「亜美は不憫」と、それを憂えていた自分について


もうすぐ20選ということで今期の作品を振り返っていたのですが、やはり今期の私的MVPはこの動画であり、
今期は僕にとって双海亜美が主役のシーズンであったと思います。
前々から、特にこの動画と出会って以降亜美についていろいろと語りたい欲をこじらせていたので、
本格的に20選モードに入る前にここらで一つ書き起こしておこうかなと。

※できるだけ率直な感情を綴りたかったため、あえて顰蹙を買いそうな話題や表現も包み隠さず書くことにしました。
 そのため、以下の文章は読者の方(特に亜美ファン)を不快にさせてしまう可能性がありますm(_ _)m

Love Destiny」はもちろんPVとしての出来そのものも秀逸だったのですが、
そのクオリティの中で、「選ばれた真美」と「選ばれなかった亜美」という構図を打ちだしたのが私にとっては何より衝撃的でした。

多くの方がご存知の通り、かつて双海姉妹には「真美は不憫」というネタ? 風潮?のようなものがありました。
双海亜美」の名前で二人一組芸能活動している影武者的ポジションだったり、
コミュで真美が奔放な亜美の尻拭いを務める展開があったりと、確かに無印の真美は亜美よりも不憫なポジションと言えるかもしれません。
けれどまあ基本的には亜美も真美もファンからは似たような扱いをされているように見えたし、
それに当時の自分があまりアイマスに造形が深くなかったこともあって、昔はそれほどこのフレーズを気に留めていませんでした。
ところが、架空戦記やノベマスといったテキスト作品のブームが始まり、
その中で「真美は不憫」が定番ネタとして流行り始めると、「あれ、ちょっと待てよ……」と引っ掛かりを覚えるようになったのです。

多くの作品で真美が亜美よりも理不尽な扱いを受けるようになったり、
また、その中で徐々に真美は亜美よりもちょっぴり大人・お淑やか・思いやりがあるetc……みたいなキャラ付けが定着し始めた。
そして「真美は不憫」「真美はいい子」というタグがつき、多くの人に共通認識を持たれるようになる。
最初は面白いキャラ付けだなーと何気なく流行に乗っかってたんですが、
ふと一歩下がって界隈を見渡した時、これって実際は「亜美は不憫」だよなとふと我に返りまして。
真美が不憫な役割を被ることで多くの人が真美に対して同情的な視点を持ち、自然と真美贔屓になる。
さらに「真美はいい子」などの風潮が広まったことで、
自由奔放なイタズラっ子という2人の共通属性に加え、真美にだけ独自の武器が付加されていく。
かなりアレな表現ですが、「これじゃあ、まるで亜美が真美の下位互換みたいなじゃないか」と。
実際、「2人のうち、どっちかというと真美が好き」という意見はよく目に入り、その逆はほとんど見かけなかったような気がします。
それに、僕自身の目にも真美の方が魅力的に映っちゃってましたし……。
そんな感じで、しばらくの間「真美は不憫」というネタの流行を一方では楽しみつつも、
実際は「亜美は不憫」な状況になっていることから亜美に同情を覚え、悶々と日々を送っていました。

―――そして時は流れて2010年7月、アイマス2発表。

亜美と真美がそれぞれ一人のアイドルとして独立すること。
真美が髪型を変更して亜美よりもちょっぴり大人びたビジュアルになったこと。
そして、亜美の竜宮小町入りなどが次々と公開されていきました。
多くの方が真美を可愛くなっただの、男を知っただの、合法だのと持て囃し、一方亜美はプロデュース不可に。
正直なところ、僕は亜美真美の個性が分化したことも、亜美が竜宮メンバーになったことも、亜美にとっては決してマイナスでは無かったと思っています。
2人のビジュアルが別々になったことで「亜美の方が好み」という人も出てくるでしょうし、
竜宮小町の一員というのは、紛れもなく真美には無い亜美だけの武器なのだから。
確実に亜美にしかできないことがある。それだけでも無印時代の状況よりは今の方がよっぽどマシじゃないかなーと。
……しかしこうなると、「亜美は不憫」であることが誰の目にも明らかな状況になってしまったのもまた事実。
最早今の状況を見て、ネタ以外で「真美は不憫」なんて言う人はいないんじゃないでしょうか。

さて、亜美がそんな状況になってしまったというのに、僕はというとその事実からしばらく目を逸らしていました。
というのも、当時は雪歩の声優交代だとか伊織のP不可だとか他にも悩ましい案件が多くあって、正直なところ亜美にまで気を配る余裕が無かったのです。
それが、時間が経ち徐々に2ndvisionの各要素と折り合いがつき始めると視界が広がってきて、
また、アニマスブームでいろんな場所でアイマスキャラについて語られだしたことなんかもあり、ようやく亜美にも目を向けられるようになってきたんですね。
アイマス、とりわけ765組のファンには彼女たちの人気順序をつけることなどを毛嫌いしている方が多くいる印象なんですが、
僕はそういう面にとても関心の強い人間でして、
特にアニマス以降は各キャラが今どれだけ人気があるのか、どういう風に見られているのかを常に意識しています。
そこで僕が思い知らされたのは、双海亜美が今いかに厳しい状況に立たされているかという現実でした。
例えば人気投票みたいなのを各所で見たりしましたが、
どこを見ても亜美が真美より上にいることはまず無いし、それどころか常に765アイドル内最下位が定位置。
「双子のかわいくない方」とか「双子のいらない子」とか呼ばれているのもよく目にします。
おそらく今公式での人気総選挙みたいなのをしたら、どういう投票形態であれほぼ間違いなく亜美が最下位になってしまうことでしょう。
「双子で票が分散する」などといったハンデもあるのでしょうが、それを考慮しても今の亜美は悪い意味で頭一つ抜けちゃってるような……。
昔から各アイドルの間にある程度人気格差があることは目に見えてましたけど、
それでも今の亜美ほどあからさまな状況に追い込まれてしまったのは、少なくとも僕の知る範囲では初めてのことだったのです。
(最初期のニコマスとかは格差凄かったですけど、ある程度長いスパンで見ての話なのでここでは除外。それに公式の人気模様とはまた少し違うでしょうし)

しかし、そんな亜美の状況について激しい議論が交わされたり、
それを取り扱った動画が作られたりなんてことは、僕の観測範囲ではほぼ全くありませんでした。
まあ「真美は不憫」と違ってシャレにならない話だし、
アイドル全員のことが大好き、大切にしたいって人たちが進んで不憫・不人気キャラの烙印を押しに行くような気にはならないでしょう。
というかそもそも、もしかしたら亜美のことをめちゃくちゃ不憫だと思っているのは僕だけで、
界隈の他の人たちはそんな風に認識していないという可能性だってある。
それでも僕にとっては、なんだか亜美の現状が触れづらい、触れてはいけない腫物になっているように感じられて、
長らくずっともどかしい思いを抱え続けていました。
このまま、決して遠く無いうちに来るであろう2ndvisionの終焉を迎えてしまってもいいのだろうか……と。

そんな状況を一変させてくれたのが、最初に挙げた泥水さんの「Love Desteny」だったのです。
そもそも“竜宮小町”でも“亜美真美”でもなく、“亜美単体”に焦点を当てたPV動画が話題になったことすらかなり久しぶりにように感じる。
しかもその内容が真美と亜美を光と陰というように対比させて描くものだったんだから、ずっとこんな動画を待ってたんだと思わず叫びたくなりました。
そして、あの動画からはもう一つドデカい衝撃を受けたのですよね。
それは当時の感想でも述べた、亜美がターンの前後で表情を変えるシーン。

……でも、この動画の本当に凄いところはここからでして。

「閉じた瞳の中の世界」で誰か(おそらく真美を選んだ想い人)に微笑みかける亜美。

しかしそれは所詮空想の世界の中での出来事。悲痛な表情で手を伸ばすステージ上の亜美。

そして問題はこの後!




泣き出しそうな表情だった亜美が、ターンのあとは一転してめっちゃいい顔しているんですよ!
この引き方がもうたまらん!痺れる! このシーンが無かったらわざわざ単体で感想記事あげるまではしなかったかも。
これ、たぶん一枚目の表情のままで終わったらちょっと印象が変わってたんじゃないかと思うんですよ。
まあそれはそれで「うう亜美可哀そうに……ギュってしてあげたいなあ」みたいな方向に行ったかもしれません。
でも最後に亜美がああいう表情を浮かべたことで、双海亜美という一人の少女の健気さに尊敬の念を覚えるととともに、
そんな彼女への愛おしさが爆発的な勢いで溢れ出てきて、
「うおおおおあみいいいいい!!ギュっとしてあげたいよおおおおおお!」みたいな、ちょっと危ない人と思われかねないレベルで亜美に魅入ってしまったのだと思います。
たぶんこの表情の変化は元のマリオネットダンスそのままの流れだったとは思うんですが、
しかし見せ方の上手さとこの動画の構成が、物凄く衝撃的で意義のある一瞬に仕立て上げたなあと。

(該当記事から抜粋。スクショ一部省略)

これまで述べてきたように、僕は長らく亜美に対して、おそらく同情に近いような視線を送り続けていました。
それはこの動画を見ているときも同じで、僕はずっと亜美のことを可哀そうだと思いながら視聴していたんですよ。
そしたら、最後の最後で亜美があんな表情を見せるわけですよ。直前まではあんなにも辛そうだったのに。苦しそうだったのに。悲鳴をあげていたのに。
天地が引っくり返るような衝撃を受けて、
何だか訳も分からず泣きたくなって、叫びたくなって、亜美を抱きしめたくなって、もういろんな感情が暴れ狂っていました。
もしかしたら、僕のアイマスニコマス史において最も双海亜美に心揺さぶられた瞬間だったかもしれません。
こういった題材を綴ってくれて、そしてあんなにも鮮烈なものを見せてくれた泥水さんには感謝がつきません。
そして、そこにあるのは決して幸せな光景では無かったけれど、
でもこの動画が投稿されたことで、少しだけ双海亜美は救われたんじゃないか。そんな風に思えました。

少し前に気付いたことなんですが、2ndvision展開が進む中で、いつのまにか僕は真美よりも亜美の方が好きになっていたみたいです。
実は、僕もビジュアル的には真美の方がツボでして、
2初期はそれこそ「…>真美>千早>亜美>…」と、キャラ一人分の壁があるくらい*1好みの度合いに差異があったんですよ。
なのに気づけば亜美が真美に並び、そしていつの間にか追い越していた。
昔よりも亜美のことを好きになれたんだから喜ぶべきことなんだろうけど、どこか心の引っかかりを覚えずにはいられないのです。
それは僕が亜美に目を向けるようになり、好きになっていったきっかけが、
たぶん「不憫な亜美が可哀そう、応援してあげたい」と思い始めたことだったからじゃないかなーと。
本当に僕は亜美のことが好きなんだろうか。
ただ彼女に対する同情心から無意識のうちに評価をあげて、好きになった気になってるだけじゃないか。
というかそもそも、こんな形でアイドルを応援すること自体が亜美とそのファンを馬鹿にしているだけなのではないか。
……そんな感じで、実にめんどくさい葛藤を抱えつつも、「Love Destiny」の亜美から今日もまた目を離せないでいるのです。

ただ、最近ひとつ純粋に喜ばしい出来事がありました。

誕生祭で投稿されたあとりえPのこの動画を、アイドル13歳亜美の最強PVだと思うくらい気に入っているんですが、
仮にこれを真美でこさえていたらどうだろうかと考えると、
それでも十分可愛らしくはなるだろうけれど、絶対にこれは亜美の方が魅力的だと思うし、亜美だからここまで心動かされたんだと断言できたんですよね。
それはこの動画が「亜美だけの魅力」を活かしたものだからと思った故であって、
つまりそれは、僕が単に同情心だけで亜美を好いているわけではなく、ちゃんと彼女の魅力を多少なりとも理解できていたことを意味しているのです。
確かにきっかけはただの同情心であって、それは今でも僕の中に根付いて強く影響を与えているのかもしれない。
けれど、亜美を応援する中で僕は「亜美だけの魅力ってなんだろう」と、彼女にしかない武器を探すようになり、
その結果、僕は昔よりも亜美のことを好きになれたんだ。そう思うことにすると少し気が軽くなったような気がします。
だからこれからも、こんな人間なりに亜美のことを応援していきたいというのが現時点での僕の素直な感情です。
形がどうあれ、少なくともそこにいる亜美を愛らしいと思う気持ちだけは本物のはずですから。

*1:千早に対する蔑称的な意味は一切含んでいません。念のため注釈