブ的な話からw
中盤以降のインパクトで多少吹き飛んじゃった感がありますが、今回最初に目を惹かれたのは春香の成長ぶりでした。

ニフラムの新カットインは、派手すぎ無い程度に神々しい仕上がりで素敵)
すっかり安定して見ていられるようになった呪文詠唱、凛々しい顔つき、あずささんが隔離されたときの判断力などなど。
  
(この辺の顔グラ凄くいい!)

特にイオラのシーンは「おおっ、何か春香が凄く頼もしい!」と思った直後に、雪歩と伊織がそのようなことを言い出したので何だかドキッとしましたw
そしてその成長ぶりの象徴ともいえるのが、フレイムドックの集団を一人で引き受けるシーン。
「私に任せて先に行け!」という春香の姿も勿論ですが、
それ以上に、“あの”伊織がそれを即座に受け入れたというのが凄く印象的。
パーティを引っ張る頼もしきリーダー・「勇者」としての成長が伺えました。
そこにはもちろん5章から積み上げてきた様々なものもあるのでしょうが、
閣下の消失、そして彼女の真相を知ったことが強く繋がっているのではないかと思います。
今回って春香が閣下の全てを知った後の初戦闘回だったんですよね。
美希周辺がメインになる回でも、109話を経ての春香の変化がはっきりと分かる描写を忘れないところが素晴らしいなぁと。


閣下の真相を知った後の変化といえば、「進化の秘法」関連の知識も深まっているようでした。
何せ秘法を極めた者の道のりを一通り見てきた訳ですからねー。
そしてそんな春香が秘法の力に対して見せる、憂いを帯びた表情が胸に迫るものがありました。
閣下が背負った秘法の苦しみをその目で、心で味わってきたことは、やはり春香に影響を与えているんだなぁ。
今回は他のパーティメンバーも、かつて闇の力に屈してしまった雪歩、
その雪歩のかけがえのない仲間であり、彼女を救い出した伊織という具合にそれぞれが異なる視点から「闇」と関わった人間であり、
それぞれの立場から美希に向ける感情の違いがとても印象的でした。特に春香と伊織が。

姉妹対決

直前のいおみき魔術師対決にも心躍りましたが、(美希が伊織との因縁を覚えていたのが何か嬉しかった)
やはりモンバーバラ姉妹が対峙するときの感傷は格別というか、何というか……

長い見つめあいから戦闘シーンへ移行し、ジプシーダンスが流れ始めた瞬間の高揚は忘れられません。

「実際この2人が戦うことになっても、美希のメラゾーマで1ターンキルになっちゃうよなぁ」
と思っていたんですが、伊織たちとの戦いで美希にドラゴラムを使わせておいたことによって、
あずささんが善戦できるようにしたのは実に上手いなぁと感心しました。

「タロットでザコを退治+美希を鈍らせる」→「バギクロス(新カットインつき!)」→「フバーハでブレス軽減」の流れの美しさといったらもう。
ドラクエのシステム内で魅せきるておくれPの戦闘描写はやっぱ最高ですわ。

しかし結局美希が人型に戻ってしまえばあずささんに勝ち目はなくなるわけで。
美希がメラゾーマ(?)を放って「ああああああ、あずささんがああああああ……」
と思ったらまさかの光のドレスが跳ね返した瞬間には思わず「おおっ!」と声が出ちゃいましたw
Pからのプレゼントであるあの防具がここで活躍するとかもう、ね。
ここで一瞬だけ希望が見えたような気がしたんですが、しかし……

マリオネットの心

アイマスエストという物語は、時にアイドルに対して本当に容赦なく牙をむく」
そんなことは分かっていたはずでした。
でも、それでも、僕は心の奥底で、きっと美希を巡るこの一連の物語は、ハッピーエンドに繋がるのだろうと信じていたんです。

しかし、今回の展開はそうした希望を摘み取っていきました。
ておくれPは作劇において、「キャラクターの感情」を指針にしていると人気投票動画で語っていたよう記憶しています。
ピサロのことを第一に考えており、彼のためなら自己を犠牲にすることすら厭わない美希。
美希のことを大切に思い、彼女を犠牲にする道も、彼女の想いを無駄にする道も選べないあずさ。
美希が自分の変わりになることなど当然認めず、問答無用で止めようとするピサロ
三者がそれぞれ自分の感情に従って行動した結果があれですよ。
ピサロの行動は責められるものではないのですが、
彼は意図せずしてピサロのために一度ロザリーヒルを美希の想いや、
静寂の玉を受け取らなかったあずさの決意を無に帰してしまったんですよね。
そりゃあずささんも怒るよなぁ。前回あれだけ美希の想いを大切にしていたのに……
そしてピサロが運命への抵抗手段として編み出した彼自身の殺害と、それに助力するというあずさの決意は、ピサロを大切に思う美希によってやはり防がれてしまいました。そして、運命は元の道へ……
マスクエ世界における「運命」の強固さ、無慈悲さを改めて思い知らされた気分です。

視聴者の僕にも大ダメージな展開でしたが、美希の味わった痛みはそんなもんじゃないですよね。
今回のておくれPの製作後書きには、一言こう書かれています。

「『マリオネットの心』を全力で演出した」

その身を削りながらも世界の運命に必死に抗い続け、しかし翻弄されるだけの結果に終わった美希。
その姿と、「マリオネットの心」の歌詞が悲痛なほど重なります。


闇も、自分の感情も制御できなくなり、それを象徴するかのように膨れ上がっていく魔法のエネルギー。
ピサロから必死に逃れようと抵抗するも、どうにもならない無力感。
そして腕輪を奪われ、糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちる……
この辺の流れはもう、見ていてとても平常心ではいられなかったです。
「何もできない それがマリオネット」「心がこわれそうだよ…」のフレーズがもう重たくて重たくて……

今回は美希の生み出す魔物がフレイムドック(+ホイミスライム)のみであったり、光のドレスの件であったりと、
8章が「マーニャ編」の続きでもあることを改めて意識させられたので、
美希が報われないまま終わったあの続きが、こういう風に展開していったことはホントむごたらしい。
……けれど、それでも、ピサロを守ろうとするその意志だけは、消えることはありませんでした。
「こわれそう」だった心は、まだ「こわれてしまった」わけじゃない、そうですよね?
マーニャ編」はまだファイナルを迎えていない、きっとそうなんですよね?

アイマスエストは「曲が織り成す物語」です。
110話の感想では、「マリオネットの心」がある状態でこの展開を迎えることができて幸運だったと書きましたが、
今回は逆に、この曲がなければまた違った形の結果になったのかなぁなどと思ったり。
もちろん今回の展開は曲に合わさって物凄く胸を打つ強烈なものになったし、後のカタルシスの増幅にも繋がるでしょうけど。
アイマスエストという物語がどういう方向に向かっても僕はついていく所存ですが、
今までの美希の行動が、想いが、何らかの形で実を結ぶような展開になってほしいなぁと願わずにはいられないというのが今の心境です。

時は来たれり


今回ついに、最初の帰還者が出てしまいました。
大魔道の登場で「ひいいいいいいいい」、
ロザリーを狙う悪党コンビの登場に「うわああああああ」、
そして社長帰還のお知らせに「ぎゃあああああああああああ」という具合で、何度も続けて心の中で悲鳴をあげていましたw
何という恐ろしい畳み掛け……
特にあの帰還の知らせは、例のBGMとも相まって強烈すぎますわ。

社長というキャラクターは、ある種この物語における平和の象徴というか、平穏を守る鍵のような位置にいました。
(アイドルがこの世界にくる原因を作ったとか、そういうことはひとまず置いておいてw)
原作設定よりもはるかに強化された彼がいることで、ロザリーには簡単に手出しできない。
そしてロザリーが攫われなければ、原作におけるピサロの地獄の帝王化のきっかけは作られない。
……しかし今回そんな社長の死により、ついにその引き金が引かれてしまったわけです。
そうなるともう、不吉な予感ばかりがしちゃうわけですよ。
そういうところに社長の存在の大切さを改めて実感しますね、ええ。

しかし社長を撃破したと思われる大魔道は、未だに謎だらけで不気味ですなぁ。
今回奴は社長を倒した後ロザリーを攫ったのか? それとそのまま去ったのか?
前者の場合、ロザリーに何か目的があったことに。
後者の場合、人間にロザリーを攫わせることによって予言を進める目的があったことになるのかな?
どっちにしても、まだはっきりとその真意が見えてこないなー……

姿を消したロザリーの方も気がかりですね。
仮に彼女が原作同様の展開を迎えることになってしまった場合、ピサロもやはりああなってしまうのかな?
ただ、今のピサロは黄金の腕輪を「2個」所持しているため、
「理性を失った不死身の怪物」になるとはまだ限らないんですよね。う〜んでもしかし……不吉な妄想が止まらなくて僕の心も壊れそうw
不安を抱えてモヤモヤしながら、次回がくるのを待つことになりそうです。

ただ、今回は希望を持てる描写もありました。
前述した春香の成長もそうだけど、何よりロレンスらNPCたちの会話。

簡潔かつユーモラスにロレンスの心境の変化を描いたあの会話は、ておくれテイスト全開で視聴者にも僕にも好評だったわけですが、
今回運命の無慈悲さを痛感した後で改めてあのシーンを見ると、いろいろとこみ上げてくるものがあります。
異世界の者は運命を変えられる可能性がある」という設定は、今のアイマスエストにおいてのか細い希望の糸です。
この文言、一見するとドラクエ世界の者たちはただ運命に従うだけのように取れます。というか僕はそう思っていました。
しかしもし、異世界の者たちの影響を受けることで、彼らにもまた間接的に運命を変えていける力が備わるとしたら?
少なくともロレンスが「運命」というものの存在を感じ取れるようになったのは、
原作ではありえない「魔物と人の共存を目指すピサロ」がプロデューサーとの融合により誕生したからでしょう。
だからこそ、そういう期待を抱かずにはいられないわけです。

……ああそうそう、今回の会話で気づいた、というか思い出したんですが、ロレンスって吟遊詩人なんですよね。ぶっちゃけ完全に忘れてましたw
マスクエのあのロレンスを見ているうちに、いつの間にか原作で抱いた彼に対するイメージが変わっていったからなのかもしれません。
マスクエのNPCキャラクターたちって、オリジナルにはない魅力が発掘されていたりしてホント大好きなんですよね。
そういう意味でも、彼らが運命の輪の中に巻き込まれていったら面白いかもなぁと思ったりw