蓋を開けてみれば"王泥喜法介の物語"だった「逆転裁判6」感想

逆転裁判6 - 3DS

逆転裁判6 - 3DS

逆転裁判4」での失敗から、7年もの間停滞していた逆転裁判シリーズ。

シリーズの未来を切り開いた「逆転裁判5」に称賛と感謝を

その間をスピンオフの検事シリーズで何とか食いつないできたスタッフ達が手がけた前作「逆転裁判5」は、
出来そのものは賛否両論あったものの、
「4」の残した負債にしっかり向き合い上手く精算して、
シリーズの新しい未来に繋げるという、非常に大きな役割を果たした一作だったと思っています。

そんな「5」の後として、取りうる選択肢としては、
①「4」にある程度ケリつけたことだし、今度こそキャラ一新で新しい物語を始める
②引き続き、「5」で築き上げたナルホド・オドロキ・ココネのトリプル主人公を中心とした成歩堂なんでも事務所の物語を続ける
大まかに分けて、この二択。
いい加減ナルホド君メインの物語に限界を感じていた自分としては、
理想は①。②にしても、せめてオドロキやココネら次世代キャラの方をメインに据えてくれって感じでした。

そして公式が打ってきた展開は、その両立
巧舟メインでキャラ・世界観一新した新シリーズ「大逆転裁判」を作り、
②検事や5のスタッフで成歩堂達の続編、「逆転裁判6」を作るというものでした。
私としては念願の完全新作を、しかも他でもない逆裁生みの親タクシューが手がける「大逆転裁判」の方がとにかく大本命で、
発表以来ずっとワクワクドキドキしながら発売を待ちわびていたわけですが、
しかしその大逆転裁判あまりにもガッカリな出来だったのがショック大きくて、シリーズ全体への熱が少し冷めてしまった気がします。
その後発表された、あまり待ち望んでいなかった「6」の方は、
またナルホド君メインで、しかも、あえて成長した姿を出さないようにしているのだろうと評価していた真宵ちゃん(28)も持ち出してきたという宣伝の仕方もあって、
今までの逆裁シリーズでは、検事2の時の次くらいに発売前のモチベーションが低かったんじゃないかなーと。
このスタッフならある程度のクオリティは確保してるだろうという信頼はありつつも、
でも、成歩堂達を引っ張り続ける限り1〜3や検事2クラスの傑作になることもないだろうなあと、良くも悪くも高が知れてるわーって心境でしたからね。

しかし、蓋を開けてみると、逆転裁判6は期待以上に面白く、記憶に残る作品に仕上がっていました。
(※以下作品のネタバレ含む)

その最大の理由としては、本作が発売前の予想に反して、王泥喜法介を中心に据えたドラマ」になっていたからでして。
発売前はマヨイちゃん復活のプッシュとか、
「『"クライン王国で"活躍する成歩堂』と『"日本で"活躍する王泥喜』のW主人公制!」って宣伝文句とかからして、
W主人公っていっても、明らかにクライン側の成歩堂がメインでしょ?って思ってたし、
異国を舞台にした物語に成歩堂真宵コンビが挑む!という、レイトンvsみたいな外伝的・劇場版逆転裁判ってノリの作品になると予想してました。
しかし蓋を開けてみれば、むしろクラインの物語にガッツリ絡んでるのがオドロキ君だったというまさかの展開。
クラインがオドロキ君の生まれ故郷で、ライバル検事も幼馴染どころか兄弟的な関係で、ラストは親の敵討ち展開になるという……もう完全にオドロキ君が主人公だこれって感じでしたね。
今考えると、成歩堂単独主人公でも、心音ちゃんを含めたトリプル主人公でもなく、
W主人公っていう謳い文句だったことから王泥喜がこれだけプッシュされるのを察するべきだったのかもなーとか。
こういう作りになったのはまたいろいろ賛否あるでしょうけど、個人的にこれで良かったと思っています。
やっぱり「外の人間」として成歩堂や真宵がクラインの騒動に関わるだけよりも、
主人公サイドの人間のドラマが関わってくるからこそ、プレイヤー側としても熱くなれるし、
何より、「今度はナルホド君がこんな事件に関わるよ〜」って形でダラダラとシリーズ重ねるだけではなく、
ちゃんと主要キャラの物語を進めて、一つ区切りを打つ姿勢を見せてくれたことが何より嬉しかった。
なあなあで埋もれていくと思ってた、オドロキ君の出自周りの設定がまさか回収されるなんてなあ……w
前作といい、4をただの黒歴史扱いせず、程よい形で精算していくスタッフの仕事ぶりは素晴らしいですね。

一方で、今回のオドロキ君のエピソードはどうしても、「後付けくささ」を拭いきれないきらいもあって。
最終的には素直に「熱いなこれ!」って楽しんでたけど、
最初、「実は海外の革命派リーダーがオドロキ君の育ての親でした」って話が出てきたときは、あまりの豪快な後付け感に苦笑してしまいました。
元々1〜3だって、1だけで終わるところを倉院の里周りの設定とか、成歩堂千尋さんの昔の恋人とかいろいろ付け足して続けてきたシリーズなんだけど、
今回のが特別それを感じさせられたのは、まずはやっぱり設定が豪快すぎたからかなあと。
元々王泥喜は「両親と生き別れて、実はヒロインみぬきちゃんの異父兄弟で、特殊能力持ち」という4の時点でかなり濃い設定が付いてたのに、
そこにさらに、こんだけ濃い味付けがなされるとどうしても強引な感じがしちゃったのです。
成歩堂がそういう派手な設定をあまり持たない主人公な分、余計に際立っちゃいますね。
また、5でも「学生時代の親友が〜」という追加設定を持ち出してきた後だったから、「こいつ次々付け足されてんな」感が出てくるというのもあるか。
4の後に今回の話が続けて出てきたら、もうちょっと印象和らいでた気がする。
あとはまあ、なんといっても、ぶっちゃけ途中でシナリオライターが変わっているという事情があるからそう思っちゃうってのがデカいですね。
4の時に、タクシューがこんな設定を思い描いていたとは全く思えないんもなあ……w

とはいえ、一応4で明かされていたオドロキ君の出自周りの設定とはそれほど齟齬が出ない形で繋げているはずだし、
二人の師の意志を継ぎ、二人の父の仇を討ちという展開は燃えるものがあったしで、今回の王泥喜物語への挑戦は個人的には凄く評価しています。
何より、4で主人公とは名ばかりの、真の主人公成歩堂の掌の上で踊る置物みたいな扱いを受けていたあのオドロキ君が、
逆にその成歩堂をシリーズ初のサブポジションに追いやって、堂々ど真ん中主人公してたってのはちょっと感じ入るものがありました。
最終話で、「ここまでオドロキ君中心のドラマを作っておきながら、ラストを成歩堂が掻っ攫っていったらやだなあ」と思いながらプレイしていたので、
最後まで王泥喜メインのシナリオ展開を貫いてくれたのはよく決断したと言いたいところ。
やっぱり、もう成熟しきってる成歩堂や御剣達よりも、
まだ掘り下げの余地がある若者たちの方が面白い物語を生み出せると改めて感じさせられた今作でした。

私自身も1〜3信者ながら、「タクシュー脚本以外、主人公成歩堂以外認めない!」的な声の多さには正直少し辟易してるんですが、
まあしかし今作は、真宵ちゃん復活プッシュでそういう層に期待させつつ、
実態はオドロキ君物語でしたー!というある種広告詐欺的な作りだった以上、その点について批判が出てくるのは仕方ないよなあと。
真宵ちゃんも被告人になったり誘拐されたりとある種らしさ(笑)は出ていたし、ちゃんと成長したところも描かれてはいたけど、
出番少ない上、何より一緒に捜査する場面が一度も無くてコンビ復活感薄かったからなあ……。
(たぶんその辺の成分は、御剣矢張も出てきて同窓会的ノリのDLCシナリオでフォローするんでしょうけど)
個人的には、今回の作品がこういう完全にオドロキ君メインの物語になっていたにも関わらず、
ああいうナルマヨコンビ復活的な宣伝を打たざるを得なかったところに、
今の逆裁スタッフの苦労が見えるというか、逆転裁判というコンテンツの歪さが見えるというか…。
今回の作品はかなり楽しめたけど、しかし、やっぱり1〜3や検事2には及ばないかなあという評価でして、
その大きな理由の一つが、メインに座ったオドロキ君の積み上げがやや足りなかったように感じるからなんですよね。
前述の後付け感が拭いきれないというのもそうだけど、
例えば今作だけ見ても、クラインの物語と因縁があるのはオドロキ君だけど、
中盤までずっとその物語に関わっていくのは成歩堂の方だから、最後だけ王泥喜がかっさらっていったみたいな感じになっちゃうんですよね。
象徴的なのが最終話の、レイファ様へ託宣の説得をするシーンで、
あそこは王泥喜じゃなくて、今まで託宣のある裁判に関わってきたり、探偵パートで絆を育んできた成歩堂が中心じゃないと違和感があるんですよね。
しかし、レイファ様と物語上の因縁を持つのは、やはり義理の兄的なポジションにあたる王泥喜なわけで。
つまるところ、中途半端に成歩堂をW主人公として立たせるよりも、
今作一本だけでも完全に王泥喜メインの作品としてクラインの物語を作りこめば、より完成度の高い作品になったんじゃないかなあと。
しかし、「今作の主人公はオドロキくん! クライン王国に纏わる彼の因縁が描かれる!」よりも、
「今作は成歩堂が異国で活躍! しかも真宵ちゃんも復活! …あ、オドロキ君もW主人公として日本で活躍するよ〜」という宣伝の方が需要に合ってるというか、そうじゃないと許されないというか…な感じなんでしょうね。
スタッフとしては、逆裁5後の人気投票で王泥喜が1位だったという結果もあって、
「よし、次は王泥喜くんメインで4の過去エピを精算するで!」って意気込みだったのに、
こういう状況だから、ある程度成歩堂成分も確保せざるを得なかったんじゃないかとか、そんな勘ぐりをしちゃいます。
宣伝詐欺みたいなやり方自体は褒められたものじゃないけど、こういう難しい状況で検事スタッフはよく頑張ってるなって印象が今回も付きまとった作品でした。
そんな細かいこと気にせずもっと素直に楽しめればいいんだけど、4以降のアレコレを見てるとどうしても、ね……。

オドロキ君問題はこの辺にして、他の要素についてアレコレ語っていくと、
まず、新要素「御霊の託宣」が素晴らしかった!
ちょっと指摘箇所が分かりづらくて難易度をはね上げていたという欠点もありますが、
死者の死の直前の映像・五感とその解釈との矛盾を探す、という本旨は作品の根幹ともよく合っているし、
誰の目に分かるようハッキリと映像化されている分、
みぬくやココロスコープの欠点であった「これって弁護側に都合のいい難癖に見えるよね」って印象を持たないのも良い。
何より、シナリオ上での扱いが上手かったことも好印象につながっています。
最初は「こんなに矛盾みつかっちゃう映像で判決決めちゃうのかー」と悪習に見えたものが、
次第に「証拠品だけでは届ききらない真実を見つけるための優秀な"イチ証拠"」としてプレイヤー側の希望になっていくという展開が良かったし、
そこに使命感を見出す形で、ヒロイン・レイファの成長物語に繋げたのも上手かった。
逆裁4以降のアレコレ追加された新システムの中では、一番の良システムじゃないかなーと思います。

"託宣"に限らず、今回は世界観の中心になっていた霊媒関連の扱いも良かったですね。
殺人のトリックに霊媒みたいなオカルト要素を絡めたりすることはシリーズ当初から賛否ありますが、
確かどこかでタクシューが語っていた、「設定をちゃんと開示して公平な状況のうえでなら、ミステリのトリックにオカルト要素を使うのも問題ない」みたいな感じの論調に私は納得してます。
今回にしても、霊媒をするには名前と顔が分かっていないといけない」「霊媒をすると声や容姿もその人物のものにかわる」
という2つの設定が鍵を握っていましたが、
前者は繰り返し様々な場面で語られることで、
後者はマルメルさんin真宵という強烈すぎる光景を出すことで、
プレイヤーにしっかりと前提条件を刷り込ませて、これらを踏まえたうえでの推理が出来る状況を自然と作れていたように思えます。
霊媒を使った今作最大の大仕掛け「ドゥルクは既に死んでいた」は心に残るお見事な展開でしたし、
結局どっちも実現しなかったけど、「始祖」や「鳥姫」といった伝説の人物を霊媒するか? みたいな展開はスケール大きくてドキドキした。
総じて、今回のシナリオにおける霊媒設定の活かし方は非常に良かったんじゃないかと思います。

一方、シナリオ面で残念な点を一つ挙げるなら、「最終話の事件があっさりしすぎていた」かなあと
日本での王泥喜vs成歩堂で一日目、クラインでの大臣殺害事件で二日目。
合計のボリュームは過去作の最終話にも引けを取らない、どころか多く感じるくらいなんですが、
メインとなるクラインでの事件単体で見るとややボリュームが少ないし、関わる人物もごくわずか。
そのせいもあって、真犯人が誰かとか、事件のあらましがどうかとかがすぐに察せちゃうのがもったいなかった。
探偵パートの時点でかなりヒントが出ていたこともあって、
・ドゥルクは既に死んでいる
・アマラ=バアヤで、彼女がドゥルクを霊媒中。ドゥルクは彼女をかばっている
・レイファはドゥルクとアマラの間に生まれた子供。ナユタは彼女をかばっている
・23年前の再審理で、新たに名前と顔の判明した王泥喜奏介の託宣(もしくは霊媒)が真実への鍵となる
この辺の、最終話での肝となる展開のほとんどが既に予想できてしまっていて、
クライマックスの裁判の展開が総じて予想の範疇を出なかったんですよね…
ドゥルクの件と、奏介の託宣で過去の事件を解決する展開はドラマ的な熱さ故に気付いた時点でゾクッとしたし、分かっていても尚面白かったんですがね。
贅沢を言うようだけど、クラインの事件を2日分くらいに分けて、もうちょい展開を複雑化させたらより楽しめたんじゃないかなあと。
それで一日目を成歩堂主人公にして、3みたく二日目からオドロキに引き継ぐ展開にすればW主人公の面目も保てたでしょうし。
(そうするとオドロキ君が最後だけ掻っ攫った感も強くなるかもだけど)

シナリオ以外の面に目を向けると、前作「5」での欠点がキチッと改善されていたのが良かった。
具体的に挙げると、
・「調べる」が事件現場など特定の場所でしか出来ない
・テキストでヒントを出しすぎて簡単すぎ・萎える
・アニメーションパートの挟み方がダメ

この3点ですかね。
前作の感想で、明らかな欠点として挙げたのが確かちょうどこの3点だったので、
そこがきっちり改善されてたのはちゃんとユーザーの声拾ってくれてるのが分かって嬉しいですね。

惜しかった点としては、今回はあんまり印象に残るBGMが無かったような
作品の顔となる追求もちょっとインパクト不足な感じだったし、
印象に残ってるのは2話の犯人のテーマと、後はあのパチモンくさいトリサマンのテーマくらいかなあ。後者は既存BGMのアレンジだけど。
5から続いて、成歩堂王泥喜・心音それぞれの「異議ありのテーマ」差別化は相変わらずテンション上がりました。
特にオドロキとココネのテーマはシリーズで十指に入るくらいお気に入りなので、
この曲聴けることがこの2人を操作するときの最大の楽しみみたいになってる面もあるような。
ただ、この二曲にしても今回のアレンジがあんまり好きじゃなくて、5に比べるとやっぱり微妙だったかなあ。

あと、感想を見回ってると、
3Dキャラのモーションが長ったらしいのと、傍聴人の罵声とでテンポ悪い・ウザイって意見ってが多かったけど、
自分は最初からセリフスキップONにしてたので、そんなに気にならなかったかなあ。
スキップ無しなら、一話のポットディーノとかは確かにクソウザそうだけど…w
クライン・日本問わず徹底した傍聴人からの罵声の嵐も、完全アウェイの状況からの逆転って感じでこれはこれで楽しかったです。
4話の展開だけは、傍聴人使って精神ダメージ与えてくるナユタ検事がちょっと小者くさくて微妙だったけど。

諸要素についてはこんな感じで、あとはエピソードごとの感想などを。

・1話「逆転の異邦人」
チュートリアルながら、4を筆頭になかなか衝撃的な要素を詰め込んでくる逆裁の1話ですが、
今回はあんまり印象に残るものがなくて、イマイチなエピソードだったかなあ。
ぽっと出のにわかさんのネーミングとキャラが面白かったのは評価できるけど。
1話にしてはやや難易度が高かったこととか、
序盤からオリジナル世界観全開なとことか、今回はちょっと初見お断りな感じを受ける話でもありましたね。

・2話「逆転マジックショー」
非常に良かったです。
2話ポジションの話としては、シリーズで一番のお気に入りかもしれません
オドロキ君の成長という今回の肝となる描写に繋がる話でもあったし、
被告人としてみぬきちゃんにスポットが当たったことで、
今まで強キャラすぎて苦手意識のあった彼女をようやく好きになれてきたのも大きい。
ミミちゃんが実は双子だったって展開は微妙だったけど、
みぬきちゃんのマジック証言への尋問とかは新鮮だしシナリオとも上手く絡めてて楽しかったし、
何より真犯人メンヨーさんのキャラが良かった
狡い罠を使って金銭面・名誉面と二重三重にプレイヤー側を追い詰めてピンチ感を大きくするいい仕事をしていたし、
変貌してからの妙なカッコよさは、BGMも相まっておおっと思わされた。
序盤の犯人にしては妙に格の高いキャラなので、このエピソードが4のラストくらいに来て、この人がラスボスやってたらもっと上手く王泥喜・みぬきシリーズのスタート切れてたんじゃないかなあとか思ったり。
「或真敷の孫(みぬき)に勝った!」と捨て台詞残しつつ、実は或真敷の孫(王泥喜)に負けてるっていう去り方もなかなか乙なもの。
にしてもこの人の登場で、また一人或真敷一族のクズコレクションが増えてしまいましたね。
「或真敷のマジシャンはクズだらけだ!」って言われてた時、せやせやうんうんと思わず頷いてしまいましたわ……w

・3話「逆転の儀式」
この話も良かったですねー。
中間の2・3話に続けて良エピソードが来たことで、今作全体の印象がかなり良くなっている気がします。
1日目の時点でちょっとオガム君を疑ってたら実は既に殺されてたとか、
サーラさんを疑いだしたら真相は自殺だったとかいい感じに二転三転して楽しませてくれたし、
弁護罪や託宣といった本作の世界観を上手く絡めたオチが何よりお見事でした。
にしてもまあ、マルメルさんの霊媒はかなりショッキングなシーンでしたね。
男性が霊媒されるところって今まで直接的に描写されてなかったけど、ここまで強烈なものになるとは……w
霊媒したら肉体も変わるってのを忘れてたので、上着脱ぎだしたところでビックリしちゃいました。
このまま除霊されたらいろんな意味でマズイのではと思ったけど、流石にその時は上着着直してましたね。
この霊媒とか、トリサマンとかわりと遊び心も挟まってるのに、
事件の本旨自体はどシリアスで悲劇的なもので、
この結末をきっかけに革命が本格化していくっていう全体の物語への繋げ方も上手かったですね。
あんな顔して超武闘派の秘密警察で、権力を盾にやりたい放題しているオガムこと本名さんの設定がなかなかエグかったので、そこのところもうちょっと掘り下げて欲しかったなというのが心残り。

・4話「逆転寄席」
そんなに悪い出来ではないし、
無いかと思ってたココネちゃんの操作機会が用意されたことも嬉しかったんですけど、
3話のドキドキ展開の後にこの緩い話が来ると、正直ちょっと熱が冷めちゃった面も
他に挟みどころがなかなか無かったんでしょうけど、
法廷パートオンリーの4話って今までは、クライマックスへの繋ぎとなる大事なエピソードになるパターンだったからなあ。
この緩い事件にわざわざナユタ検事が出張ってきて、ユガミさんにボコボコにされたのもちょっとシリアス感削いじゃった感ある。
日本での緩い話だから、消去法でガリュー辺りと対決かなあと思ってたら、
またこの人が検事席にいて「お前かい!」と思わずツッコミたくなりました。

事件そのものは、落語にあまり造形が深くない*1のでその辺でニヤリとすることもなく、
法廷パートオンリーの話ということでまあそれほどのものでもなかったけど、
プーコさんはじめキャラのノリがいい意味で懐かしい感じだったのと、
「ソバ生地が実はウドン生地」っていう逆転展開のくだらなさは良かったです。
特に後者は、カンガエルートの演出でデカデカと壮大に「真の 凶器は ウドン生地」って表示されるところが最高にシリアスな笑いでしたね。

成歩堂王泥喜の主役達から離れて、
ココネとユガミのコンビをプッシュする箸休めの番外編って感じで、確かに実際そこは良かったんだけど、
味方に回ったユガミ検事があまりにも無双しすぎて、完全に心音ちゃんを食っていたのがちょっと残念だったかなー。
心音ちゃんは年齢的に初期のナルホド・オドロキ以上に未熟なキャラ設定っぽいし、
彼女に思考を先回りされるとユガミ検事のキャラ格が傷つくって問題もあるんだろうけど、
にしてももうちょっと主人公が活躍した感を味わわせてほしかったなあと。
そういう意味では、キャラ格云々でやや評価揉めてはいるけど、
最終話で隣に立つナルホド君がちゃんとオドロキ君を立てていたのは良かったんじゃないかなと。
あそこでナルホド君が思考先回りしまっくてたら、熱さ半減だしオドロキ君の活躍感薄れるしね。

・5話「逆転の大革命」
倉院の里が出てきて、ここからついにクライン王国と日本・綾里家の因縁が絡まったりするのだろうかとか思ったけど、
結局言うほど日本とクラインの話は交わらなかったですね。
サナギ教授のロシア人妻とかもその絡みで殺されたのかと思ってたけど、特に関係ないまま終わっちゃった。
この辺もうちょっと上手く絡ませられたら、もっといいシナリオになったんじゃないかなーって気がしないでもない。

キャラ一新が理想といいつつ、
「倉院の里なら春美ちゃん辺りが出てくるかなー」と考えて、実際出てきたら何だかんだ嬉しかったりするのは否定できない。

一日目の裁判は、シリーズ初の民事裁判というシチュエーションで弁護士同士を戦わせるっていう発想が面白かったですね。
まさか逆裁で民事裁判を見ることになるとは思わなんだ。結局殺人事件の話に移行したけど…w
オドロキ君に師に認められる(2話)→師と闘う・助ける(5話①)→師の意志を継ぐ(5話②)という熱い主人公ステップを踏ませるためのエピソードでもあるんだろうけど、
2-4で一度味わったのと同じオマージュシチュエーションで、同じように成歩堂が苦しめられるってのはナルホド側の成長が見えないような感じもしてちょっと残念だった。
オドロキ君が成歩堂を助けるって展開自体はいいと思うんですけどねえ。

犯人の清木君は小者過ぎて逆に殺人を犯してるイメージが湧きづらかったけど、
政治家ネタはいろいろとタイムリーな感じもあって面白かったです。
殺人犯よりも、道化じみた共犯者くらいのポジションで見たかったキャラだなあ。
あとまさかの美少女だった軍曹は、あざといなーと思いつつも魅力的なキャラでしたね。
普通にネクラな感じの痩せたオタク男子を想像してたのでビックリでした。
2-4のカミヤキリオみたいに、続編で再登場して成長した姿が見たいタイプのキャラクター。

後半の大臣殺害事件は、
前述した通り最後までオドロキ君で行かせてくれて良かったってのと、ちょっとコンパクトにまとまりすぎてて展開読めちゃったなーって感じ。
でも何だかんだ渾身のドゥルクの仕掛けは記憶に残るシーンになったし、
シリーズ屈指の少年漫画的熱さを持つ展開を素直に楽しませてもらいましたね。
意志を継いで仇討ち、そして国家を革命するというスケールの大きさも合わせてワクワクしました。
ドラマの核となる、ドゥルクがストレートにカッコイイ父親キャラに仕上がっていたのがやっぱり大きいですね。
母親キャラのドラマは綾里母、希月母とかあったけど、父親ってあんまりなかったもんなあ。
強いて言えば検事2の御剣父だけど、あれも直接的な絡みはない形での描写だし、
というか綾里母や希月母もほとんど絡みは回想のみだったから、
親の生存時から(せいかくにはもう霊媒中だったけど)、ここまで強く親子の絆ドラマを描いたのはおそらく初めてなのでは。
その対象がしっかり尊敬できるキャラだと、こいつの意志を継ぎたい・こいつのためにも勝ちたいって気持ちに素直に同感できたのが良かったです。
みぬきちゃんが或真敷を継ぐ〜とか言ってても、ザックの顔がチラつくと微妙な気分になっちゃうもんね!

・特別編 時をこえる逆転(7/3 追記)
成歩堂vs御剣に矢張も絡み、何より助手の真宵ちゃんとワイワイやる…という同窓会的な空気で、
宣伝内容から想起され期待されていた当初の逆裁6、という感じのおはなし。

話のクオリティは…う〜ん、正直言って微妙でした。
5の特別編や6の2,3話がよくできていただけに、上がった期待値を越えられなかった感じ。
一番マズかったかなあと思うのは、話の根幹・とっておきの仕掛けであるはずの「タイムトラベル」を一話の裁判時点でもう種明かししちゃって、後半戦が消化試合感漂ってたとこかなあ。
2日目以降も記憶喪失と絡めてタイムトラベラーというワードをだしてたけど、そんなことではごまかされませんよ…w
というかタイムトラベルのネタ自体も簡単に想像つきすぎてあんまり面白くなかったしなあ。
「夫婦の愛」の方を前面に出す後半の展開も嫌いではないけど、
犯人が正体判明以降あっさり小者化しちゃったこともあってもうひとつ盛り上がりきらなかったかなあ。ラストの裁判長の粋なセリフと演出は好きだけど。

もう一つ引っかかったのが、モーションの長さ。
本編の感想で批判されてたときはそこまで気にならなかった私も、
流石にこのエピソードの新婚夫婦の紙飛行機とお色直しモーションの長さにはイライラを禁じ得なかった
あれを探偵パートでつきつける選ぶたびに見せられるのは流石にキツイっすわ。
探偵パートのつきつけって本来は息抜きの楽しみのはずなのに、
「専用テキストアリの証拠品だけをピンポイントで探り当て、如何にノーマル会話を回避するか」…とか考えさせられちゃう時点でもう楽しめてないんですよ。しかも正解を探り当ててもテキストあんまり面白くないし。
個人的な持論として、ストレスを回避することに脳のリソース使わせちゃうのはゲームとして致命的な欠陥だと思うんですよね。
ロード時間の長さで悪名高い閃の軌跡をプレイしてた時
「クソ長ロードを回避するために、少しでも効率よく建物をめぐらねば」と最短経路を考えるのにめちゃくちゃ頭使わされるという酷いゲーム体験させられて以降、強くそう思うようになりました。
しかもこの逆裁の例の場合、ロード時間と違って改善しようと思えば簡単なはずだけに、
なんでこういうとか気付かないのかなあ…とちょっと呆れちゃいますね。
5でも調べるを削った前科があったことだし、もしかしたら探偵パートで片っ端から証拠品を突きつけるというプレイングを想定できてないんじゃないかとか疑っちゃいます。
このモーションのストレスでキャラ自体への好感度が下がって、2人が結ばれる展開に感動しきれないかったみたいな面も少なからずあると思うので、ここはホント大失策だったなあと。

なんかだいぶ批判が先立っちゃいましたが、
成歩堂真宵御剣矢張茜ちゃん裁判長らによる同窓会的な空気を楽しむ話としては、まあそれほど悪くもないんじゃないかなーとも。
真宵が御剣の車を足がわりにしてるとことか楽しかったし、
成長した真宵の言動に千尋さんの面影を重ねるところとかは、ちょっとグッと来てしまったし。
でも、今回は結婚がテーマなだけにこいつら歳取りすぎたなあと嫌でも意識させられちゃったし、
何より仲良しこよしのど安定な空気すぎてなんか緊張感に欠けるしで、
やっぱり本編は、成歩堂真宵コンビメインじゃなくああいう展開にして正解だったなーと改めて感じました。

あと気になったのが、旧キャラだけで話回したいという都合上か、みぬきちゃんがあまりにクレイジーすぎるキャラになっちゃってたこと。
せっかく6-2で上がった株をまた下げてどうなのこれって感じでした。
そして同時に、味方サイドに常駐してるキャラが多いから、数名外すためにこういう理由付けが必要になるんだなあということを意識させられました。
みぬきちゃんのマジック云々は特にその言い訳に使われてるイメージありますね。
やっぱりこんだけキャラ多いといろいろ苦しい部分があるので、
今作でオドロキ君を排除したのはまあいい判断だったんじゃないですかね。

意地悪な言い方をすれば、今作一番の収穫はオドロキ君を卒業させられたことだと思います。
このまま5以降の成歩堂事務所物語を続けていくとすれば、
成熟した我らが成歩堂と、未熟な新人兼ヒロインの心音との間にいるオドロキ君はだんだん使いづらくなっていくんじゃないかなーと思ってたので、
今回体よく王泥喜君を独立、しかも安易に絡ませづらい海外に置いてきたことで今後の話作りが楽になったんじゃないかなーとか。
それもこれだけ華々しく活躍させ、4の伏線もある程度拾ってからだと、
"不遇な追放"よりも"正式な卒業"って感じで悪い気はしないですしね。
私自身今作で王泥喜君の物語にはまあそれなりに満足したので、海外独立オチもこれでいいんじゃないのと素直に感じられました。
とかいって、次からも御剣みたいな終盤のとっておきポジションになるかもしれないし、
みぬきちゃんの話とかになったらまだまだメイン格で出てくるやもしれませんけど。

キャラ一新の方を大逆転裁判に分けた以上、
こっちのスタッフはこれからも成歩堂シリーズを続けていくんでしょうけど、
次回作として一番想像がしやすいのは、
心音のアメリカ時代絡みの話を中心にドラマ作って、旧作ファンへのサービスで狩魔冥(29)を出すとかでしょうか。
もしくは同じく使いづらいポジション感あるみぬきの話に決着つけるか、
あるいは今度こそ満を辞して成歩堂真宵コンビメインという可能性もあるかな。
このまま続けても、1〜3を超える大傑作は見られないだろうなあという、
全盛期すぎたおっさん選手達で何とかAクラス争いしている近年の巨人を見るような寂しさはあるけれど、
一方でこのスタッフなら4や大逆転みたいな大コケはせず70~80点くらいは取ってくるだろうっていう安心感もあるので、
良くも悪くも、次の作品もそれなりの期待値で待つとしましょう。

*1:一応「時ソバ」の話くらいは知っていた。「水カステラ」は分かんなかったけど