そこに生まれる感情は「やり切れなさ」 アイマスクエストⅣ エスターク物語 後半 感想


※ネタバレ含みます!

やー何というか……やっぱりくるなぁ、うん。
結末は既に分かっていて、前編から一週間の準備期間があったわけだけど、それでもねぇ……。


魔物の生まれない世界に希望を抱き、明るい展望を語る閣下。

大魔王の予言に苦しめられながら、人間を信じて耐え抜く閣下。
そんな姿を尊いと思いつつ、これから彼女を待ち受ける現実を思うと悲しみを感じずにはいられない。
そして案の定、訪れてしまった無慈悲な結果。
「せかいは やみに かたむいていた」
その一行、たった14文字の文章のなんと絶望的なことか。
ここまで閣下のあんな姿をみせられた後でこれはキッツイわな〜……。

この辺の過程は多少端折られ気味でしたが、
108話にあった閣下が人・魔物の両者から迫害されたり、
タロットの力を使って闇を抑止したりするシーンなんかもこの間に入ってくるんでしょうか。
改めて過去の回を見返すと、いろんなシーンがより印象的になりそうですね。
そういや今回の冒頭ではまだいなかった魔牛王が終盤では閣下の右腕ポジションに収まっていましたが、奴がいつどのように閣下の配下になったのかも気になるところ。


今回最大の肝である「地獄の帝王」誕生シーンはちょっと予想外というか、なるほどそうきたかという感じでした。
僕は閣下が神々の策略にハメられて秘法が暴走、
閣下は怒りと悲しみを胸に、春香の登場と同時にあの肉体から抜け出してエスタークと別れる……みたいなのを予想してたんですが、
実際はマスドラとエスタークが共同して閣下の封印を成し遂げたわけだったんですね。
でもこっちの方が96話の、あの閣下のエスタークに向けた怒りへと自然に繋がりますね。
あのシーン、最初見たときは「あの肉体に今まで閉じ込められていたこと」に激昂しているのかと思いつつ、どこか違和感を感じていました。
その後108話でエスタークが2重人格だったことが明かされて、「ならアレは男エスタークに向けた怒りなのかな」と認識を改めて、
そして今回でようやく、彼女の真意を完全に掴むことが出来ました。
約3年越しで判明する真実かー……マスクエのストーリーの重厚さをしみじみと実感します。

「地獄の帝王」のシステムが、結果的に世界の延命に繋がったというのにも感心しました。
「3→1→2」とドンドン魔物が強くなっていったということが以前語られていましたが、
つまり時間が経つごとにどんどん世界の闇への偏りは強くなっていったというわけで、それに歯止めをかけたのがあの行動だったと。
ておくれPの世界観の構築や設定の使い方はほんっと上手いですねー。
独自設定の「闇」を通した作品間の繋げ方の巧みさに唸らされました。

彼の行動の顛末や神々の語りに合わせて、エスターク城が我々の知るあの姿に変貌する一連のシーンの見せ方も凄い。
グラフィックのこの力の入れようとか見ても、単なる「小話」の枠に収まるようなエピソードじゃないことは自明の理ですねw

「魔王の器」でありながら、結果的に自らを犠牲にして閣下も世界も救ったエスターク

闇を吸い続けるあのシステムって、彼の語っていた「エスタークの呪い」を実現させたとも言えますね。
何というか……皮肉な話だなぁ。
閣下が「大層な名前」と言い放った、『地獄の帝王』って名称も今思うといろいろと深いものがあります。
まさにその名の通り、彼は「地」の底の「獄」の、永遠の囚われ人になってしまったのだから。

そんなエスタークに怒りの雷撃を向け、そしてルビスの光により解放した閣下。

腕輪を外した時は、もう闇の浸食と世界(人々)へのショックのダブルパンチで限界が近かったんでしょうね。
でも、それでも神々やエスタークに怒りを抱き、そして春香の肉体を借りて再び闘いの日々に戻ってきた彼女。
自己犠牲を選んだエスタークの選択に対する怒りというのもあるんでしょうが、
それ以上に、「地獄の帝王」という仕組みに対しての怒りというのがあるんじゃないかなー。
エスタークは世界のために永遠に苦しみ続けなきゃいけないわけだし、
それに彼女が望んだ「勇者の生まれない世界」は成し遂げられていないわけだから。
だから彼女は再び闇に苦しみながらも、ギリギリまで「勇者の生まれない世界」を作る術を模索する道を選んだのでしょう。
というか閣下は春香が来るまではエスタークの体の中にいた(?)わけだから、
苦しみ続けるエスタークの姿や、それを倒し眠らせる勇者の闘いをずっと見ていたってことになるはずですよね。
そうだとすると凄い話だなぁ。

エスターク撃退後にこう語り、春香の光を借りてエスタークを滅した閣下。
表面的には黄金の腕輪を手に入れるためだったけれど、今となっては一人の賢者を苦しみから解放するためにも見えますね。
そしてこの表情に以前とは違う感情を見出し、いろいろと切ない気分に浸っていました。

エスタークの選択も、それを認めない閣下も、どちらが間違っているという訳では無い。
このエピソードに徹頭徹尾漂っているのは、
アイマスエストの世界や物語を支配する「やり切れなさ」ではないのかと思います。
どんなに抵抗しても、結局は悲劇へと繋がっていくこの世界。ほんっとやり切れないよなぁ。
もう僕の今回のエピソードに対する感想はその一言に終始しますわ。
改めて3:04〜からの2人の会話などを見ていると、ただただそんな「やり切れなさ」に唇を噛みしめるばかりです。

そして投票所でひっそりと公開されていたこの憂い顔に、そんな思いを再び爆発させたのでした。

……だからこそ来週から再び繰り広げられる本編で、
きっと我らがアイドルたちがそんな仕組みをぶっ壊してくれることを願わずにはいられないのです。
うん、ホントただの小話で済むようなエピソードじゃなかったわ。いろんな意味で。