「俺の一番はこの子じゃないのに……」の先にあるもの


ぶっちゃけ初見時は褒めるとかいうよりもむしろ「納得がいかない」という感情が表に出た動画だったのですが、
トカチPのブログ解説を読むとあーなるほどなーと一気に腑に落ちました。
動画の趣旨をはき違えていたわけですね、はい。
僕の理解力が足りないというのもあるんでしょうけど、
でもどちらかというと、視聴スタンスの問題という感じかなあと。

僕は基本的に、動画を見るときにあまり製作者のことを意識しないというか、作品内容と製作者をある程度切り離してみていまして。
この動画に関しても、あまり「これはトカチPの作品なのだ」ということは考えずに見ていました。
(「空色デイズ」の秋月プロ登場シーンみたいな、2つが結びつかずにはいられないような瞬間もたまにあるんですが)
だから僕の目には、この作中に出てくる「プロデューサー」も世界の中の一人の登場人物として映っていたわけです。
で、そんなプロデューサーに対する自分の印象としては……

ここからは偏屈者の戯言程度に受け止めてほしいんですが、
実はPS3版で公式にも取り入れられた、プロデューサーによる竜宮の救済ってシチュがあんまり好きじゃないんです。*1
僕はゲームをプレイするときもそれほどPを自分の分身としては捉えていなくて、
まして動画に登場するPなんてのはほとんどが全くの他人として見ているので、
「こいつの力がなきゃ竜宮小町は輝けないのだろうか」なんてことを考えちゃうんです。
竜宮には既に秋月律子というプロデューサー、しかも一応彼の先輩に当たる人物がいるわけで、
僕としては彼女と伊織たちだけの力で竜宮小町に立ち上がってほしいのですよ。
まあ公式で現にそれが叶わなかったわけだし、あの時点ではこういう形になるのが妥当なのかもしれませんが。

ただ、最後の竜宮765決戦の前に、Pを竜宮小町から切り離してほしかったなぁと。
彼にとっての第一はやはり765エンジェルであってほしいし、竜宮小町のプロデューサーは律子であってほしい。
だからDefectionと君の神話の間に、竜宮小町がPの手を離れ、彼が純粋に765エンジェルのプロデューサーとして立ち上がる……そういうパートが欲しかったです。
その方がきっと僕好みの展開だったなぁ、なんて。
同じPがいたから並べた、そこに律子が加わったから超せたっていうアンサーは嫌いじゃないんですがね。

改めて一から書くのも面倒なので空色デイズの感想記事から引用してきました。
まあ用はPのおかげで竜宮が助かるみたいな展開自体が個人的にあまり好みじゃないってのと、
本来のプロデュース対象であるはずの765エンジェルがちょっと不憫じゃないかなあという話になるかな。
そして今回の動画で、後者の感情が一層強みを増して、なんだこのプロデューサーは。ふざけんな!という感じに。

ところが視聴後ブログの解説を読んでみると、
どうやらこのプロデューサーはアイマス2というゲームの中の登場人物ではなく「トカチP」であり、
この動画は非常に個人的な視点で綴られていたということがわかりまして。

このPは美希をプロデュースしたことは間違いないわけで、
美希はプロデューサーへ必ず恋をする子(ゲームでは)なので
そうなってしまうわけです。
だけど、律子Pであるためどうしても受けられない。
律子ルートへいくためには美希をフらないといけないんですね。
ぶっちゃけ、このPは私の分身なので自分ならこうするというのを
そのままぶち込みました。
(トカチPのブログより)

このPが本来の担当ユニットに対してやや不誠実気味になってまで竜宮に構わずにはいられなかったのも、
765エンジェルの、美希のプロデューサーとしては失格のように見えるのも、
彼が何者にもなれるようなフラットな存在ではなく、律子がとびっきり好きな「トカチP」であるが故にどうしようもないことだったんだなあと。
……ここまで書いてて、やっぱり単に自分の理解力が無いってだけの話に思えてきた><

で、「トカチPの物語」として改めてこの作品を見返しているうちに、
アイマス2をプレイする竜宮組Pの心境」なんてものに思いをはせていました。
アイマス2で4人がプロデュースできなくなったとき、「じゃあ俺もうアイマス2買わねーよ」って風に竜宮Pのみんなが思ったわけではないでしょう。
S4Uでは見れるから、アイマス世界からいなくなったわけじゃないから、竜宮組以外の子も好きだから、アイマスというゲームやコンテンツそのものが好きだから……etc。
理由はどうあれ、竜宮組プロデュース不可を我慢しつつアイマス2に手を伸ばした竜宮Pというのは少なからずいたはず。
さて、そんな彼らがアイマス2をプレイするとき……彼らは本来の担当アイドル以外の子を選ばなければなりません。
真美がいるので亜美Pはまた事情が少し違ってくるのですが、
伊織・あずさ・律子のPというのは、
「俺が本当に一番プロデュースしたいのは、この子じゃないのに……」という思いを抱えつつ、目の前のアイドルをプロデュースしていたんだなあと。
こんな当たり前のことを、今更ながら再確認せずにはいられなかったのです。
そんな思いを抱えていた人がいたなんてのは極々当たり前のことなんだけれど、
でも、それをこうして動画として、物語として形にするってのは今まで無かったんじゃないかなあと。
そういう意味では、変な言い方ですが「資料的価値のある動画」でもあるよなあ、なんて……。

「このPはトカチPなんだから、目の前の美希を少々蔑ろにしてまで律子に偏っちゃうのはしょうがないんだって」みたいな事情は一切抜きにして、
765エンジェルの立場に立ってこの動画、そして空色デイズサーガ全体を振り返ると、
やっぱり彼女たち3人のことを不憫に思う念は消えないし、このプロデューサーに対する憤りみたいなのは多少なりとも抱かずにはいられない。
だから、その一点に対するモヤモヤ感みたいなものは、この先もきっと残り続けると思います。
この物語を外から眺めている僕は、765エンジェルと竜宮小町、美希と律子のどちらかに偏って応援するということができないから。
でも、たくさんの竜宮Pが抱いていたであろう、「俺の一番はこの子じゃないのに……」から、
今プロデュースしているアイドル(美希)に対する申し訳なさ、
そして「自分の代わりにこの子を、本当のPの元に託したい」という願いにまで踏み込めていったトカチPの律儀さや優しさは素敵だと純粋に感じました。
だからこの動画の「プロデューサー」に対して、
僕のような「ふざけんな!」っていう感情からもう一段階踏み込んで、
「こんな奴に美希は任せておけねえ! 俺がプロデュースするんだ!」っていう態度で応えてくれるプロデューサーさんが、一人でも多く現れることを願わずにはいられません。