「未完成のビジュアルクイーンたち」製作あとがき②(シナリオ・キャラ設定解説)


先日投稿した新作に再生、コメント、マイリス、宣伝、その他諸々のレスポンスをくださった方々、ありがとうございました。
投稿と同時に公開したあとがきでだいたいの事は語り尽くしたんですが、
せっかくだからもうちょっと、シナリオとキャラについての設定解説みたいなものを書いておこうかなあと。
といってもほとんど動画の中に描かれてる通りなんで、私の自己満足みたいなもんですけど…w

あ、まだ動画や前の後書き見てないって人は、先にそれらに目を通してから読んでくれるとありがたいです。

シナリオ解説

大まかなあらすじは、

・美希・伊織が「14Princess」というデュオユニットを組んでアイドルデビュー
・Bランクまで上り詰めるも、突然プロデューサーから解散を言い渡される
・その後伊織は「竜宮小町」、美希は「Fairy Garden」というユニットのリーダーになり、それぞれIA大賞・IU王者に輝く
・そして今、2大トップアイドルとまで謳われるようになった2人がフェスで激突する……

って感じですね。
それに加えてもうちょっと細かい話の運びを、裏設定とか交えながら語っていこうかなーと。


2人のうち、アイドル候補生として765プロにやって来たのは伊織が若干先でした。
星井美希と出会ったプロデューサー(画面右の黒い人)は直ぐにその才能を見抜き、同じく目をかけていた候補生の水瀬伊織とデュオを組ませることを計画します。
同い年で共に華やかなビジュアルの持ち主であるという共通点、
また、マイペースで少々世間知らずな美希を伊織なら引っ張っていってくれるはず、
人を惹きつける魅力があり、怖いもの知らずな美希なら気難しい伊織とも上手くやれるはずということなどを見込んでのことでした。
美希は「別になんでもいいよー」って感覚だったのであっさり承諾。
伊織も、当時は何でもいいから早くデビューさせろってスタンスであり、
ほぼ初対面だから美希の人となりはよく知らず、かつビジュアルの優秀さはひと目で感じられたため、トップを目指す上で邪魔にはならないだろうってことでこれを受け入れました。


しかしいざ活動開始してみると、
美希の所謂"ゆとり"っぷりは伊織の想像だにしなかったほどで、
最初は美希のそういうアレコレに伊織がキーキー怒り、時には美希が反論して喧嘩になったりでややチグハグな調子でした。
仲が深まってからも伊織がずっと美希にツンケンした態度で接したり、
「アイツ」とか「アンタ」とか呼んだりするのはこの頃のなごり
だったりします。
美希は伊織のことをいつも怒っててちょっと怖い子……と思いつつも、
甘やかされおだてられ育ってきた自分にここまで強く接してくる人がいることを新鮮に感じ、
何やかんやで世話を焼いてくれる伊織の優しさにもだんだん気づいていきました。
伊織の方も、最初はとんだパートナーを押し付けられてしまったなんて思ってはいたものの、
散々厳しい言葉を投げかけても翌日にはまた人懐っこい笑顔を向けてくれる美希を何だかんだ憎めず、その人柄に好感を抱き始めてもいました。
そして何より、2人とも互いのアイドルとしての実力を認め合っていました。


元々性能面では相性の良い2人。
関係が段々安定し始めてからは、順調にオーディション勝利を重ねステップアップしていきました。
他のアイドル達を追い抜き気づけばBランクユニット、10人いる765プロアイドル達の稼ぎ頭に。
事務所もより豪華な場所に移転し、まさに絶好調という感じでした。
ところが、プロデューサーは14Princessに対して停滞感を覚え始め、その思いは日に日に強くなっていきました。
2人の活動は、基本的に伊織が主導権を握って動かしていくというスタンスだったんですが、
美希は無意識のうちに「引っ張ってくれるデコちゃんに合わせていればいい」という感じになっていて、
また向上心が全く無いというほどではないものの、伊織と楽しく活動することが目的の全てになっていて、その才能の大部分を眠らせ続けているように感じられたのです。
一方伊織も、隣にいる美希の才能に脅かされ、
その美希を自分が引っ張り続けていかなければいけないというプレッシャーでパフォーマンスが縮こまっているように見えました。
プロデューサーはいろいろな可能性を模索した上で、14Princessを解散させるという策を取ることを決めます。
伊織には一度美希から離れて、もっと自由に自分のパフォーマンスを追求していってほしい。
そして美希には、別ユニットになった伊織を目標とすることで、上を目指すスピリットを燃やすようになってほしいという狙いでした。

当時並行してプロデュースしていた秋月律子がプロデューサーへの転身を考えていたため、
伊織は彼女の元に預け、やや伸び悩んでいる三浦あずさ双海亜美の2人と組ませることに。
一方美希は、新しく見つけてきた候補生の響・貴音と組ませて自分の元で再出発させることに決めました。
トリオユニットという形を取ったのは、業界が複数人ユニット主流の流れになってきているのと、
美希に関しては先輩・リーダーという立場を背負わせることで伊織に頼りきりだった体質を変えたかったから。
人選の基準は、竜宮は技術・リーダーの資質共に十分な伊織(とPデビューしたての律子)の精神面を支えられる2人。
フェアリーは、才能が花開いていくであろう美希の脇を固められるポテンシャルのある2人……という感じですね。


突然の解散宣告に対して美希は猛反発。
伊織の説得もあって解散ライブまでは何とかやり遂げますが、その後はもう「アイドル辞める!」の一点張り。

一方伊織の方は、もちろん解散に対する寂しさ・惜しさもあるんだけど、一方で動画内で語っていた安堵の気持ちもあって。
いろいろ考えた末に、美希との活動にピリオドを打って、心機一転新しいアイドル人生を歩みだそうと決意します。

ところが解散ライブの日、美希と思い出話を語り合っていたところでああいう言葉を聞いて、
美希とずっと向き合っていきたい、いかなきゃだめだって風に思い改めることに。

そして、アイドル辞めかねない美希に「自分を追ってこい」と焚き付けたわけです。

先にスタートした竜宮は伊織が見事にその資質を発揮し、
亜美・あずさ・律子も上手く噛み合ってとんとん拍子で人気を集めていきました。
フェアリーの方は、新人の響・貴音のデビュー準備や初期の不慣れさ、
はじめの頃の美希のリーダーとしての不安定さなんかもあってやや出遅れますが、
エンジンがかかってからは爆発的な勢いで突き進んでいきます。


そして、竜宮は見事IA大賞を受賞。
フェアリーは当初の遅れもあってこちらは逃したものの、
2大タイトルのもう一角であるIUに765プロの代表として出場し、961プロのジュピターを破って見事を果たします。
こうして竜宮とフェアリーは2大ユニットとして脚光を浴びることになり、
その中でもリーダーとして一際存在感を発揮する伊織と美希は特にトップアイドルとして大きく扱われ、
2人が元々ユニットを組んでいた過去もあり、伊織派美希派論争が日本各地で高まるように。

遂に時は来た!ということで美希が伊織とのフェス対決を熱望、
伊織もこれに応え、事実上のNo.1アイドルを決めるフェスが開催されることに。以下本編に続く……という感じです。

キャラクター解説

各登場人物の設定をアレコレと。オリジナル要素もいろいろ込みです。

・美希
何でも簡単にこなせてしまう器用さと、自然と人に好かれる人望、そして天性のビジュアルを併せ持った美希。
おかげで何不自由なく楽しい日常を送っていたけれど、一方で本当に心から何かに熱中するという経験がありませんでした。
アイドル活動も熱い勧誘を受けて何となく始めただけでしたが、同ユニットの水瀬伊織との出会いが彼女の人生を大きく変えることになります。
常に歌もダンスも自分以上に完璧に仕上げてきて、それ以外の仕事でも自分のミスをしっかりフォローしてくれるスペックの高さ。
そのうえ、それだけの力がありながらも努力に余念が無く、上を目指し続ける目標意識の高さ。
そして、初めて自分に徹底的に厳しく接してくる人間であり、しかしそれは優しさゆえの態度である。
美希はそうした伊織の姿に強い敬意と親愛の情を抱くようになります。
水瀬伊織という人間は美希にとって初めて見るタイプの衝撃的な人種であり、
彼女の存在は美希の何不自由無かった、しかしどこか満たされなかった人生に大きな刺激を与えてくれるものだったのです。
「伊織ともっと一緒にいたい、一緒にいろんな世界を見たい」
美希はかつて無いほどの高揚感を抱きながら、アイドル活動の日々を送っていました。

しかしユニットの解散によって美希の刺激的な日々は奪われてしまう。
絶望して投げやりになった美希を復活させたのは、やはり伊織の存在だった。
「自分を追ってこい」という伊織の言葉によって、今度は彼女をライバルとして追いかけるという大きな目標が生まれたのです。
そしてその気持ちに突き動かされ、あのフェスの舞台まで走り続けてきた……と。
というように、一貫して伊織に対する気持ちの強さで行動している美希ですが、それだけが全てというわけでもありません。
まず、2年間の活動を通して、アイドル活動そのものに対してもある程度の楽しさややりがいを覚えるようになっていました。
伊織と離れ、フェアリーとして活動し始めた時に美希もそうした自分の気持ちに気づいていました。
そしてもう一つは響や貴音、それと2年間世話になってきたプロデューサーへの仲間意識と、リーダーとしての責任感。
ずっと自分を動かしてきた伊織への気持ちが第一ではありましたが、
それ以外にも、応援してくれるファンや響・貴音・プロデューサーのためにも勝ちたい、
アイドルの頂点から見える景色を見てみたい、そういった気持も持ってあのフェスに挑んでいたのでした。動画内では描ききれなかったけどね…w

美希に関しては、情熱を知らなかった天才が特別な存在との出会い、別れ、対立を通して変わっていくという分かりやすい筋書きだったので、自然と話が組み上がっていきました。
もしかしたら相手は必ずしも伊織である必要はなく、千早やら律子やらでもある程度代替の効くストーリーなのかもしれないけれど、でも僕は伊織でこれをやりたかったのだ! ということで。

・伊織
「水瀬家のお嬢様」として裕福で豪華絢爛な、しかし本人にとっては鳥籠の中でただ与えられるがままのような退屈な日常を送り、
また、優秀な2人の兄を見て育ってきた中で大きな劣等感を抱えていた伊織。
765プロの門を叩いた彼女の目標は2つ、
自分だけのものを手に入れることと、自分の力を家族や世間に知らしめ認めさせること
そんな彼女が、星井美希と出会う。
伊織にとってもまた、やはり美希はいろいろな意味で特別な存在でありました。
初めて「“水瀬家の”伊織ちゃん」というフィルターを通さず、いつも笑顔で至近距離に踏み込んでくる特別な友達であり、
才能豊かで自分と同じ長所・自分にないものを持っている、上を目指すうえでの頼もしいパートナーであり、
同時に、自分の目標や存在意義を揺るがす誰より危険な存在でもあった。
まだほとんど眠っていた美希の才能を、隣にいた伊織は誰よりも敏感に感じ取っていました。
圧倒的な力と輝きを秘め、自分の拠り所であるヴィジュアルすら到底勝る気がしない。しかもそんな相手が、同い年の女の子だという事実。
美希は伊織にとって兄達以上に自分の劣等感をくすぐる存在であり、
彼女といると、どんどん自分が平凡な人間であるように思えてきたのです。
でもそれを完全に認めてしまったら、自分がアイドルになった意味そのものを見失いかねない。
だから伊織は必死に抗いました。よりストイックに努力・創意工夫を重ね続け、美希に置き去りにされまいと魂を燃やし続けた。
しかし、そんな日常はじわじわと彼女の精神をすり減らしていた。

解散宣告を受けようとした時、伊織は一度美希という存在から逃れる道を選ぼうとした。
しかし、自分の思いとは裏腹に、美希から「自分よりも凄い、尊敬する人」と思われていたことを知る。
伊織は自分を恥じ、そして美希の思いに応えたいと思いました。
そうしなければ美希の友達・パートナーとして胸を張って彼女に向き合えないから。
そして、自分自身を許せなくなって、真の意味で自分の目的を叶えることができなくなると悟ったから。
プロデューサーは当初、伊織に対してもっと自由になってほしいと考えていましたが、逆に伊織は全部背負って正面から挑んでいく道を選んでいきました。
水瀬家の人間として向けられる目、兄達との差異。
美希に対する劣等感、美希が自分に向ける思い。
亜美やあずさや律子が自分に向ける信頼、ファンからの期待……etc。
全てに対して改めて、真っ直ぐに向きあおうと前向きに腹をくくった伊織もまた、より高い次元へと進化していきました。
そして、そういった思いを全て背負い込んで、あのフェスの舞台へ向かっていたのでした……とさ。

伊織に対しては、僕のこういうキャラが、こういう物語が好きだという理想像を押し付けたようなところがあって、
「公式の水瀬伊織」とは大きくズレてしまったかも……という自覚があるんですが、
星井美希と様々な物語を歩む中でこういう伊織になった」ということで自分の中では納得させています。
ゲームでは誰と組もうが同じシナリオだけど、やっぱり組む相手によって成長の形はいろいろ変わってくると思うし、
今回私が描きたかったのは、「星井美希に影響を受けた水瀬伊織の物語」だったからこれでよし!ということでw

・プロデューサー
一年前は「14Princess」(Bランク)と秋月律子(Dランク)のプロデュースを担当、現在は「Fairy Garden」を担当している。
冒頭の回想シーンでほとんど出てこないから全く仕事してないみたいだけど、
いおみきのやり取りに集中させたかったから登場しなかっただけで一応ちゃんと仕事してるはずです。
ただ、同時にプロデュースしていた律子や、Pがついていないアイドルの面倒も見ていたりしたのと、
やや放任主義的なスタンスなのとで、いつも美希と伊織にベッタリ付いていたわけではなかった……ということになってます。
律子をDランクで引退させちゃったり、14Princessをそのままトップまで導けなかったりしてるけど、
結果的に何だかんだ美希と伊織を頂点に立たせることには成功してるので、それなりに有能な人ってことでいいんじゃないかな。
ちなみに、「14Princess」解散につき、一時期美希から烈火のごとく反発され嫌われましたが、何だかんだ関係修復して今はそれなりに信頼されてます。
ここの美希は伊織が第一って感じだから*1、ハニーと呼ばれるような関係にはまだまだ至っていませんが……。

まあぶっちゃけ展開を作り、動かすための舞台装置みたいなキャラなので特に思い入れも無いんですが、
唯一私の考えを反映させたのが、律子と会話してる時の「想像以上だ」って台詞でして。
何というか、美希と伊織がそれぞれ悩み、苦しみ、戦い抜いてこの舞台まで辿り着いたのを、
「全部この人の思惑通りでした!」ってことにして、2人がこいつの掌の上で踊ってただけみたいになるのが嫌だったんですよね。
2人は最高で最強のライバルなんだから、その闘いはあらゆる人々の枠を超越したものであってほしい。誰かの思惑の中なんかに収まってほしくない。
そう考えて、あのシーンの元ネタになってるはじめの一歩のやり取りで、P側のキャラクターの台詞には無かった「想像以上」っていう一言を言わせることにしました、とさ。

・律子
Dランクでアイドルを引退して、現在は竜宮小町のプロデューサー。
律子にはちゃんとトップアイドルになったうえでPの道へ進んで欲しいって人の方が大多数だと思いますが、
僕としては道半ばで転身を決意するっていう形でもそれはそれで面白いと思っていまして。
加えてストーリーの都合もあり、今回はこういう設定にさせていただきました。
転身後一年で早くもIA大賞受賞ユニットのプロデューサーになってしまったわけですが、
本人は自分はまだまだ未熟であり、竜宮の面々、特に伊織に"獲らせてもらった"という風に考えています。
技術もリーダーとしての資質も十分すぎるほど成熟している伊織に、自分は一体何をしてやれるのだろうか……みたいな葛藤を抱えているとか、
かつては自分のプロデューサー、現在は同僚でありライバルであるPとの複雑な関係だとかなんて設定もあったんですが、この作品においてはあくまで脇役なので私の胸にそっとしまっておくことにしました。

・亜美、あずさ
あずささんは一年前はDランクアイドル。
亜美は一年前、真美と2人1役でEランクアイドル。竜宮結成の際に亜美単体で活動するようになりました。
2人とも伊織の実力には全幅の信頼を寄せていて、彼女が自分達をここまで導いてくれたと感じています。
本人達はあまり自覚していませんが、律子も含めて3人の存在は伊織の精神に対して大きな支えになっています。

・響、貴音
再出発する美希の脇を固めるにふさわしいアイドル、としてプロデューサーが探してきた大型新人。
初期は美希の危なっかしいリーダーっぷりに手を焼かされたりもしましたが、何だかんだ2人とも美希のことを認めています。

・他のアイドルたち
作中には登場しませんでしたが、一応他の765アイドル達もそれぞれ存在していて活動している設定です。
千早はソロで活動しており、一年前はCランクアイドル。
その後IA大賞にノミネートされ、部門賞を一つ獲得しました。
ユニット活動が業界の主流になる中、ソロとしては最高の成果を上げているアイドルであり、美希・伊織に比肩し得る存在だとも言われています。

春香・雪歩・真の三人はトリオユニットで活動しており、一年前はDランク。
その後IA大賞にノミネートされるも、賞を獲得するには至りませんでした。

やよいは一年前はソロで活動しており、Fランクアイドル。
その後、竜宮解散に伴い独立した真美とデュオユニットを組み、IAノミネートまでもう一歩のところまで近づくも逃してしまいました。
真美は当然亜美を、やよいもひっそり伊織を目標に置いていて、2人とも竜宮小町を強く意識しています。

だいたいこんなところで、貯めこんでた話は一通り棚卸しできたかなー。
こんなところまで付き合ってくださった方々、本当にありがとうございました。
ではまた次の動画(あるかどうか分からないけど)でお会いしましょう!

*1:同性愛的な意味ではないよ!