雪歩の5年間、その集大成にして最高傑作

(※楽曲への感想や評価はあくまで一個人の私的なものです、と一応前置き)

5年前、雪歩の声優交代が発表されたとき。
自称雪歩派にしては、自分はわりとすんなりそれを受け入れていたように思います。
元々ニコマスのMAD動画から入った口だから、個人的にはそこまで「声」が絶対的要素じゃなかったですし、
後は新声優初お披露目PVでのセリフがそれほど違和感無かったので、まあこれならいいかなあと。
むしろあの頃は竜宮小町とかの方に気を揉んでいたんじゃないかしらというくらい。

しかし、実際にアイマス2が発売され、そこに「雪歩の持ち歌」として収録されていた「kosmos,Cosmos」を聴いたときは、率直に言ってガッカリしました
ゆり歩時代の透き通るようなウィスパーボイスと、そこに生まれる唯一無二の世界観が好きだった僕にとって、
特別感の無い「普通の女の子」の歌のように聴こえたあず歩のコスコスを、各アイドル専用の必殺武器たる「持ち歌」として認められなかったのです。
とはいえ、「実質雪歩の持ち歌」みたいな推し方で同時リリースされたLMGの方はいい感じでしたし、
さらには雪歩のシナリオだけ専用ED曲が用意されているという超特別待遇のおかげもあって、
コスコスについては諦めつつも、これからは今までと違う「全く新しい雪歩の歌」を愛していこうと切り替えることができました。

ただ、コスコスの件を抜きにしても、あず歩の歌に対してはどことなく物足りなさのようなものが付きまとっていました。
物凄く曲を選ぶ感じで毎度賛否両論だったゆり歩の歌にもあれはあれでいろいろ思うところあったので、
その辺の安定感があるのは嬉しかった一方、でも強烈に響いてくるものが無いなあという感じで。
というのも彼女が登場したMA2時代には、もう765プロアイドルズの歌は大方完成品というところまで成長していたイメージがありまして。
成熟しきった圧倒的に個性輝く765プロアイドル達の歌と比べて、
「可愛い女の子の歌」以上に何かものすごく訴えてくるようなものがなかった雪歩の歌は、
どうしても他のアイドル達と比べて見劣り*1すると思わずにはいられなかったのでしょう。

そういう思いは長い間常々しつこく顔を出していたのですが、
一方で何かの折につけ、「あれ、雪歩の歌、前よりよくなってるような…」と感じることもしばしばでした。
そして、雪歩の成長をはっきりと感じ取ったのが、
2初期以来久々の「非オールスター・共通完全新曲」となったOFAのDLC新曲群でして。

DLCの曲は毎回全員分一通り聴き比べしてますが、どの曲についても雪歩の歌が凄く良い!と素直に思えて。
各曲がCD化したときの理想の歌唱メンバーを考えてたら、4曲全てに雪歩が食い込んできたんですよね*2
そこに贔屓目が全く入ってないとは言い切れませんが、
にしても普段は雪歩よりも伊織亜美真美春香辺りの歌ばっかり褒めてたし、
何より生っすかSPECIALに収録されたアイマスDLC曲のときは、LMG以外理想のメンバーに推せない感じだったので、ホント魅力的な歌い手になったんだなあとしみじみ。
元気なのも静かなのも、明るいのも美しいのもカッコいいのも皆それぞれ魅力的に歌いこなしていて、
むしろ一番王道路線に近い静かな夜に願いを…に選ばれてしまったのが残念なくらいでした。LMGの時はこれ以外選択肢ないって感じだったのに。

中でも特に衝撃的だったのが「99 Nights」で、
ゆり歩の歌、特にコスコスの最大の魅力でもあった、
サイバーなメロディに合わせた透き通るような魅惑のウィスパーボイスをここまでのレベルでモノにしていることに驚きました。
LMGみたく公式プッシュされてるわけでもないのに、「この曲雪歩が一番いい」ってコメントが見られるという珍しい光景も万感ものでしたね。
そしてこの99夜を聴いてから、「今の雪歩が歌うKosmos,Cosmosなら、また雪歩の持ち歌として受け入れられるんじゃないか」と思うようになったところで……

偶然かそれとも狙い通りか、MA3でまさかの新アレンジでfull再録が来ちゃったわけで。
伊織のMA3に引き続き、これもやっぱり買って聴いて確かめるしかあるまいな、と。

そしてamazonさんに数日焦らされた後、期待と不安で胸いっぱいな状態で聴いた新あず歩コスコスは、

結論から言うと、期待以上の出来。
「雪歩の持ち歌としてアリか、ナシか?」なんてレベルは優に飛び越えて、
「ゆり歩版とどっちが良いだろうか」と一瞬真剣に考え込みそうになったくらいでした。すぐに流石に旧版の方がまだ上かなーと思い直しちゃったけどw
やっぱりコスコスの最大のポイントたるウィスパーボイスの歌声に寄せてきてくれたのが素晴らしいし、
ゆり歩のような吹っ切れ全力投球感と、表裏一体の今にも消えそうな儚さのような唯一無二の魅力はないけれど、
一方で余裕と強かさ、どっしりとした安心感に支えられたと頼もしいアイドル感があず歩コスコスにはあって、今までのコスコスとはまた違った味わいを楽しめながら聴けますね。
どことなく、強く優しく縁の下の力持ちやってたざわわん雪歩のイメージに近い魅力があるような。

ともかくそんなわけで、
2ndvision・17歳の雪歩も対しても改めてコスコスを持ち歌として認識できるようになったというその一点だけで万感の想いなんですが、
このアルバムにはまだもう一つ、ドデカい爆弾が用意されていまして

それがこの、コスコスに負けじと注目度抜群だったAgapeのカバー
カバーが決まった段階から雪歩に合うだろうなーとは思いつつ、
アイマスのカバーの真骨頂はちょい懐かしめのJ-popで、こういう有名どころのオタク系アニソンのカバーってどれも微妙な感じになるイメージだったのでどうなんだろうとも。
しかしこれもまた、そんな不安を吹っ飛ばし、たぶん合うだろうなーなんていう安易な予想を遥かに飛び越えていくクオリティでした。
コスコスの感想にも通じるけど、ウィスパーボイスを磨いてきたことによる透明感や儚さと、
しっかり地に足ついてる安心感とが、まさに「無償の愛、神の愛」を歌う者としての威厳と慈愛に満ちていて。
よく雪歩を形容するのに「天使」って言葉が使われてますが、
初めて背中に天使の白い翼を生やした神々しい雪歩の姿が具体的に脳裏に浮かんできた、そんな視聴体験でした。
765の中でもトップクラスに方向性の振れ幅が大きい雪歩において、
ゆり歩の歌う「inferno」は一つの究極系、闇属性雪歩の極北みたいなイメージがあるんですが、
あず歩Agapeはそれに対して聖属性雪歩の極北になり得るんじゃないかとすら思いました。
ゆりあず両方の時代を通じて、今まで雪歩のカバー曲には「これぞ!」っていうドンピシャなものが無かったんですが、
Agapeは一瞬でその位置をかっさらっていくどころか、「世界でいちばん頑張ってる君に」「じゅもんをあげるよ」辺りとNo.1カバー曲争いを繰り広げる勢いでした。

とにかくこの2曲に尽きるっていうアルバムなんですが、
その他だともう一つのカバー、Snowdomeも予想外に良かったですね。
派手さはないけど落ち着いていてお洒落な調子が今の雪歩の歌と凄く合ってて、耳心地よくしっとり聴き入っちゃいます。
これもAgapeが来てなかったら、今までの雪歩カバーの中で1,2を争ってたやもしれませんね。
強いて何か言うなら、メイン曲のあの日のナミダがちょっと惜しいかなーという感じ。
いや十分いい曲だしOFAシナリオ踏まえて聴くとかなりグッとくるんですけど、
世間の評判がコスコスAgapeのインパクトに埋もれ気味なところを見るに、
メインのこれがAlrightクラスの雪歩代表曲レベルだったら、このアルバムは文句なしにアイマスソロアルバム史上最高傑作になってたんじゃないかなと。
そこまで期待するのは流石に贅沢すぎるでしょうけど…w

まあとにもかくにも、素晴らしいアルバムだったの一言につきます。
少なくとも雪歩のCDとしては、両声優時代通じて間違いなく過去最高傑作だと僕は断言したい。
そして、書く機会逃してたのでここでまとめて放出しちゃったけど、ホントあず歩の歌よくなったなーと。
コスコスは言わずもがな、AgapeもsnowdomeもMA2の頃にカバーされていたら絶対ここまでのクオリティではなかったでしょうし。
ウィスパーボイスを磨いてゆり歩の魅力を取り込みつつ、あず歩以降の余裕を感じる安定感もきっちりキープしてるハイブリッド感。
ちょくちょく歌い方にアクセントつけたりあざといアピール入れたりする遊び心もViアイドルらしくて実に楽しく、歌ごとに合わせた表現力が素晴らしい。
いつの間にかDLC祭りでも真っ先に雪歩の歌を、期待感に胸をふくらませながら聴くようになりましたし、
すっかり他の765アイドル達と比べても遜色ない魅力的な歌い手になったんじゃなかろうかと。

MA2の頃、成熟した他のアイドル達に囲まれる中、一人まだ未熟な駆け出しだった雪歩が、
しかしその分誰よりも大きかった伸びしろをこの5年間で存分に伸ばしてきて、
そしてこのMA3では、すっかり他のアイドル達と肩を並べて堂々トップアイドルしている。それが何より嬉しいわけで。
一応雪歩派を自称しつつ、伊織の歌ばっかり褒めて雪歩の歌にはあんまり触れないことに一抹の罪悪感みたいななものをずっと抱えていたので、
雪歩の歌を心から絶賛出来る日が来たというのはホント夢のようで、すごく幸せなのです。
4年半前、初めてあず歩のコスコスを聴いてガッカリしていたとき、
まさかここまで雪歩の歌に夢中になれる日が来るなんて、正直想像できていませんでした。

雪歩の存在を2ndvision765プロにも存続させてくれたというただそれだけでも今まで浅倉杏美さんには感謝してもしきれませんでしたが、
今はそれだけでなく、こんな魅力的な雪歩の歌を聴かせてくれるという意味でも何者にも代え難い存在なのだと感じるようになりました。
雪歩の新しい声優が、この人で良かった。改めて心からそう思う今日この頃です。

*1:というか聴き劣り?

*2:ちなみにキミチャン→春香雪歩亜美、99夜→美希真雪歩、静夜→千早雪歩貴音、goodbyes→律子伊織美希雪歩真って感じです