ズシリと重く響くワンシーン アイマスクエストⅣ 117話 「怖くない魔物」 感想


再生時間10分50秒。
6章辺りの頃はこのくらいが普通でしたが、最近だとかなり短めの部類に入りますね。
いろいろ詰め込んで31分だった113話などと対照的に、
一つ描きたいテーマがはっきりしていて、それに要する描写量が少なかったからかな?

※以下ネタバレ含みます!

「魔物が人を襲わなくなった世界」がどういう結果を辿るか。
なんとなく予想はついてたし、春香が「魔物狩り」というワードを持ち出した時もああやっぱりなーって感じだったんですが、

直後のこのワンシーンは刺さりました。めっちゃ刺さりました。
これから「魔物狩り」の様子を、それに対してピサロがショックを受ける姿をじわじわと見せていくのだろうと思っていたら、
このワンシーンだけですべてを語ってみせたわけです。
今回が短い時間で収まったのも、このシーンの圧倒的な説得力によるものかと。

「魔物の衝動を抑えることで、人との共存を図る」
それはこれまで長い時間をかけてマスクエが描いてきたピサロの目的であり、そしてこのピサロタウンはその象徴でした。
それがこういう形で失われるというのは、ピサロにも視聴者の僕にとっても非常にショッキングな展開ですわ……。
切られた魔物がみんなうつ伏せで倒れているのがまたグサッときますよね。
抵抗することもできず、ただ逃げるしかなかったんだなーと。
でも別にこの2人の人間が凄く非道な奴だったとかいうよりは、
「魔物と人は分かりあえない」そんなこの世界の悲痛な宿命の表れって感じじゃないかと思います。
だからこそエスターク帝王も、その一方を消すことで世界の仕組みそのものを変える手段を選んだのでしょう。
これ、特に真美とかにとって凄くキツイ話だよなぁ。

「躊躇なく人間を切れる」と話していたピサロは今回ついに人殺しに手を染めるのかと思っていましたが、そうはなりませんでしたね。
ギリギリのところで最後の一線を越えずに済んだとか安堵してもいいのだろうか。
それとも、切ろうが切らまいが関係なくもう手遅れなんだろうか。
いずれにせよ、目指す未来が壊れてしまったピサロの今後の動向に不安が募るばかりです。

そういえば今回の後書きに

Q.「何で、この展開にしたのですか…?」

A.「DQⅣだから」

と書かれていまして無言で頷きました。
悲劇や理不尽さに溢れた物語であり、
シリーズで唯一ピサロという敵側のリーダーの物語がフィーチャーされており、
倒すべき敵が「絶対悪」ではなく、
そして人間側の悪意がラスボスの誕生へとつながっていく。
DQ4がそういう作品であり、
そしてアイマスエストが原作の奥へ奥へと掘り進んでいる作品だからこそ、このような展開は避けて通れなかったんでしょうね。

そして一方で、惨状を目の当たりにしたギガデーモンが暴走してしまう展開に。
ピサロタウンを襲った2人が真っ先に逃げ出していくのが何とも言えない。

ここのドット絵の仕事は素晴らしかったですね。拳を握りしめてるとことか。
ギガデーモンの「怒り」が全身から伝わってきました。
美希や亜美との友好関係もあったこいつと対立するってのはキツイなぁ。
ちょうどその両者は別行動中なわけですが、戦闘中に駆けつけてくることになるんだろうか。
反応が気になるところだけど、でも2人とも巨大化した真の姿の方は知らないかもしれませんね。その場合……。


美希と言えば、久々にモンバーバラ姉妹の明るいやり取りが見れたのが嬉しかったです。
その直後の、美希がロザリー捜索に焦る様子はちょっと胸が痛かったけれど。
しかしここのドット絵の、ちゃんとドラゴン美希があずささんを乗せて飛んでるのも凄いよなぁ。
何かもう8章以降のマスクエドット絵班の仕事はいちいち褒めてたらキリが無いレベルですねw


あと今回はやはり伊織ですね。
律子のいない状況で、こういう冷静な現状分析や後々への思案ができるのはやっぱりこの子だけだなぁ。ホント渋い役回りだw

そしてますます進むロレンスのキーパーソン化w
しかし、伊織だけが気づき、ロレンスを頼った「あの可能性」っていったいなんなんでしょうか。
2人の会話の引っかかった点を並べるとこんな感じかな。
(以下展開予想っぽい話も少し含むので、避けたい人は回れ右することを推奨します)

1.伊織と社長の相談は同じようなこと(?)
2.「勇者と魔王の両者が世界を滅ぼすことが出来る」というロレンスの分析に感心した(?)伊織
3.「ドラクエ世界の人間」の言葉が必要となる
4.「魔王と勇者の両方とお友達になればいいのか……」と言うロレンス

う〜ん、いろんな線が繋がりそうで、あと一歩届かない。そんなもどかしい感じです。
気になるのは2番目の点でしょうか。あの一言の後に空気が変わったような気がしましたし。
魔王はともかく、“勇者”が世界を滅ぼす選択ができるってのが何かこうモヤッとするなぁ。
考えられ意味としては、春香が「閣下を消さない」道をとることなんだけど、う〜ん……。
その関係で、4番目の点にも注目したいところ。
前回ロレンスは社長に、
「プロデューサーはこの世界の人間との関わりが薄すぎ、故に最悪の選択をする可能性がある。
だから彼の友人となってほしい」などということを冗談交じりに語っていました。
そして今回、ロレンスは「勇者と魔王の両方とお友達に」と言う。
この2つを並べてみると、もしかしたらプロデューサーと同じように、
「春香とこの世界の人間との関わり」というのも今後の鍵となってくるのかもしれない。そんなことを考えました。