たかがげーむにまじになっちゃう2X歳が素敵 ぷよm@s part34 感想


(※ネタバレ含みます)

いやあ、小鳥さんの株爆上げな一話でしたね。
闘ぷよで見せた圧倒的な成長ぶり、蹂躙っぷりも素敵でしたが、
試合前の過去語りから掌返し失望発言までの流れに凄くぞくぞくするものがありました。


ぷよぷよの才能の限界を感じたとか、謎の超強敵にボコボコにされて心を折られたとか、そんな大層な理由じゃない。
ただ周囲が自分ほどぷよぷよを愛していなかった。もしくは自分だけが愛しすぎていた。だからコントローラーを置いた。
こういうエピソードを持ってくるバランス感覚が凄くいいなあと思います。
僕自身も昔仲間内で流行っていたものにハマっていたら、
そのうち皆別の遊びに目移りするようになって、内心惜しみながらそっちについていったという経験があったので、深々と頷けるものがありました。
こういうのはたぶんいろんなところであるんでしょうね。鱈Pの実体験とかも混ざってたりするのかしら。
……なんてしみじみと考えていたら、

ここでがらっと空気を変えてきちゃうのがまた上手いよね。
ここまでぷよぷよに情熱を注いできた、楽しい楽しいと言いあいながらプレイしてきたアイドルたちを持ってして、自分には及ばないと断言する。
その異常性が露わになったところで、先ほどまでの語り口の印象もまた違ってくるわけで。
例えば仲間グループで小鳥さん以外の4名がカップル成立しましたよってのも最初はコメディタッチに受け取ってたけど、この姿を見た後だとそれ以上の意味合いを探りたくなってしまって。
皆でワイワイ遊んで、はしゃいで、そして恋愛して……そういうありふれた高校生の青春の日々における、一つのシーンにすぎなかったはずのぷよぷよ
でもそんなぷよぷよに異常にのめり込んでしまったことで、小鳥さんは「普通の人」が歩むレールをちょっと踏み外してしまったのかなー、とか。
そして普通の人生を歩むために封じ込めていたそれが、職場でのぷよぷよブームでまた呼び起されてしまったと……。
ぷよぷよ大好きアピールに余念の無い美希がいたせいか今まで影に隠れてましたが、小鳥さんもここまでぷよぷよに狂ってたキャラだったんだなあと。
小鳥さんが美希に入れ込んでたのも彼女がデスタワー使いだからってだけじゃなく、誰よりも強く、それこそ自分に匹敵するほどぷよぷよに狂っているからだからなんでしょうね。
今回美希のいない場所でこういう話をしたのも、いずれ自分と同じように美希が周りから取り残されるのではって心配していたのが大きいんじゃないかな。

ぷよm@sのブラックな舌戦はアイドルたちの常識性を奪うようであまり好きじゃない僕ですが、
今回の小鳥さんの態度に関してはむしろ彼女の異常性を際立たせるようでいい味だしてるなあと感じました。
そりゃまあ2X歳の大人としてはどうなのっていう大人気ないような態度だし、
しかも彼女はアイドルたちを支えるべき事務員なわけで。
一生懸命頑張ってここまで上り詰めてきた真や他のアイドルたち相手にこれはないわーって思いますよ。
でもその「常識的にどうなの」っていう一線を越えることが出来ちゃうっていうのが、
ぷよぷよが絡んだ時の小鳥さんがいかに異常かというのを実感させてくれるんですよね。

このとき律子の台詞と僕の心情が完全にシンクロしてましたわ。
いやもうホント、小鳥さんは今回で凄く面白いキャラになったなーと思いますね。

にしても、みんな揃ってワイワイ、特にひとつ前の決勝ではゆきまこが楽しい楽しいとキャッキャウフフしてたトーナメント編にこんなオチが待っていようとは。(まあぷよm@sだからまだまだ二転三転するやもしれませんが)
投稿ペースが早いに越したことは無いかもしれませんが、
33話を歴代最高傑作回と評したくらいジーンと来てた僕としては、前回と今回の間が長くてよかったなんて思ったりします。
あの決勝の後に即この話が来てたら余韻ぶち壊しだったかもしれませんからねw

ただでさえ最強のラスボスが、誰よりも熱意を持ち誰よりも成長に貪欲であるということが判明して、果たしてこれからどう舵を切るのやら。
今回僕が一番嬉しかったのが、個人的にこの作品のテーマの一つであると思っている「たかがげーむにまじになっちゃってどうするの」がはっきりと形を帯びてきたような手応えがあったことで。
コロコロのホビー漫画とかならひたすら無心に遊びに一直線でいいかもしれませんが、
この作品の彼女らはアイドル事務所のアイドルやプロデューサーや事務員であり、ぷよぷよはどんなに楽しかろうがためになろうが現状ただの娯楽にすぎないはずで。
前々からぷよぷよに狂ってる美希と、
みんなで遊べるツール的認識に見える伊織や娯楽の一つくらいの感覚な亜美辺りとの温度差が気になってはいたんですが、
今回の小鳥さんの言動と実力でそれがついに明確に提示されたんじゃないかと。
ゲームに終止符を打つ象徴として共通目的だった人が、誰よりぷよぷよに夢中で誰より早く成長していくということを知って、
ならば私もと同じように「たかがげーむ」に狂っていくのか、それとも温度差を感じて一歩引いてしまうのか。
果たして小鳥さんや美希のいる異常者の領域に何人が上り詰めるのか、それとも2人だけが普通とは違う異常で孤独な存在のままなのか。
ただ皆で競い合って強くなろう、ってだけじゃないのがぷよm@sの魅力の一つだと思ってるので、
そういう方向にドラマが広がっていったら楽しいだろうなーなんて風にワクワクしてます。


後、小鳥さんのインパクトでちょっと吹っ飛んじゃったけど、序盤で律子のフォローらしきものが入ったのは嬉しかったです。
前回の感想や20選で真vs雪歩の決勝こそ第三部のクライマックスに相応しいって言ってましたけど、
律子の勝敗への拘りも第三部の重要なテーマに関わる一つだと思っていたので、
実力的な面はもちろん、精神的な部分の描写を補強する面でもこのやり取りはよかったなって思います。