「決別」を果たしたのは… アイマスクエストⅣ 119話 「決別」 感想


見終わった後、深呼吸を大きく二回ほど。
今回、特に中盤以降はもう見ていて息がつまりそうでした。
今後のアイマスエストは何かもう見るのに凄く体力がいりそうだなぁ。心がヘトヘトです……w
(以下ネタバレ含みます)

前回が最終決戦を示唆する回ならば、
今回は勇者かっかと魔王ピサロ、いま物語のもっとも中心部分にいる2人がそこに向けての準備、いや「決別」を果たす回ということになりますかね。

前回の引きに加え、「決別」というサブタイトル、それにサムネのイラストも合わさって勇者の方は予想できたんですが、
ピサロの方もそうなるとは思っていませんでした。
……いや、「そのとき」がそろそろ訪れること自体は予感していたけれど、あえて目を背けていたのかもしれない。


ロザリー・小鳥さんの帰還。言い換えると、死。
いや社長の時と違って直接的なメッセージとあの不吉なBGMが流れなかったのでもしかしたら……という可能性もあるやもしれませんが、
少なくともアイドルたち、そしてピサロの認識としては死亡扱いということで。

この夢のシーンはなんつーか……やられました。
ここで「プロデューサー」、そして「小鳥」を前面に出してくるのがもうズルいわぁ。

マスクエではアイマスキャラとドラクエキャラの人格が融合しているわけですが、
僕は特に意識せずとも、自然とそれぞれを「春香」「美希」などアイマス側の名前で表記しています。
でも、プロデューサーと小鳥さんだけは「ピサロ」「ロザリー」という表記になるんですよね。
それにはいくつか考えられる理由がありまして。
例えば、彼らが現実世界で親しいアイドルたちと距離を置いてまで、
「魔族の王・ピサロ」「ピサロを癒すエルフ・ロザリー」というそれぞれの世界での役目を果たそうとすること。
(社長は自然体だったのであんまり気にならなかったです)
それから、彼らを取り巻く周囲の環境。
アイドルサイドだと千早なんかはアリーナ側の影響が強くでているキャラですが、
彼女は雪歩や伊織など親しい者たちに「異世界の住人・千早」として扱われています。
一方ピサロはエビやヘルバトラーなどの関わりが多いキャラから「魔族の王・ピサロ」として扱われている、その違いが大きいのではないかと思います。

改めて書くのも面倒なので116話の感想から引用。
伊織が「役割を演じること」について語っていましたが、
Pと小鳥さんは特にそういった方向性が強く出ているキャラなんですよね。
今回美希やあずさに「ロザリー」と呼ばせていた辺り、ておくれPもそういう意識は持ってるんじゃないかと。

しかしここ最近、ピサロの物語を進めるうえで「プロデューサー」にスポットが当たり始めました。
今回だと、小鳥さんが「ピサロと融合した理由」を語るという形で。
表舞台で輝くアイドルたちと、裏で彼女たちを支え守るプロデューサー。
笑顔と歓声の中に身を置くアイドルたちと、その陰にある闇と戦ってきたプロデューサー。
だからこそアイドルたちは勇者一行となり、プロデューサーは魔王ピサロとなった。
マスクエ世界の芸能界はそんなにデンジャラスなのか、とかいう話はひとまず置いておいて、
なるほどそういう意味を持たせるかあとひたすら感心しておりました。
前回の荒川河川敷さんの感想で、
「閣下は再び『魔物のいない世界』の結末を試そうとしたが、Pはその必要が無かった。
何故なら彼は『現実の世界』の住人なので、その答えは試さずとも分かり切っていたから。
Pという存在があるが故に、ピサロは一足飛びで「人間を滅ぼす」という結論にたどり着けたのだ」
といったようなことが書かれていて目から鱗が落ちたりしたんですが、
ここ数話で「Pがピサロに融合した意義」がフィードバックされて、ピサロ側の物語に厚みを持たせているんですよねえ。

でも今回一番胸に突き刺さったのは、ここから「小鳥がロザリーと融合した理由」につなげたことでして。
実は僕、ここの小鳥さんにはそれほど思い入れが無かったんですよね。
それは彼女があまりにも「ロザリー」そのものに見えたから。
妄想ネタとかちょくちょく小鳥成分も顔を出してはいたんだけど、
でもあの塔の中で、ただただピサロのために祈り歌い、
あげくには「『音無小鳥』であることは捨てた」なんて語る彼女は、もう小鳥さんとして扱うべきではないのかもなーなんて。
他のアイドルたちと違って、スコットやロレンスみたいなNPCを見るような視線を彼女に向けていました。
むしろルーシアの方が本来の小鳥さんっぽくね?とか思ったこともあったりw

でも違った。
あのロザリーは、間違いなく音無小鳥でもあったのだと、今回のあのシーンで知らされたんです。
最後の最後に、ね……。
だから今こそ、この呼び方で一言、
「お疲れ様でした、『小鳥さん』」とそう告げてあげたいです。

それにしても……プロデューサーとピサロの融合にも、社長とアドンの融合にも、そして小鳥さんとロザリーの融合にも、ちゃんと特別な意味があった。
もちろんアイドルたち全員にもそれが当てはまることは、もう言うまでもないでしょう。
DQ4アイドルマスター、二つの作品のキャラクターをここまで擦り合わせたことは、ホントもうお見事と言う他無いですね。

そんなわけで、最後に「ただのNPC」では無くなったところで、小鳥さんは消滅しました。
社長帰還時と同じく、直後にあのBGMが流れるのでは……と身構えていたんですが、
ピサロの怒りが爆発する様子は、それにも増す恐怖の光景でした。
演出それ自体の恐ろしさと、そして今後の展開への恐怖も合わさって、何かもう寒気すら感じるようでした。
しかしあの暴れよう、あの宿屋がはぐれメタル級じゃなかったらとんでもない惨事になっていたのでは……。


千早の見る予知夢が、さらにそれを掻き立てていく。
物語としては積み上げてきたものを回収しているはずなのに、
逆に「今までアイドルたちが積み上げてきたものが、何もかも崩れ去ってしまう」そんな悲しむと不安がこみ上げてきました。
例えるならそうだなあ、
スラムダンクの山王戦で、河田兄に完全に抑え込まれるゴリを見ていた時の晴子さんの心境」みたいな感じですかね。
……いやこの例えはどうなんだろうかw

ピサロは人間を滅ぼす決意を固めた。一方勇者は。

春香が語る閣下への感謝。郷愁掻き立てる「勇者の故郷」のメドレー。
ついにこのときが来たかと、来てしまったのかと。
閣下が完全に不在の状況で最終決戦に突入してしまう、そんな光景をいろんな思いを巡らせつつ眺めていました。

が、しかし。
まさかのピサロの邪悪な波動によるキャンセル。
うおお原作のその展開を、ここでもってくるかー……。

次回、改めて春香が閣下を消すのかといえば、まあたぶんそう簡単にはいかんのでしょうね。
ここで前半伊織が雪歩に語っていたことが繋がってくるんだなあと、しみじみ納得しました。
ピサロがこういう状況になった今、きっと春香は再びピサロと閣下という二つの存在を前に悩むことになるのでしょう。
だからその前に伊織は春香に光を使わせたかった。使わせてあげたかった。
「選択は後になるほど、辛くなるのよ」か……。伊織は本当に聡い子だなぁ。


それにしてもピサロが開けた穴、原作よりもはるかにでっかいですよねこれ。
黄金の腕輪が2つあること、の結果を早くも見せつけられた感じです。
今のピサロが果たしてどういう状況なのか、何かもう見るのが怖くて怖くて……。
願わくば、千早の予知夢が現実とならないことを、
もしくは「とてつない怪物」が、プロデューサーとは別の存在であらんことを。

春香とプロデューサー以外の話をすると、
前半、今後の行動について、自分たちの為すべきことについて、意見をぶつけ合うアイドルたちの姿がこれぞマスクエって感じでした。
それぞれがどういう道を辿ってきて、だからこそどういう意思を持っているのかがはっきりと分かる。
だからこそ誰の意見も等しく尊重されるべきであり、誰か1人だけに肩入れできない、そんなことを考えながら見ていました。

印象的だったシーンその1。
律子不在の今、いろいろと苦しいものを背負い込む伊織と、
それを察し、そして彼女に信頼を寄せる雪歩。
もうこのコンビが大好きすぎて。マスクエで一番好きな組み合わせかもしれません。


印象的だったシーンその2。
マリオネットの心アレンジBGMがひたすら胸に迫る。
美希って、誰よりもピサロにとってのロザリー」の重要さを知り、そして信じている子なんですよね。
ここ最近のロザリー捜索には誰よりも一生懸命で、焦っている様子も見られた。
そこには自分が運命を狂わせてしまった(正確には元に戻した)ことに対する責任感なんかもあるんだろうけど、
もっと、それ以上に明確な理由があったよなあと、このシーンのこのセリフで改めて再確認しました。

そりゃそうだよ。だって僕ら視聴者は「これ」を見てきたんだもんね。

しかしこうして見ると、ロザリーの存在というのは、
ある種美希のピサロへの思いを繋いでいた最後の一線でもあったのかもしれません。
あずささんからロザリーの死を聞かされた美希は、いったいどんな心境だったのだろう……。
ピサロが覇道を突き進むにつれて、相対的に美希には辛い展開が続きますなぁ。
彼女に救いがあることを願わずにはいられません。