「アイドルマスター2 The world is all one!!」5巻感想

ついに読んじゃいましたざわわん5巻、というか最終巻。
表紙が1〜4巻までの一人がアップで映って他二人の全身像を横に置く構図じゃなく、三人並んでドン!ドン!ドン!なのが最終巻ってことを実感させてくれますね。
オリジナル衣装のスプリングサウンドステップ(?)も、緑基調の衣装という新鮮さで、
竜宮のPODをオマージュしてかつ同じようにユニット名を意識したデザインというのがいい感じです。
それと春香役の中村繪里子さんの推薦文オビが付いてましたが、
2巻の浅倉さん、3巻の沼倉さん、4巻の若林さんの推薦文ではそれぞれ祐佑さんのイラストが描かれていたのに1巻の中村さんのはアニマス春香絵の使い回しだったから、
今回改めて中村さんの文章で、祐佑さんの春香が描かれていたのが嬉しかったです。
「アイドルにしてくれてありがとう」という一文も本編を読んだ後だとグッとくるものがあって粋なコメントですね。

ではでは以下、最終巻の感想を。
当然ながらネタバレ含みます。まだ読んでない人は今すぐ買いに走ろう! アイマス好きなら絶対後悔しないよ!

んー、今巻盛りだくさんすぎて何から書いたものか……w

メインディッシュたるアイマスフェス編が物凄かったのはもちろんなんですが、
まずその前の響を中心としたレッスンエピソードが予想以上に素晴らしくてですね。
いや前巻の時点で「ここで響にスポット当てるの上手い!」って書いてたんですが、でも「解決策を捻り出した! 響凄い!」くらいで終わるだろうと思ってたので、あそこまでしっかり響のパーソナリティを絡めて展開していくとは予想してなかったもので。
まず、完成されたパフォーマンスのさらにその上を行くために、“感覚”レベルの問題に行き着くのが面白く、そしてそれに気づく響スゲーってなって。
さらにその感覚を中々掴めない春香雪歩と、天性であっさりモノにしちゃう響との対比がそれを際立たせる。
一方で、それを春香雪歩に伝えるレベルとなると窮しちゃって、
技術的な面に落とし込んで指導できる千早、より効果的なアドバイスを送れる美希というその道のスペシャリストが出てくるというのが上手い。
ここの何がいいかって、響は自身の個人的なレベルではクリアしていて、苦戦するのがそれを仲間に伝えるレベルでの段階ってとこなのよね。

突然だけど、実は765プロ我那覇響って何だかなー……とちょっぴり思ってる節がありまして。
得意のダンスに限らずわりと何でもこなせちゃうくらいスペック高くて、一方でそこまでハッキリ目立った弱点も無い。
SPのときのようにライバルポジションとしては映える存在であっても、こちら側に置いてみると元々の完成度の高さ故に面白みに欠けるというか。
決して今の響が魅力の無いキャラクターだとは言いませんが、やっぱり昔のポジションの方がよかったんじゃないかなーとか時々考えちゃうんです。
で、ざわわんの響はスペックの高さはそのままに、ぶち当たる壁が主に仲間との関わりの中で生まれていて。
仲間に上手く導いてあげられない、期待に応えられないもどかしさ。
頼り頼られることの不安と大切さ、信頼することの力強さ。
そういうアレコレを響が思いつめ、見つめなおし、先に進んでいく姿を見ていると何だかとっても嬉しくなったんです。
「仲間を得た我那覇響」の物語は本家アイマス2でも取り上げられていて、そっちも悪くは無かったんだけど、
不特定の2人とユニットを組むゲームシステムの制約上どうしても描き切れる範囲に限界が感じられたんですよね。
一方ざわわんは、春香と雪歩(+プロデューサー)という特定の仲間との関わりが深く描かれてきて、しかも春香と雪歩がユニットメンバーであったことが響自身のパーソナリティに影響を与えていることが見て取れる。
もし千早や美希、真辺りの能力高い子がメンバーにいたら響の物語やそれに伴う人格形成も変わってきたはずで、
だからこそ今の響は春香たちと一緒に成長してきたからこその、「SprouTの我那覇響」としてしっかり地に足が付いていて、「仲間を得た我那覇響」の物語がより鮮明に描かれているんじゃないかと。
そしてその物語がとっても美しいものだから、
僕がアイマス2で、765プロで見たかった我那覇響の姿ってこれだったのかなーとかゴチャゴチャ考えながら読んでいたところに、

大ゴマでドドンとこのシーン、この台詞がきた。
ここにそれまで読みながら考えていたことが全部収束して、その絵と台詞のパワーに感極まっちゃったんです。
「自分完璧!」から「自分たち完璧!」へ。
765プロ我那覇響を、これまでよりも一つ上のステージへ押し上げた文句なしの名シーンではないでしょうか。

響の話がやたら長くなりましたが、ようやく本筋のアイマスフェス編へ。
単なるSprouTvsジュピターのフェス対決ではなく、IA候補ユニット総入り乱れの一大フェスで決戦って構図は聞いた時点でも熱く感じましたが、
実際に絵になってみるとより迫力ある一大お祭り感がして燃え滾らざるを得ませんでした。
ってか961の財力や高木社長の威光アリとはいえ、
ここまでのイベントを企画して取りまとめたプロデューサーの有能っぷり凄いよね。本編でも言及されてたけどw
765アイドル総動員で鍛えて、決戦衣装用意してっていうお膳立てもバッチリ。
おまけに2巻のとき*1と全く同じ構図で、けれどあの時とは違う爽やかな笑顔でSprouTがジュピターと向き合うなんてにくい演出もあったりで、開幕前から既にワクワクの連続でしたね。
北斗さん相手に余裕をみせる雪歩の頼もしさよ。
2巻のときももしかして…と思ってたけど、たぶんこれ本家アイマス2のジュピターとのラストバトルでメンバー3人がそれぞれ冬馬・翔太・北斗と一対一で火花を散らすシーンの再現だよね。こういう細かな原作リスペクトが楽しいです。

SprouTの他に竜宮のステージシーンもありましたが、
ここはどっちかというと彼女たちより、それを見つめる非ノミネート組が主役に感じられました。竜宮の物語は前巻でまとまってたしね。
特にわんつ→ているずの会話はグッとくるものがあったなー。
その後みんなが観たり食べたりフェスを満喫してる様子とか、
黒井社長が日本中の注目が〜とか言ってるのも、楽しくスケールのデッカイお祭りなんだなってより実感できてよかったです。

ついにメインディッシュなSprouTのステージ。
SprouTとジュピターの決戦ももちろんだけど、一緒にトリを務めるのがアイマス2最強モブユニットの魔王エンジェル・サイネリアってのもニヤリとさせられるし熱いのよねw
SprouTの3人は開演前の落ち着きっぷりと、そのうえでPが来て完璧になった!ってときの表情が頼もしさに精神的成長が見て取れて、
一方絵だけでは伝え難い技術的な成長も、歌声のフキダシをユニット名由来の双葉型にするというアイデアで表現しているのに感心しました。
歌で自分たちのユニットイメージをしっかり伝えてるんだよってことでいいんでしょうかね。
おかげで「こんなに成長してるとは!」みたいな観客のリアクションによりすんなりと納得できました。

んで、雨での中断から怒涛のクライマックスへ。
何と言ってもまず、プロデューサーがSprouTを送り出すシーンがすんばらしくてですね
ラストのステージは作品としても勝負所だろうから当然こっちも気合入れて読むんですが、
その前のこのシーンはちょっと気を抜いてたところで不意打ちのように最高の演出がきちゃったもんだから、思わず感極まってしまって一度読むのを中断せざるを得なくなっちゃいましたw
プロデューサーが何かいい感じの言葉をかけたり、もしくは3人でえいえいおー!とか、何となくそんなノリかなーと思っていたら……。


響とハイタッチ、雪歩と握手、そして春香の背中を軽く叩く。
それぞれのアイドルとプロデューサーが培ってきて信頼関係の証。
何回も繰り返しこの作品読んできた一ファンとしては当然過去のシーンがフラッシュバックしちゃうし、しかもそれが三連発ですよ。やーズルいわこれ。
この回のサブタイトルが「送る掌、絆の形」ってのもまた絶妙なのよねえw
過去のシーンやエピソードを拾い上げるのが上手い作品だなーとは前々から思ってましたが、特にこのシーンはそれを象徴する場面だったのではないかと。

最高の送り出しを受けてステージが始まって、でもやっぱり上手くいかなくて。
SprouTの思いを汲み取る美希の言葉が痛切で、そんな状況でも爽やか笑顔なSprouTがめっちゃ頼もしくて。
そして、ラストの曲はやっぱり表題曲「The world is all one!!」。
ここでまず、レッスンで磨いてきた「ファンへの表現」を汲み取って真っ先に熱唱するストーカー子ちゃんが熱いよねえ。
なるほどこのためにスト子ちゃん登場させたんだなあと。
というかあの子が出てくるエピソード、読み返してみると「一番いい笑顔でいられるのはどんな舞台?」とか、モニターを使ったざわわん歌詞表示シーンとかもあって完全にこのラストステージのための準備回になってるのよね。つくづく構成の巧みさに舌を巻くばかり。
他のファンたちも次々と合唱の輪に加わって、プロデューサーや他の765アイドルズ・律子も後押しして。
どんどん鮮明になっていく声援フキダシの双葉、どんどん広がり、一つになっていくSprouTの世界。
最後はもちろん、「The world is all one!!」のフレーズで〆!
脚本、演出、画力、全てが高い次元で絡み合って、描き出した最高のステージシーン。
正直に白状すると、漫画でここまでのステージを体感できるとは思ってませんでした。最後までこの作品は僕の想像を超えていくんですね。
でも、僕の中で感動のピークを迎えたのは会場の熱気でも、春香たちの勇姿でもなく、舞台袖のプロデューサーの涙でした。
思い返せば、アニマスの最終話でもアイドルたちの姿じゃなく舞台袖で号泣する小鳥さんの姿に涙腺やられてたんですよね。
ざわわんにしても、アニマスにしても、僕は外からアイドルたちの成長を見守り続ける側であって、
だからこそ、アイドルを見守るPや小鳥さんの涙する姿に自分を重ね合わせてしまって、一緒に感極まっちゃうのでしょう。
ざわわんの場合、いっぱい落ち込んだりヘタりたり人間くささたっぷりながらも涙を流すことは無かったプロデューサーが、
ここ一番で思わず見せた最初で最後の涙だったってのも痺れるものがありました。

IA授賞式については、まあ正直竜宮の部門賞もSprouTの大賞も予定調和な感じなので結果自体については特に言うことないんですが、
相変わらずプロデューサー側の心情の描き方が丁寧で、アイドル以上に彼らに対しておめでとうって言いたくなりますね。特に律子。
それからSprouTの挨拶、三人がユニット名の由来を振り返るってのが何か凄く素敵で。
思えばこの名前公募で決めたんだったなー、応募した人嬉しいだろうなーと思いつつ、
このネーミングあってこそのこの物語だと再確認して、命名された方と選んだ声優さんたちにありがとうと言いたくなりました。
響が感極まっちゃって春香がフォローするのもよかったですね。
そしてラストのプロデューサーの台詞、「俺をプロデューサーにしてくれてありがとう」ってのがまたねえ。
元は無能呼ばわりされてた情報収集担当で、偽りのプロデューサーだったという彼自身の出自もそうだけど、
それだけに限らず、プロデューサーが女の子たちをトップアイドルにするのと同時に、プロデューサーもまた彼女たちがいてくれるから、信じてついてきてくれるからこそプロデューサーでいられる。
そういうアイドルとプロデューサーの一蓮托生な繋がりを実感させてくれるというかなんというか、うーん上手く言えないやw
とにかく、この話はアイドルとプロデューサーの物語なんだよって伝わってくる、素敵な台詞チョイスだったと思います。

ラストは後日談。SprouTだけじゃなく全員が前に進んでるんだよって描写がいいですね。竜宮の亜美→伊織弄りも相変わらず微笑ましい。
そうそう、冬馬のチケットのねだり方が劇場版アニマス踏襲してましたね。レスポンス速いw
そして最後のサプライズがプロデューサーですよ! いやもう完全にハリウッドに行くもんだと思ってたのでビックリしましたわ!
あからさまにプロデューサーが居なくなったことを仄めかしつつホントは……って罠にかけようとしてるわっかりやすい誘導なんですけどねえ。
前巻のプロデューサーハリウッド行きフラグの立て方があんまりにも上手くて感心しちゃったもんだから、
作品全体の丁寧なアイマス2シナリオ踏襲っぷりも合わさって絶対ハリウッドENDになるもんだと思い込んじゃったようです。
でもPにしても律子にしても、断ることを決めるきっかけになったシーンが最高だったのでそれだけで説得力十分ですね。
Pの理由を一人だけ理解してるのが律子って構図がまたいいですね。このプロデューサーコンビも最後まで素敵だった。
ラストはやっぱり第一話のシーンに戻ってきて〆!
アイドルたちの成長ぶりとプロデューサーの爽やかスマイルが感慨深い! うん、もう何もケチのつけようがないっすわ。
あと、その後のエンドロールもPがSprouTに裸見られて何気に原点回帰してますねw

はい、というわけで5巻の感想はこんなところかな。
数か月前にざわわんが次の巻(5巻)で完結することを知って、
「まあ畳みに入ってたからそりゃそうだよなー」と理解しつつ、でももうあと一巻くらい欲しかったな……なんて風に寂しく感じていました。
でもいざ最終巻読んでみたら密度が物凄くて、この巻までで全く不足なく必要なこと全部詰まっていて。
読む前の「えー、残り1巻しかないのー」という物足りなさが完璧に消え失せるくらい満腹になっちゃいました
響の「自分たち完璧」と、PがSprouTを送り出すところと、ステージシーンと、その後のPの落涙と、「プロデューサーにしてくれてありがとう」の台詞と、5回くらいは感極まってた気がしますねw
大好きな作品が終わってしまってもちろん寂しい気持ちもありますが、それ以上にこの素晴らしい物語を最後まで見届けられた嬉しさや、
何より5巻、そしてざわわん全体のエピソードへの感動で満たされていて、とても幸せな気分です。

めでたく完結ということで、作品全体を振り返ってキャラや物語について書こうとも思っていたんですが、
だいぶ長くなってしまったので一まずここで区切っておきます。そちらについてはまた後日改めて。

*1:10話、p80