壁を越えるかわいさの衝撃


最初に感じたことが「真がかわいい!」でした。
文面だけ見ればごくシンプルな感想なんですが、僕の場合はちょっと意味合いが違いまして。

765プロの13人は全員大好きだよ! って常々言ってる僕ですが、それはキャラクターとしての皆のことが大好きという話でして、
それぞれの外見や属性についての話となると、どうも向き不向きが別れちゃいます。みんなの個性がバラバラなだけに。
で、菊地真というキャラクターは、正直なところ僕の「かわいい」のツボからは離れている子だと思います。
真に限らず、「中性的な容姿、一人称がボク」みたいなキャラをかわいいと感じたことがほとんど無いんですよね。

だから、真に可愛い衣装を着せたり、アピールを決めさせたりして、「ドヤッ! 可愛いやろ!」みたいな動画を見ると、
周囲の盛り上がりに反して「あ、ふーん。そうなのかー」みたいな感想で終わっちゃうことが多いんです。
同じ様な動画を雪歩や伊織でこさえていたら可愛い可愛いって叫んでると思うので、これはもう好みの問題。
大反響だったMA2のジャケとかもティンとこなかったし、星間飛行のカバーは何がいいのかさっぱりって感じだった。
設定上真の適正はこっちじゃないんだから、もっとアイドルとしての彼女にふさわしい方向の曲の方がいいなぁ……って冷めた感じの目で見ていた。
(あくまで僕個人の趣味趣向に由来する話ですので、
真ファンの方々におかれましては、「こいつ分かってねーなー」と見下すくらいで勘弁していただきたい……ああ、石を投げないで!)

でも、この動画の真を僕は「かわいい!」と思ったのです。エクスクラメーションマークをつけたくなるほど。
それはきっと真の容姿や行動よりも、
かわいい女の子になるため一生懸命・悩み続ける姿だとか、キュートな衣装を着るまでの心の機微だとか、そういった面に射抜かれて生じたものだと思います。
真の可愛さへの渇望というのは、前々から同系列の他キャラクターと比べて琴線に触れる部分だなーとは思っていたのですが、
にしてもここまでストレートに心動かされたのは初めてだったので、きっと魅せ方が上手だったということなのでしょう。
劇伴に映像がバッチリ噛み合っているが故に、
陽気な音楽のリズムが可愛さに憧れる真の心のときめきを表しているようで、それをすっごく可愛いと思ったんじゃないかなーと推測しています。
音楽が盛り上がるとそれに合わせて真の心も踊りだす、その様子がとってもいじらしいのです。
ラストのワンシーン、「ボクは女の子! ヤローじゃないぞ!」って台詞と共に繰り出される真の右ストレートが、
画面の向こう側にいる自分に対して向けられているように錯覚して、ガツンと殴られたような衝撃を感じました。
「真のかわいさがイマイチ分からないわー」とか言ってる僕をそのかわいさで打ち倒した真は、
もしかしたら「どうだ! ちゃんと可愛い女の子なんだぞ!」って勝ち誇っているかもしれません。うん、KO負けだよ。

そうそう、これと同様の体験をしたのが、前回の20選に選出したこの作品でした。

あずささんもまた、僕の「かわいい」のツボからは離れたキャラクターだったのだけれど、でも僕はここのあずささんに夢中になりました。
「おっとりしたお姉さん系って何が良いのかよくわからなくて、あずささんについても同様だったんですが、
 つまりあずささんはこういう形で「可愛い」って事なんだなぁとようやく理解できたような。」

という、20選でのどきゆりPのコメントに凄く共感したことを覚えています。僕の中の12下半期20選最優秀コメント。

人の好みは千差万別。
キャラクターとしてその子を好きになるのは難しいことではないかもしれない。僕は765メンバー全員のことをすんなり好きになれましたし。
でも、「うおおかわええええ!」って夢中になる領域まで達するには、相性だとか嗜好だとか性癖だとか、そういったものから生じる壁が存在するよう感じます。
僕にとっては真やあずささんの壁は高めに設定されているし、
世の中には「雪歩や伊織の良さが分からん」と言って、僕の大好きな彼女たちに対する壁を高く積み上げている人もいる。
……しかし、稀にその壁を飛び越えて、不得手だったキャラクターに対して夢中にさせるような作品が現れるようなこともあるのです。
残念ながら、最初から壁がめちゃくちゃ低い雪歩や伊織については、僕はその存在を感知することができない。
逆に、真やあずささんがそこにいるだけで可愛いと思える人にとっては、僕が上述した2作品で味わった衝撃を共有することは難しいはず。
高い壁を越えてくる衝撃は、もともと自分の中に壁を持っている人だけが味わえる特権なんだなあとか、そんなことをしみじみ考えさせられました。