カリスマ渋谷凛と雑草本田未央の美しき対比と、それから島村卯月と

遅ればせながらシンデレラガールズのアニメについては後日ちゃんと感想書きたいなーと思ってますが、その前に一つ主役の3人について。

僕はデレアニをほとんどの間、具体的にいうと23話の辺りまで渋谷凛本田未央の2人を中心に回っているコンテンツとして見ていました。
それほどに、この作品において凛と未央の2人は突出した存在だったように感じます。
もちろん他のアイドルが彼女らに比べて大きく劣っていたというわけではなく、
実際個人的にも世間的にも今回のアニメを通して一番株を上げたのは前川みくだと思うし、
杏やきらりなんかも強烈なキャラクター性と安定感ある活躍ぶりで大きなインパクトを残したと思う。
ただ、作品の内容だけでなくメタ的な動向も含めてデレアニというコンテンツ全体にまで目を向けるとやっぱりこの2人の存在感が突出していて、
さらにその2人の関係性の対比がまた面白いことになっていたりするもんだから、
話が進むごとにどんどんこの2人にばかり意識を向けるようになってしまったわけです。

元々アニメ化する前からこの2人の物語性と関係性については面白いなーと興味を示していたところがありまして。
その頃のイメージというと、凛は順風満帆にスター街道を征くカリスマ、
未央は険しい道をもがきながら進み続ける雑草
…って感じでしょうか。


凛については、やっぱり自分がまだモバマスを、765アイドルのファンとしてプレイしていた頃のインパクトが忘れられないんですよね。
まだモバマスが765のアイドルを中心に回っていた、あくまで本家アイドルマスターのスピンオフに過ぎないような作品だった黎明期。
ほとんど765アイドルの特権だったエース・スターの証たるSR枠を、
最弱の2コストアイドルだった渋谷凛が「ニュージェネレーション」の二つ名を引っさげて奪い取った瞬間の衝撃。
個人的にはあの瞬間が、モバマス改めシンデレラガールズ「本家のサブコンテンツの一つ」から「独立した一つの巨大な柱」に移る最大の転換期だったと思うし、
その旗手を担った渋谷凛こそがシンデレラガールズの象徴に最も相応しいアイドルだと思っています。
そして勢いそのままにCDシリーズのNo.1として華々しく声付きデビューし、今までのアイマスでほとんどお目にかかれなかったような売上を叩き出す。*1
その後もアクの強いアイドル達が注目を集めるモバマスの中にあって正統派として安定して支持を集め、
アニメ直前の総選挙では公式の露骨なプッシュがあったとはいえ見事1位フィニッシュで、
アニメ前に名実ともにシンデレラガールズの看板としての地位を確立する。
この辺の公式による渋谷凛の売り出し方の経緯はホント鮮やかで、
そしてその軌道にしっかり乗っかって人気者になった凛は、魅力と天運を兼ね備えたアイマス界一のカリスマアイドルだと思います。
765アイドルのファンとして一連のシンデレラムーブメントを見ていて、
「これ765の子達食われちゃうんじゃね…?」と一番感じさせられたのも、凛のSR化からCDデビュー辺りまでの一連のくだりでしたしね。

一方、そんな渋谷凛の完璧なプロデュースの割を食ったのが、

いわゆる春香さんポジションで看板が約束されていたものと思われていた島村卯月で、

そしてその影で、さらに悲惨になことになっていたのが本田未央…というイメージがありまして。
凛と違って未央がCD化する頃にはもうモバマス引退していたので認識が合ってるのかちょっと怪しいんだけど、
凛の華々しい物語と違って、未央のデビューまでの経緯はわりと散々だったように見えた気がします。
あくまで私見ですけど、卯月が先に「凛においていかれて不憫いじり」→「SR化、CDデビュー決定で大逆転! 報われたねおめでとう!」って流れを先にやっちゃったから、
似たような流れを後から辿った未央の時は、既に予定調和感が漂っていて卯月ほど気持ちよくは迎え入れられていなかったような。
しかも多少の番狂わせはあるにせよ、基本的には人気の出た子が優先してCDデビューに選ばれていく世界だから、
2回連続総選挙圏外なのに、ニュージェネレーションという特権階級故にその道が約束されていた未央に対する批判の声とかも少なからず見受けられたわけで。
卯月のように不憫で弄るには状況がガチすぎる「笑えない不憫」って感じだったし、
一方の卯月も、苦境でも懸命な頑張り屋的な路線でいくにはもっとハードモードな未央がいる分中途半端な感じになっちゃう。
凛が完璧すぎるデビューを飾った反面、この2人、特に未央のスタートは公式がプロデュースの一手を間違えちゃったなあと当時ぼんやり考えてました。

その後ミツボシの名曲っぷりやら声優さんのがんばりやらなんやかんやがあって、
アニメ前に何とか未央もアニメの14人に選ばれるに恥じないくらいの人気を集めたようではあるけれど、
やっぱりこの時のインパクトが強かったことや、
過去の経緯もあって今でも未央へのヘイト意見がちょくちょく目に入ることもあって、
本田未央はずっと苦境に立たされ続けてきた、アイマス看板勢としては異色の雑草キャラ的なイメージが固まっていたわけです。

なんかやたら前置きが長くなりましたが、
ともかくそんなわけで、アニメ前から漠然として抱いていたカリスマエリート凛と雑草魂未央のイメージ。
その構図をものの見事に再現してくれたのが、デレアニというコンテンツの推移だったわけです。


アニメ一話放映後、
卯月と凛の2人がメインの話で、キャスト順的には卯月の方が前なのに、
感想まとめ系のサイトをめぐっていると、自然と凛が看板ヒロイン的な認識が出来上がりつつある空気になっていて、*2
pixivなんかでも、話題アニメのキャラクターとして凛の絵がこぞって描かれていたような記憶があります。
なんというか、俗な言い方をすれば「今期覇権候補アニメのメインヒロイン」的な祭り上げられ方で、
アニマスではハッキリそういう地位に立った子がいなかったので新鮮だったし、
そういう地位に立ったおかげで他のCPメンバーよりも一歩二歩抜きん出た感じがしました。
アニメ直前総選挙一位の威光なのか、それとも単にキャラデザや設定が優れていて人を惹きつけるのか。
ともあれ改めて凛のカリスマスターっぷりを改めて実感させられたアニメ序盤でした。


一方未央の方は、最初のライブ回(3話)で一番追い詰められて、凛にフォローされるという役どころだったので、
「バランス的に次は未央が凛をフォローする展開になるかなー」…と思いきや、例の6話が来ちゃいまして。
自分のTLとかだとああいう展開を冷静に好意的に受け止める人が大多数だったけど、
方々を見回してみるとシナリオひいては未央個人を批判するような意見もたくさん見受けられて、
一部ではこの回以降、未央はどんな罵詈雑言を吐きかけてもOKなおもちゃなりサンドバッグなりみたいな扱いになっていたりもしました。
アニマスでも響が弄られ芸人みたいな扱いになったりはしたけれど、
視聴者からヘイトを溜める的な感じでマイナス方向に向かっちゃった子はたぶんいなかったはず。
前半数話でアニマスの誰よりも上の地位に昇った凛と、誰よりも下の地位に墜ちた未央
未央や未央のファンのことを思うと複雑な気持ちになりつつも、
「でもこの構図、アニメ化前の境遇に似てまさにこの2人らしいな」とか面白がっちゃってる悪趣味な自分がいました。

その後も未央は話を進める上での超便利キャラとしてアレコレ発言する度に、外野からうざいだの調子に乗るなだのと容赦ないツッコミをくらっていて。
一方で凛は、所謂「正妻ぶった」台詞と態度で美味しいところを攫ってちょっと特別な立場ですよ感をキープ。
この2人の対照的な動向が面白いなあと眺めているうちにデレアニ1クール目は過ぎ去っていきました。
しかしまあ、まだTPフラグの残っている凛や、これからが本番であろう卯月と違って、
1クール目で十分暴れた感のある未央は流石にもうあんま見せ場残ってないだろう。
なので、2クール目ではもうこの構図を見ながら楽しむことは無くなるかな……と思っていたら、


ファン待望の凛トライアドプリムス結成回ラストで、未央がまさかのソロ活動宣言をぶっこんできたわけですよ。
トラプリ凛に対するついに来たか…的な期待の声と、
未央のソロ宣言に対するおいおいマジか、大丈夫かよ…的な戸惑いの声が入り乱れる放送後の反響。
皆に望まれる道が動かずとも用意されている凛と、望まれずとも自分から突っ込んでいく未央。
前半で夢中になっていた凛と未央の対照的な構図が、とっても劇的な形で再び呼び起こされて、震えました。
もうホント、この2人の歩む物語の両極端っぷりがたまらなくおもしれーなーと。
間違いなくこの回が自分の中でのデレアニにおけるピークでしたね。

そしてその後、未央のソロ活動騒動が一段落して、
未央がTPデビューの凛を送り出す、2人きりの楽屋での会話シーン。
このシーンが僕の中での、デレアニというコンテンツの大団円的な趣がありました。
凛と未央の2人の関係性に注目して見てきた個人的なデレアニはここで一つの、美しいエンディングを迎えたのです。

そんなわけで、22話を過ぎたあとのデレアニについてはもう見たいものは見れた…と消化試合感を覚えつつ、
唯一の関心事として気にかけていたのが、
「ここまで存在感を発揮してコンテンツを引っ張ってきた凛・未央に、島村卯月が今から追いつけるのか」ということでした。
特にデレアニを凛と未央に注目して見続けてきた自分にとっては、
いろいろと興味を惹かれる凛や未央に比べて、
卯月は特に惹かれるところのない、何も印象に残らない無味無臭のキャラクターみたいな状態でした。
もちろん、ここまで卯月の影が薄かったのは脚本の狙い通りってのは分かってましたけど、
にしてもずっと凛と未央が引っ張ってきたこのコンテンツに、今更卯月が介入する余地はもう無いだろうなと感じていたのが正直なところです。


しかし、23,24話の放映が終わって、
結論から言うと、島村卯月は無味無臭ではない、独自の面白みのあるキャラクターになり、
デレアニは凛と未央、そして卯月の三人が中心にいるコンテンツになりました。
卯月が土壇場で間に合わせられた理由はいろいろ考えられるけど、
一番大きいのはラストのエピソードが、アニマスでは作品全体のテーマを春香さんに背負ってもらったのに対して、
デレアニは作品全体の流れ自体が卯月のために用意されていたような構造になっていたことじゃないかと思います。
そのせいで全体として何がやりたかったのかややボヤけた感じもするけど、
そのおかげで、島村卯月はようやく僕の中で魅力的だと思えるキャラクターになりました。
デレステ初めてすぐに偶然SSR卯月を引き当てたとき、「う、嬉しいけど、島村さんかぁ…」みたいな微妙な心境だったのが、
24話の後、今なら彼女がエースの位置にいる構図を楽しいと思えるのです。

結局、22話終了時点では「カリスマ渋谷凛と雑草本田未央の美しき対比」というタイトルで書く予定だった本記事も、そんなこんなで強引に島村卯月さんの話を付け足すことになりましたとさ。
ようやく卯月に魅力を見出すことができてめでたしめでたし……といきたいところですが、一つ引っかかるところもあって。
こういった結果に至ることが出来たのはデレアニ後半の物語が卯月smilingに収束するよう出来ていたおかげなわけだけど、
ではそのsmilingに至るまでのストーリーを振り返ってみたとき、
このラストのための筋道を用意するうえで、実は凛が一番損害を被ってたんじゃないかと。
というのも終盤のゴタゴタの中で、視聴者の反応を眺めていると何気に凛は未央に負けず劣らずヘイト買ってたり、*3
しぶりんってこんなこと言う子だっけ…的な反応がちらほらあったりして。
何より終盤確固たる精神的成長を見せていた未央と違って、凛は物語を通してこれを得た!っていうハッキリしたものが無いようにも感じるんですよね。*4
すると、もしかしたら今まで書いてきた、凛の生まれつき常に勝ち組街道一直線…みたいな前提はもう崩れてしまっているんじゃないだろうかと。
……そんな感じですっかり着地点を見失ってしまったわけですが、
個人的なデレアニ視聴史を記す上でこの辺の話はやっぱり外せないので、こんな調子でもとりあえず書いておくことにしました。
まあとりあえず、アニメを通してNGの三人が三者三様に魅力的な物語性を背負ったアイドルになったのは大変良いことだと思います、と投げやりに〆。

*1:厳密には凛よりも杏とかのCDの方が売れてましたけど…

*2:一番注目されてたのはアイドルよりもプロデューサーでしたけど

*3:卯月欝モードに対して、「お前らのせい」って凛や未央が叩かれてたのは個人的にちょっとどうなの、って思ってたり

*4:トライアドプリムスの専用曲という武器を得たという点ではこれ以上ない大収穫かもしれませんが