人力VOCALOID二度の衝撃

(※人力VOCALOIDとは

昔、どこかの映像に優れたアニメMADで、
「こんなのよりアイマス動画の方が編集技術すげーしwww」
みたいなKYコメントを見たことがあります。
自分もコメントしたことはないものの、そんなことを考えたことがあります。
アイマス動画は再生伸びないけど、技術はニコニコでトップクラスなんだ!」
といった感じですかね。
でも改めて考えてみると、
動画編集なんて生まれてこの方一度もしたことない自分がそんな考えを持つのは実に愚かなことです。
ですから、「アイマス動画の技術は他のジャンルより凄いんだ」みたいな考えはなるべく持たないようにしています。

でも……「人力VOCALOIDの世界においては、ニコマスは間違いなくトップランナーである。」
この考えだけは、いまだに捨てさることができません。
それほど、ニコマスの人力ボカロ技術はずば抜けているように思えるのです。
ニコマスがニコニコ全体に誇れる最大の武器であるとすら思っています。
宇多田ヒカルの人力ボカロ動画が話題になったとき、その考えはより深まりました。

この動画に、
アイマスの人力の方に比べりゃたいしたことねーなwww」
という悪質なコメントをする人がそこそこいましたが、
(というか、宇多田ボカロの人はアイマスの人力も制作してるんですがね……)
仮に彼らがニコマス民だったのだとしたら、たぶん悔しかったのではないでしょうか。

「自分たちがいままでアイマスの人力を凄い凄いと思い続けてきても、
 ニコマス以外ではたいして話題にならなかった。
 それが、有名アーティストを題材にするとここまで話題になるなんて……」

といった感じで。
正直、自分もそういう感情を持っていなかったと言えば嘘になります。
(ただし、アイマスは素材の関係上非常に人力の制作が容易であるという話も聞くので、
 ニコマスPがアイマス以外でも普段と同程度のクオリティの作品を作れる保証はありません。)

でもこの動画がヒットしてくれたおかげで、
人力ボカロは万人に通じるジャンルであると確信することができました。
そして改めて、そんな世界でトップクラスの動画を生み続けているニコマスの人力ボカロ製作者たちは凄いと再認識できたのです。

のっけから盛大に脱線した気がしますが、
この記事ではアイマス人力ボカロ動画の個人的視聴史を、“二度の衝撃”の話を中心に語っていきます。

そもそも自分は昔、人力ボカロは↓の動画のように、

むりやり歌っている風に見せかけることで笑いを取る、ギャグ演出の一種だと思っていました。
なのでニコマスで真剣にキャラに歌わせようとしている人力動画を見たときは、
「こんなまともな用途で人力を使うのか!」
と驚いた記憶があります。

しかし正直言って、やはり人力ボカロの歌には不自然さを感じずにはいられませんでした。


↑の動画辺りにはクオリティの高さに驚かされましたが、
それでもやはり不自然さを気にせずにはいられず、
「やはり人力ボカロで、自然な歌声を作るなんてのは不可能だ……」
そうずっと思い続けてきました。

そんな中訪れた、最初の衝撃
エヴァ風に言えば、ファーストインパクト。
それはハロPの「やよいBRS」でした。

初聴時は、あまりの衝撃に言葉を失いました。
比較するのはなるべく控えた方がよいのでしょうが、
正直言って、それまで見てきたあらゆる人力動画を遥かに超越した自然さでした。
そしてこの動画で始めて、人力ボカロの可能性というものを思い知らされたのです。
「人力ボカロって、好きな人に好きな歌を歌わせられる夢のような技術だったんだ……」と。

「やよいBRS」の後もニコマスには多くの傑作人力ボカロ動画が現れました。
いちいち貼っていくとキリがないのでやめておきますが、
wandaPの「君に、胸キュン」
ハロPの「星のカケラ」
ドリ音Pの「こんなに近くで…」
……等々、「すげええええ!」と叫びたくなるような作品との出会いがたくさんありました。
しかし同時に、
「まあやよいBRSがあるんだから、このレベルの作品が出てきてもおかしくはないよなー」
という思いも常に抱いていました。
それほどまでにやよいBRSの完成度が高く、
また「原曲のBRSが伸ばす音が多いため、人力ボカロとの相性がいい」
という説を耳に挟んだこともあり、
「やよいBRSは、人力ボカロの到達点なんだ」と確信していました。


しかし、セカンドインパクトはやってきたのです。
しかもやよいBRSからほぼちょうど1年後。
その動画こそ、ドリ音Pのロボキッスでした。

動画を再生して、22秒後。
やよいの声が流れ始めたときのあの衝撃は、今でも鮮明に思い出せます。
当時の気持ちに帰ったつもりで叫んでみるとすれば
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
凄すぎる!!! なんでこんなに自然なのwwww
もうこれ公式カバーって言っても通じるでしょwwwww」

といった感じでしょうか。
あまりに自然な歌声。
それに加え、亜美とやよいの歌い方のクセの再現まで完璧。
今見ても、オーパーツすぎて笑いがこみあげてきます。
個人的には0:53〜の亜美の「好き好きっすキスをくーだーさーい」のところが最高に好きです。

2010年に入ると、人力ボカロのレベルはより上がっていきました。
特に「Voc@loidM@ster祭り4」ではクオリティの高い人力動画が続出。
そしてその中でも2番PとゆっきPの作品は、
ロボキッスレベルとはいかずとも歴代最高峰の出来でした。
ドリ音Pも精力的に傑作を連発していましたが、
個人的にロボキッスには劣るように感じたこともあり、
「ドリ音P一強時代も終わったかな〜」
とひそかに感じていました。
そしてそんな中、年末に発表されたのがドリ音Pの「太陽のあずさ」。

ロボキッスと双璧をなす最高峰人力ボカロ動画の登場に、
ニコマス界隈でも反響がかなり凄かったと記憶しています。
でも個人的には、ここまで騒ぐものなのかなーと感じていました。
ロボキッスは偶然の産物じゃなかったのか、やっぱドリ音P凄すぎる……」
という感心こそすれど、
「まあ、ロボキッスを作った人ならこれくらいやってもおかしくないよなー」
と素直に納得できたせいで、そこまで衝撃といったものは感じませんでした。
というか、
「太陽のあずさでここまで騒ぐのなら、
ロボキッスのときこそがもっと騒がれるべきだっただろ!」

みたいな複雑な気持ちも抱いていました。
ロボキッス登場時は個人的に、思ったほど反響がないように思えたのです。
まあ太陽のあずさの場合は、消えてた動画が蘇ったことに対する感動みたいなのもあったのでしょうが……

ロボキッスがあまりに凄すぎたせいで、
自分は最早人力ボカロの完成度に驚けなくなってしまった気がします。
太陽のあずさを20選に入れなかったのも、おそらくそれが原因かと。
(ちなみに自分なりの基準で、既出だったRidgerPの映像は審査対象から外してます)

正直なところ、もうサードインパクトはないだろうと確信しています。

……でも、かつてやよいBRSが人力の限界だと思っていた自分の確信は、既に一度破られています。
限界知らずのこの界隈でなら、もしかしたらもう一度あの衝撃と巡り合えるかもしれません。
太陽のあずさですらなり得なかったサードインパクトに該当するような動画が、果たして今後現れるのか……
「そんなんありえねーよ」と言いつつも、心の奥底で密かに期待し続けていきたいです。