「天空の勇者」の物語がそこに アイマスクエストⅣ 115話 「その血、何を継ぐ者か」 感想

アイマスクエストⅣ 115話 第八章19「その血、何を継ぐ者か」

ちょっとリアルがごたついてるので感想書く時間がなかなかとれなかったんですが、
本当は今にも語りたくて仕方ないような、素晴らしい出来栄えの一話でした。

以下ネタバレ含みます!

今回の肝はもちろん春香の揺れる心情や戦う姿なわけですが、
それ以外にも様々な見所があり、特にドット絵の芸が光りまくっていたので、
時間に沿って順々に拾っていきたいなーと思います。というかマスクエ感想はもう毎回そうした方がやり易いかもねw

まず最初はvsダースドラゴン
あずささんのフバーハがあるからだいぶ楽に戦えるかと思っていたんですが、必中ラリホーが鬼畜すぎるw

しかし春香のマホカンタ&ザメハで一気に状況が好転。
かつてザメハがここまで役に立ったことがあるだろうかw
これで最大の障害ラリホーを無力化し、ブレスもフバーハで軽減して楽勝ムードに。
ここにクリフトのベホマラーが加わればもっと盤石だったかな?
ダースは火力も妨害魔法も一流ですが、一ターンに一回しか行動できない点で他の強敵よりもやや見劣りしますね。
そこを補っているのがあのラリホーだったんですが、春香と相性最悪だったんだなぁ……w

この勝負は上述した春香、あずさ以外も皆それぞれの役割を果てしていて素晴らしかったです。
一ターンで300超のダメージを与えた千早は本来ならライアン、マーニャよりも上を行く最大火力アタッカーの面目躍如。
退場前にルカニバイキルトでそのお膳だてをした伊織の仕事も忘れてはいけません。
そして状態以上回復、庇護、妨害、随所で光っていたやよいの働きぶりはさすがの一言。
キャラクターが基本その場の状況に応じて最適な行動をとってくれるマスクエ世界だと、トルネコの柔軟さはかなり活きてますね。

場所は変わって、大魔道との戦い。
前回は雪歩の凛々しさと、闇堕ちトリオ揃い踏みの構図に熱くなった一方、
このメンツでも大魔道に勝てる気がしないなぁと不安に思っていたんですが……うん、やっぱとんでもなく強いわあいつw

まずこのドット絵の強敵感がもうヤバいですよね。
左右のキースドラゴンといい、おそらくアイドルとエビたちの両方と闘っていることを表現しているんでしょうが、
そういうの抜きにして単純にめちゃくちゃカッコいいです。
エビルプリーストとの差別化もできるし、もう戦闘グラはずっとこれでもアリなのではw

ゆきまこを先に倒したこともそうですが、大魔道が仲間のキースドラゴンまで倒したのは、やっぱり美希に対して何かの目的があったんだろうか?
この期に及んでまだ美希に一波乱あるんかい…とハラハラしたところでのピサロ登場はまあ予想の範囲内でしたが、でもあの専用BGMも相まってやっぱり燃えました。
というか最近ピサロはこの遅れてくるヒーローみたいなポジションが板についてる気がw

ピサロvs大魔道は現状表舞台にいるキャラのなかではずば抜けて強いトップ2なわけですからその戦い自体も胸熱でしたが、

この暗黒回廊に引きづりこまれそうになるピサロの図がカッコよすぎる。どんだけドット絵演出拘るんだよとw
去り際に邪神の像を使って呼び寄せた魔物たちに「村を滅ぼせ」と命令した大魔道には
「やることしょぼくね?」みたいなツッコミが入ってましたが、
ラストでも言っていたように春香さんにルビスの光を使わせることが目的だったんですね。
その目的の不透明さや、エビにも同様の力が使えることを示唆して嫌なフラグを立てるなど、もうこいつの何もかもが恐ろしいw

というか大魔道退場の時点ではまだそれほど危機感は無かったんですが、

この構図の絶望感はヤバイ。もうモニターの前でブルブルと震えあがってましたよ……。
こういう演出ってたしか初めてですよね。ここまでやってくることに、製作陣の今回のエピソードにかける想いの強さを感じ取ったワンシーンでした。

これはいくらなんでも無理だと撤退を選択する勇者たち。
しかし一人だけ村に残っていることが発覚し、迎えに行く春香。ここからが彼女のターンですね。

この一言が凄まじい。マスクエは台詞量が少ない分、一言一言の重みが物凄いんですよ。
あのときの閣下はまだパーティメンバーにとっても、春香にとっても「勇者」だったんだよね。
ひたすらに無力だった春香には、その姿は理想像にも映ったかもしれない。
また同時に、今の春香にとってもなお閣下は「勇者」なのだろうか……とか、そういったいろんな含みを感じられる強烈な一言でした。


ここの会話では農民に対して非難が飛びまくっていましたが、個人的には責める気にはならないんですよね。
そりゃ彼を守ろうとしている勇者サイドの視点に立てば苛立つ行為だとは思いますが、
「例え命があっても、あの畑がめちゃくちゃになるのを指をくわえてみていることはできない。
 だから勇者と一緒に逃げるよりも、それを守るために戦うことを選択する」っていうのは、
まあ愚かではあるけれど、でも彼の譲れない信念に従った故だと思うんですよね。

彼のために春香が絶望的な戦いに臨むことになってしまったという結果に目が行きがちですが、
ここで一番重要なのは、
「勇者様は魔物を退治してくれるんで無いのかー」って発言なのではないかと思います。
彼らにとって、勇者とは人間の驚異たる魔物を打倒してくれて当たり前という存在なんですよね。
なぜなら、この世界はそういうふうにできているのだから。
きっと勇者は同じ一人の人間ではなく、よくいえば神、悪く(?)いえば世界のシステムの一部とか、そんな風に見えているのではないでしょうか。

そしてここでさらにのしかかってくるのが、前回の大魔道の発言。
天空の勇者と、春香さんがそれまで見てきたアレフガルドの勇者たちの違い。
強さの面においてもそうですが、その原因となっている血筋的な部分の差異も大きいですよね。
彼らは血統によってその力を引き継いでいた、ある種唯一無二の存在ともいえる者たち。
大して春香はとある天空人の一人と、とある木こりが交わってできた、それだけの存在。
まあ混血という点では特殊ではあるんだけど、でも……ねぇ。

それなのに強大な敵と戦わねばならない宿命を背負い、
民から称えられはするものの、同じ一人の人物として見てもらえることは無い。
そして戦いを終えれば、世界の都合によって抹消されてしまう……ある意味人柱みたいなもんですよね。
そんな感じのアレコレが頭の中で渦巻いていて、もう何が何やらってのがこのときの春香の心情だったんじゃないかなー、というのが僕の考え。
まあそれは完全に言語化するのは不可能なほどにいろいろと複雑なものだったんでしょうが。


んでね、そんな中でもこうやって立ち向かっていく春香がね、もうたまんないのよ。
何もかも分からなくても、でも、彼女は痛みを知っているから

さらにここで、「勇者の戦い方」を演じてみせるという熱すぎる展開。
トヘロス三連発に合わせて蒼い鳥が流れ出した時はそりゃもう鳥肌ものでしたよ。
回想シーンなんかなくたって、自然に頭の中に93話のあのシーンが流れますよね、ええ。
やよいが「トヘロスだ!」って反応するのがこれまた素晴らしい。

しかし今回の相手は、質も量も絶望的過ぎたわけで。

この春香がギガンテスに吹っ飛ばされるシーンとか、もう無力感とか悲壮感とかそういうアレコレで胸が痛くて痛くてしょうがなかった……。
春香も必死でくらいついてるけど、でもこれはいくらなんでもどうにもなりそうに無い。
美希が助けにくる、ピサロが助けにくる、ルビスの光を使っちゃう……そんな感じで次の一手をいろいろと考え始めていました。

……そうしたら、アレがきた。


あまりの出来事に、「な、何が起きたんだこれは……」と戸惑い凍り付いていました。
そしたら次の瞬間、空には光がさし、地には神竜のような何かが現れている。
そして、それは春香が変身した姿であることが分かる。
なんだこの展開はと呆然としていたところに、マスタードラゴンは言う。
「天空人の血に眠る、神竜の力を引き出すとは…!」と。
さらに伊織が言う、「これが『天空の勇者』…なのね」と。
春香変身の展開そのものも凄かったけれど、それ以上に僕はこの両者の台詞に痺れ、震え、胸打たれました。
「天空の勇者」について思い悩んでいた春香は、
それまでの勇者には無い、「天空の勇者」だからこそ持つ力で、この絶望的な状況を打開してみせた。
そのアンサーの何と素晴らしく、美しいことか……もう感動を抑えきれなかった。
「その血、何を継ぐ者か」 っていうサブタイトルも振り返ってみるとめちゃくちゃ素晴らしいですね。
完全に予想の範囲外を行った、けれど最高の展開でした。
そうだ、ておくれPのシナリオはいつだって僕の予想をはるかに超えていくんだよ。

「まばゆい光が降りそそいだ」
まず、勇者に「まばゆい光」が大ダメージ(1000前後)を与える。
通常ならそこで勇者が戦闘不能となり、効果終了となるが、
このダメージに勇者が耐えきった場合のみ、勇者が「光かがやく竜」となる。
ダメージに耐えきるには、スカラで防御力を限界まで上げることが不可欠。
変身後はマヒャド、こごえる吹雪、冷たくかがやく息を使用、操作は不能になる
(「パルプンテによって起こる現象」より引用させてもらいました)

今回取り上げたパルプンテの効果はこれみたいですね。
試しに手元にあったDQ5(DS版)で試してみたところ、500超のダメ―ジをくらって即死しました。
うん、そりゃこんな効果知らないわけだw パルプンテ自体あんまり使う機会無いしなぁ。
というか5の主人公でも使えるってことは、よく考えてみればこの効果に天空人の血がどうこうってのは関係無いよね
おそらくはておくれPのオリジナル設定なのでしょうが、むしろだからこそ、この効果をそういう風に設定して活かしてきたのが凄いなぁと感心しました。
ドラクエという素材の調理の仕方がホント上手いよなぁとつくづく思わされますね。
ニフラムトヘロスマホステ、そして今回のパルプンテ……どうしたらそれらの呪文をあんなにも劇的に演出する発想が出てくるのだろうか……。

そんな春香の戦いぶりや予想を超えた展開への感動を味わいつくし、一息ついていたところで、ラストにまさかの律子石化。
僕はマスクエ見るときはモニタサイズで拡大して残り再生時間が分からないようにしてるので、
あんな風にしてオチをつけてきたのには完全にフイをつかれました。
つーか「さらば! マスタードラゴン!」の次回予告が全然ギャグになってなかった件(^_^;)

このときの律っちゃん、いったい何を想っていたのかなぁ……。

後書きからしてもやはり律子(+マスドラ)はしばらく物語から離れるっぽい感じですが、
8章始まってからずっとパーティを先導していた彼女を失い、アイドルたち果たしてどこへ向かうのか。
今までの例からするに、策を練るのは伊織、最終的にパーティを引っ張るのは真というのが順当に思えますが、ここは勇者春香さんに期待したいところ。
また、今回の一件を超えた後の春香の心の向かう先にも注目ですね。

上述したように今回はておくれPのシナリオに、
また、凝りに凝ったドット絵演出をはじめとした様々な演出にも心動かされた、まさに渾身の一話でした。
どこまでがておくれPの仕事で、どこまでが支援スタッフの仕事かは分かんないんですが、もうとにかく製作陣全員に感謝と賞賛の言葉を贈りたいです。
そして、どんどん高くなっていくクライマックスのハードルに期待と不安が……w