その勝負と笑顔が第三部の集大成 ぷよm@s part33 感想


(※ネタバレ含みます)

「ほんとはパラマストーナメントを第三部の締めくくりとして考えていた」と鱈Pもおっしゃっているので、
僕はこのトーナメント編を第三部*1の続きとして見ています。
そして、その決勝がカウンターで第三部の幕を開けた真vs一番引っ掻き回した雪歩というカードになるのは綺麗なまとめ方ですねという話を以前書いたんですが、対戦内容の方も相応しいものだったなと。
導入と春香・美希2人の致死二連鎖を描いた第一部。
ランキング導入による対戦の本格化、
その中で千早が駆けあがっていく様子を描き少年漫画的盛り上がりをみせた第二部。
そしてそれに続く第三部のテーマとして、僕が勝手に考えているものが2つあります。

まず一つが、「戦法の多様化、スピード勝負以外の概念」
ぷよぷよをろくに触ったことも無いド素人なのでどこまで理解できているか怪しいのですが、
第二部までのぷよm@sは、
「どちらがより速く、致死連鎖を完成させるか」という勝負にひたすら重点を置き続けていたよう思えます。
そこから価値観を一変させ、対戦の幅を広げたのが第三部で出てきた真のカウンターであり、雪歩のヘルB→掘り合い戦法であるというわけです。
この動画でしか「初代ぷよぷよ」を知らない僕は当然のごとく致死連鎖の完成スピードが全てだと思い込んでいたので、
これらの概念の登場、とくに雪歩の戦法には驚かされましたね。
僕の中で第三部が二部よりも高評価なのは、
そうしてぷよぷよというゲームの奥深さを、濃いドラマと合わせて思い知らされたというのが大きいです。


んで、今回もいきなりこれですよ。
こんな光景、第二部を見ていたころは全く想像できなかったわwww
にしてもやっぱり雪歩の闘い方が面白すぎてですね。
相性で不利なカウンターへの対策として、相手の起爆時まで待つ待機戦術。

その時間の中で戦法を練り、着実に歩みを進めていく柔軟性。

そして、アイドルたちも視聴者も皆「キルアイス」を待ち構えたところで、まさかまさかの三味線弾き。
何が飛び出してくるかわからない、ビックリ箱のような恐ろしさと楽しさ。見ていてワクワクが止まりません。
千早や真等に比べて感情移入はしづらいかもですが、
外から眺めている分には間違いなく一番楽しい子ですよ。23話(vs千早)以降ベタ惚れです。

一方、もう一個のテーマはぷよぷよや勝負に対する価値観」
第一部は春香と美希、第二部は千早がほとんど集中的に描かれていて、
他にスポットが当たるのも、彼女らとある程度闘える上位層の人間が中心でした。
だから、単純に勝つか負けるかという概念だけがその場を支配していたような気がします。
しかし三部では特定の人物だけに偏らず765全体に視野が広がり、
初めて(?)全員*2が一堂に会してトーナメントも行われるということで、
キャラごとのぷよや勝負に関する価値観の違いが強く浮かび上がってきたように感じました。
この世界の中での彼女たちの本業はアイドル、もしくは学業であり、ぷよぷよはどこまでいっても所詮「ゲーム」でしかない。
だからこそ、それに対する真剣度合いや考え方も各々異なってくる。
下位層にまでスポットがきっちり当たるようになって、それが色濃く表れた気がします。
律子の勝敗への拘りに対する葛藤や、「みんなと遊べるようになること」を重んじていたやよいなんかが象徴的かな。

そして、今回の決勝戦最後の一本勝負。

雪歩は相性の有利不利も、より勝ち目の高い戦法も取っ払って、「自分にとって最も楽しい方法」で戦いを挑む。
真も、まんざらでもないという風にそれに乗っかる。
今やトップ層の千早や律子を倒すほどの力をつけてきた雪歩と真。
でも、彼女たちの根底にあったのは「みんなとぷよぷよを“楽しみたい」という想いだったから。

最後に2人が繰り広げたのは、ある種泥仕合ともいえる一進一退の堀り合い。
そこに、全身全霊で勝敗を奪い合った千早vs美希のような手に汗握る緊張感や、
ラストに全てをひっくり返した真vs千早のようなカタルシスは無いかもしれない。


けれど、純粋にぷよぷよを、掘り合いを、その瞬間を楽しむ2人の清々しい笑顔は。
まさに「最速致死連鎖以外の勝負」を、
そして「勝った負けた以外の価値観」を描いてきた第三部を飾るに相応しいものと言えるでしょう。
これまでの積み上げと、その絶妙な帰結が、
ラスト5分間の掘り合いと2人の笑顔をどこまでも美しく輝かせていた。
だからこの戦いは僕にとって珠玉のドラマであり、間違いなく名勝負と呼ぶに値するのです。
(……まあまだ真vs小鳥が残っているので、さらにもう一つ二つ波乱の展開が残っているかもしれませんがw)

これまで何度か、ぷよm@sのコメディが肌に合わないとイヤごとを言ってきました。
彼女たちがそれぞれ地に足付いた人格や生活感、ドラマを背負っているから、
亜美が冗談感覚で他人を貶めたり雪歩が変態的な言動をするのに抵抗があるのだと。
すると、前回の投稿者説明文でぷよm@sは「せんだみつおG@ME」の影響を受けていると語られていた。
それなら、もしかしたら鱈Pはぷよm@sにおけるキャラのやり取りもせんだみつおG@MEと同じような感覚で書いているのかもしれない。
確かにあのシリーズの世界観なら、アイドルがハチャメチャにキャラ崩壊してたり、人間関係が崩壊しかねないような言動をしても、全部ギャグとして受け止めて素直に笑い飛ばすことができる。
ならばぷよm@sも、せんだみつおG@MEを見るのと同じ感覚で味わうべきなのではないだろうか。
一々人間関係がどうとか、貶められる方やそんなことを言わされる方が可哀想とか気にせず、全部「そういう世界観だから」で済ませてしまえば
そうしたら、もっと引っかかりなく気楽にこのシリーズを楽しめるに違いない。
……前回が投稿されて以降、そんなことをずっと考えていました。
けれど、今回の話を見て、やっぱりそれは無理だなと気づかされましたとさ。
僕にとって、この世界のキャラクターたちは確かな人格を意志を持ち、生を受けて日常を生きている者である。その見方は絶対に動かしようがなかったのです。
だから、これからもたぶん僕の中でぷよm@sのシリアス・人間ドラマとブラックジョークは調和しないだろうし、
フヒ歩の全開オープンっぷりやアイドルの罵り合いを見る度残念な気持ちになるだろうし、
時折また愚痴を書いちゃったりするかもしれない。
でも、そんな世界だからこそ、同時にアイドルたちのドラマから目が離せないのもまた事実。
雪歩と真の闘いに顔を曇らせた千早や真美、この場に居合わせなかった美希、それに他の子たちも。
これから彼女たちの心がどう動いていくのか、どんな道を歩んでいくのか、それが楽しみで仕方ないのです。

*1:15or16話〜24話。千早小鳥戦の後からトーナメント直前まで

*2:美希は参加できなかったけど