ワールドトリガーの面白さを語り倒したい(前編)

過ぎ去りし2015年、趣味方面での思い出をいろいろ振り返っていたところ、
昨年最大の個人的トピックは、何といっても週刊少年ジャンプで絶賛連載中のワールドトリガー」(著:葦原大介)にどハマリしたことだなあと。
最近はもう、ワートリを読むためにジャンプを買っているどころか、
月曜日にワートリを読んで、感想戦を眺めるのを楽しみに一週間生きている感すらあったりして。
ジャンプはブリーチが始まった辺りから、15年弱ほどずっと購読し続けてるんだけど、
ここまで特定の作品にガッツリ入れ込んだ記憶は久しく無いように思います。
それこそ14,5年前にジャンプを買い始めるきっかけになった、
当時アラバスタ編で面白さ絶頂期・小学生男子皆の話題の中心だったワンピース辺りまで遡るのではないだろうかというくらい。

そんなわけでここ一年はずーっとワートリ語りたい欲を募らせていたので、
ここらでいっちょ、需要ガン無視でひたすらワートリのここがこう面白いんだと語り倒してみちゃおうかなと。
以下クソ長いので格納。

(※コミックス未収録の話(単行本14巻収録分)にも軽く触れてるので、
  コミックス派でネタバレ避けたい人は気をつけてください)

世界観とあらすじ

万が一ワートリを知らなくてこの記事を読んでくれている人がいた時のために、
一応前置きも兼ねて簡単な作品説明から。もう知ってる人は読み取ばそう。

物語の舞台は日本の架空中核都市・三門市。
ある日突然この街に異世界からのゲートが開き、近界民(ネイバー)と呼ばれる謎の怪物*1が襲来。
なす術なく侵略されていたところに、突如近界民を倒す術を持った界境防衛機関・ボーダーが立ち上がる。
ボーダーは三門市に基地を築き、独自の技術で近界民の出現場所を基地周辺に限定した。
さらに、三門市民を中心に少年少女を隊員に加え、育成することで戦力を強化していく。
以来、三門市ではボーダーと近界民の戦いが日々繰り広げられている。

ボーダーのC級(見習い)隊員の三雲修は、
ある日自らを近界民と名乗る謎の転校生、空閑遊真と出会う。
いろいろなトラブルに巻き込まれながらお互いを知り、親交を深めた2人は、
ボーダーの凄腕隊員・迅悠一の導きで近界民に対して好意的なボーダーの異端児・玉狛支部に案内される。
修の幼馴染の少女・雨取千佳を加えた三人は、
近界民に攫われた千佳の友人と兄を助けることを目的として、
ボーダーに入隊して3人でチームを組み、A級隊員に昇格して精鋭だけが選ばれる近界民世界への遠征への参加を目指すことに。
近界民の遊真を入隊させること等に対して一悶着あったが、迅の暗躍で無事解決。
そして、近界民の侵略から三門市を守りつつ、
ボーダー内での競争に勝ち抜き遠征舞台選抜を目指す修達「玉狛第二」チームの闘いが始まるのであった。

…あんま上手いことまとまってる気がしないけど、一応簡単なあらすじとしてはこんな感じじゃないかなーと。

ライバルで味方。二つの顔を持つボーダー隊員達

ストーリーのおおまかな流れとしては、

①入隊・ブラックトリガー争奪編(単行本1〜5巻)
遊真と修、千佳の3人が出会い、チームを組むことになってボーダーに入隊するまで。
その裏で、遊真の入隊そのものと遊真の持つブラックトリガー(強力な武器みたいなもの)を巡ってボーダー内での派閥争いも展開される。
②大規模侵攻編(5〜10巻)
近界最大級の軍事国家が三門市に侵攻。ボーダー隊員が力を合わせて立ち向かう。
③B級ランク戦編(10巻〜)
B級に昇格した遊真達3人は正式にチームを結成し、A級昇格を目指してB級ランク戦*2に挑む。

だいたいこんな感じに分けられるかと。
一応ジャンルとしてはSFバトル漫画みたいな括りになると思うので、やっぱりバトル展開が大部分を占めていますね。
そしてこうして見ても分かるように、異世界からの侵略者と戦う話っていうあらすじを前面に出しつつもその実、作中の半分くらいは味方同士で戦ってる話だったりします。
序盤にあった内輪揉めの派閥争いみたいなのは、何度もやる話じゃないからそれっきりで設定的にも影が薄くなりつつありますが、
ランク戦の方は近界民との防衛戦と並ぶ、ストーリー上の大きな柱として大々的に展開されている感じですね。
この、「ボーダー内部での戦い」と「ボーダー対近界民の戦い」の二本構造がなかなか乙なものでして。

例えば序盤の展開で、近界民である遊真に襲いかかったり、入隊を妨害しようとした隊員達が、大規模進行編では頼れる精鋭隊員として活躍したり。
今度は大規模進行で渋い活躍を見せたりあっさりやられたりしたB級隊員達が、
続くB級ランク戦編では強敵や意外と出来る奴として修達の前に立ちはだかったり……。
味方・ライバルという二つの顔を持つことでよりボーダー隊員達の魅力が深まるし、
「うおおお、こいつが一緒に闘ってくれるなんて!」
「この人、敵に回すとこんなえげつないのか…」
みたいな感じで、手強さを知っている故に防衛戦がより熱く、頼もしさを知っているが故にランク戦がより楽しくなるわけです。
今ジャンプ本誌では二度目の近界民侵攻展開に突入していますが、
ランク戦編で戦っていたB級隊員達や、先達としてアドバイスをくれたA級隊員達がガンガン投入されて一丸となって戦ってるのがホンッッットもう面白くて仕方ない!

ランク戦編で、一眠りすれば記憶を定着させ技術や知識を身に付けることのできるサイドエフェクト*3を持ったB級隊員・村上鋼が、
この能力で簡単に強くなれる自分は、他の隊員の努力を盗んでいるだけだと思い悩んでいるのに対して、
「近界民と戦う時は味方同士なんだから、みんな鋼が強くてよかったと思うはず。自分なりのやり方で強くなっていいんだよ」
とチームメイトの隊長が声をかけるシーンがあるのですが、このセリフにはこの漫画の魅力の一端が詰まってるよなあと。
ランク戦編では手強い難敵だった鋼が、この先侵攻編で改めて頼もしい味方として活躍して、この言葉を実感させてくれる瞬間が今から待ち遠しくてなりません。

トリオン体による戦闘


ワートリにおけるバトルの最大の特徴は、
生身の肉体ではなく、トリオン体という戦闘用の身体に換装して戦う点でしょう。
この世界の住人はみんな、トリオンという生体エネルギーを備えており、
トリガーという武器を起動することで、このトリオンを使用してボディや武器を生成するわけです。
トリオン体になると①身体能力が大きく向上し、
トリオン体やトリオン兵には基本的に②トリオンを使った攻撃でしかダメージを与えられない
何よりトリオン体は③痛覚を遮断できるうえ、④トリオン体が破壊されても本物の肉体には全く影響は無い
そして体内トリオンは時間の経過とともに再生成されるため、⑤時間が経てばまたトリオン体を作り直せるようになる。
…という、身も蓋もない言い方をすれば、非常に漫画的な都合の良い設定になっています。

このトリオン体による戦闘というのが、考えてみると非常に利点の多いものになってまして。
まず、生身の身体に影響がなく、再生可能なトリオン体の設定のおかげで、
「相手のトリオン体を破壊したら勝ち」という非常にハッキリした決着をつけられる点。
生身でのバトルなら「死」が究極の決着なんでしょうけど、
少年漫画では、いろんな意味でそんなにホイホイ殺しのシーンを入れられないわけで。
ところが「トリオン体の死」は視覚的にも優しく、取り返しも付く要素なのでガンガンそこに踏み込めるし、
主人公勢やその師匠・作中最強クラスのキャラなどといった重要人物でも明確な敗北を描くことが出来るわけです。

さらに付け加えて、
容赦なく殺すことの出来るトリオン体だからこそ、武器がちゃんと殺傷力を持てるのがデカい。
トリオンでできた弾丸は見事に体を貫通するし、刃はスパッと肉体を両断する。
特に、斬撃系の武器がちゃんと「切れる」のは少年漫画としてかなりの特異点じゃないかなあと。
トリオン製ブレードによる攻撃がヒットすると、容赦なく四肢が乱れ飛び、胴体は真っ二つになり、首はちょんぱされ…と気持ちいいくらいにスパスパ切れるのです。
こうもハッキリと切れると爽快で、これぞ斬撃系武器の真骨頂って感じで視覚的にも楽しいし、
剣と弾丸が両立する世界で、殺傷力高い故に剣の方が選ばれることへの説得力を持たせてくれてもいるんですよね。

また、トリオンによる戦闘では、
体内のトリオン量の差によって武器やシールドの性能や継戦能力などへの差異はあるものの、
肉体そのものの運動性能や頑丈さには殆ど差がつかないため、
年齢や性別でのハンデが少ない=女子供でも違和感なく活躍させられるという利点もあったり。
といってもまあ、少年漫画だし荒事だしで戦闘員の多くは高校生くらいの男子なんですが、
それでもジャンプにしては、男と同じ土俵で活躍してる女子戦闘員がかなり充実している作品ではないかと。
しかも皆かわいく凛々しいので、戦う女の子が好きな人間にとってはたまんないものがありますね。

斧でガンガントリオン兵をぶった切っていく作中女子最強クラスな小南先輩と、
高機動戦からの弾丸の嵐で相手をハチの巣にする那須隊長辺りは近年のジャンプ屈指の良バトルヒロインじゃないかと。(私見
あとは痛みもなく血も出ないトリオン体だから、男が容赦なく女の子を攻撃するシーンを抵抗なくやれるってのもあるかなあ。

ベイルアウト」による死のリスク軽減

トリオン体が破壊されると、トリガーホルダーの中に格納されていた生身の肉体が代わりに晒されることになります。
前述の通りちゃんとトリオン武器が殺傷力を持っているだけに非常に危険な状態なわけですが、
そこでボーダーのトリガーには、緊急脱出(ベイルアウトという機能が搭載されていまして。
これによってトリオン体が破壊された瞬間、生身の体はボーダー基地まで送還されて敵から逃れられるという安全策が用意されているわけです。

このベイルアウトというシステムが、
ベイルアウトがあるせいで、どうせやられても死なないから緊張感が無い」というワートリ三大dis文句の一つになっていたりします。
もちろん言わんとしていることは分かるんですが、
大人の作った組織が少年兵を戦わせるという世界観*4をなり立たせるために、これくらいの安全策を用意しておくのは必要不可欠なんですよねえ。
それに、トリオン体が破壊された後の逃走手段が用意されているからこそ、
上述のように「トリオン体の死」というハッキリとした決着をガンガン描いていけるわけで。
トリオン体で戦い、敗れたらベイルアウトで脱出というシステムあってこそ、ワートリバトルの独特の面白さが成り立っていると思うのですよ。

武器にはちゃんと殺傷力があって、一撃急所に当てられれば即アウト。
それはどんな強者でも例外じゃない
…っていう当たり前の戦いがジャンプだと凄く新鮮で、それを実現したこの辺の仕組みは実に画期的なアイデアじゃないかと。
もちろん全部の漫画がこういう方式を取り入れるべきだとは思わないですけど、
少なくともスッキリ見易い一方で、熱のこもった激しい絵を描くのは得意じゃなさそうな葦原先生には、
痛みに歯を食いしばりながら戦わせるよりもこういうスタイルを選んだのは大正解だったのではないかと思います。

汎用武器とポジション

もう一つワートリにおける少年漫画らしくない特色として、
ボーダー隊員達が基本的に皆、規格化された汎用武器で戦うという点が挙げられます。
近接戦闘用のブレードが三種類、中距離戦用の弾丸が4種類、狙撃用のスナイパーライフルが三種類。
一部自己流で武器をカスタマイズしていたり、規格外の物を使ったりしているキャラクターもいますが、
基本的には皆これらのメイン武器トリガーと、
姿を消したり空中での二段ジャンプを可能にしたりするオプショントリガーとを組み合わせて戦います。
ワートリのキャラクターが覚えられないという声がよくあるのは、
キャラそのものの多さやデザインが被りがちなことに加えて、
武器や技といった戦闘のビジュアルでわかりやすく差別化が出来ないからってのもあるんじゃないかなあ。
私も最初は珍しいスタイルだなーとくらいにしか思っていなかったんですが、
武器の性能とかを頭に入れてから改めて読み返すと、これがどうしてなかなか面白くて。
差別化ができていないようでその実、皆おんなじ武器で戦うからこそ、
その中でどういった武器を選び、どう組み合わせて戦うかっていう戦闘スタイルの選び方でそれぞれの個性が見えてくるんですよね。

例えば近接用の武器では
・変幻自在で自由度の高い軽量ブレード・スコーピオ
・安定して使いやすい刀状の定番ブレード・弧月
・盾状に変形できる玄人好みの重量型・レイガスト
の三種類があるわけですが、
A級隊員はスコーピオンの使用率が高い一方、B級アタッカーは無難な弧月使いばかりなので、
使い手のセンスが問われるスコーピオンをメインに据えてる奴はそれだけで有能っぽく見えるし、
ほとんど使い手のいない不人気武器のレイガストを使う奴はそれだけで「おっ、こいつは一味違うな」と思わせてくれる。
また、同じスコーピオン使いにしても、
グラスホッパー(空中ジャンプ台トリガー)を多用して高機動力戦を展開したり、
カメレオン(姿を消すトリガー)で奇襲を仕掛けたりと、オプショントリガーとの兼ね合いでさらにスタイルが別れたりとか。
あり合わせの武器の中でいろんな発想が出てくるからこそ、
新キャラが出る度「こいつはどんな戦法で戦うんだろう」とワクワクして、新鮮な戦い方が出てくるとそれだけでもう強く印象づけられるわけです。

ちなみに使用できるトリガーは全部で一人8枠までという制限が設けられていて、
このキャラクターはこの8スロットをどう振り分けてるんだろうかと妄想したり、
俺ならこういう組み合わせにしてこう戦う、みたいな妄想をするのも楽しかったり。

ちなみに、これらの武器トリガーのうちどれをメインに据えて、近中遠どの間合いで戦うかによってポジションの分別というのがありまして。
近接メインは攻撃手(アタッカー)、
中距離メインは銃手(ガンナー)・射手(シューター)*5
遠距離メインは狙撃手(スナイパー)
近・中距離を両立させている者は万能手(オールラウンダー)と呼ばれます。
他にも支援専門の特殊工作兵(トラッパー)とか、近中遠全てに対応した完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)なんてのも一部いるんですが、まあ基本はこの5タイプがメインな感じですね。
この辺もまたいい感じに少年心・ゲーマー心をくすぐってくれて、
このポジションになってこう振る舞いたい! みたいなのを考えるのが非常に楽しいのではないかと。

私がもうちょい幼い頃にこの作品と出会っていたら、戦い方の派手な射手になって華麗に戦う妄想とかを繰り広げていたと思います。
まあ今は今で、
アイマスのキャラクターをどのポジションどの武器に当てはめてどうチーム組ませるか、とか妄想してるので、
あんまり変わらない…どころかむしろ余計悪化してしまっている気がしますが……。

シビアな弱者の物語

ワートリはキャラ性能の強弱の価値観やバランスを非常に大切にしていて、絶妙な塩梅で成り立っていると思います。
この漫画の特徴の一つとして挙げられるのが
どんなに小物臭い言動をしても「強い奴は強い」し、どんなに努力家だったり聖人だったりしても「弱い奴は弱い」という原則を貫いていることです。
その象徴とも言えるのが、「ジャンプ史上最弱の主人公」とも噂される主人公・三雲修*6の存在。

この修の個性として真っ先に語られるのが、「とにかく"弱い"」ということで。
まず、武器性能や継戦能力に関わるトリオンの量がボーダー隊員最低クラスというハンデを持っている上に、
運動神経等にも優れていないため、近接戦闘等での立ち回りのセンスも凡庸
トリオン量に優れた一部の者だけが持つサイドエフェクト(特殊能力)なんてものは当然持ち合わせていない
となると凡人なりに頭を使って上手くやりくりする、戦術で闘う方向で頑張るのだけれど、
それも戦力差をひっくり返せるほどのものではなかったり、経験豊富な猛者には戦術面でも遠く及ばなかったりで、
「まあ、弱いなりに知恵を絞って努力してるよね」くらいの扱いにとどまっているのが現状だったり。
もちろん修も、正義感が強く物怖じしない性格面はヒロイックだし、
重要な場面に度々出くわしたり、様々な強者達から一目置かれたりと境遇的な面での主人公補正はあったりするのですが、
こと戦闘面については、あくまで弱い一兵卒であるという立ち位置が今に至るまできっちりキープされているのです。

さらに、「主人公が弱いこと」自体に加え、「弱さが簡単には覆せないこと」がかなり強調されているのも特徴で。
隊員同士で競い合うランク戦では全員同じ汎用武器、ルールで戦う上、
必死に努力してもその間ライバル達も同じように研鑽を積んでいるから、ずば抜けた才能でも無い限りその差は簡単には埋まらない。
そして何よりワートリのバトルでは、「気合や根性で覚醒・パワーアップ」といった要素がなく、作中でそれをハッキリと否定している。
その象徴として非常に印象的だったのが、
読者投票企画で屈指の名言・名シーンとして選ばれた作品99話(12巻収録)における、
B級ランク戦での那須隊の攻撃手熊谷vsボーダートップクラスの攻撃手村上鋼の戦い。及び彼らの先輩にしてNo.1攻撃手である太刀川の解説。

もうすぐチームメイトが一人脱ける、という事情を抱えた熊谷はいつもより強い気持ちをもってランク戦に臨んでおり、気迫を込めて剣を振るう様を評価される。
しかし太刀川はそれを、
「勝負を決めるのは戦力・戦術、あとは運」
「気持ちの強さは勝負に関係ない。それだけでは戦力差はひっくり返らない」
「気持ちで勝ち負けが左右されるなら、(いつも飄々とした性格の)自分がNo.1になれるはずがない」 などと言い放ち、一蹴する。
ネタバレになるけど、実際この後熊谷は鋼に完敗して悔し涙を流すことになる。
しかも相手がサイドエフェクト持ちであっという間に強くなった鋼だったこともあって、
実力や才能の壁に対して、精神面だけではどうすることもできないというシビアな世界観が際立つシーンだったんですよね。
(ちなみに余談になるけど、決着の後太刀川は
「影響そのものは別にして、気持ちの乗った熱い勝負自体は大好物」
「気持ちの強さで勝負が決まるって言ったら、負けた方の気持ちはショボかったのかって話になるだろ」
と熊谷を評価・フォローするような言動をしていて、そこまで含めて台詞回しの上手さや人の描き方の魅力が詰まった名シーンとして評価されています。)

主人公の修にしても、近界民世界の戦争で鍛えられ既に精鋭の遊真や、規格外のトリオン量を持つ千佳に対して引け目を感じ、
なんとかしなければと修行展開を挟んでも、次の戦いでは所詮付け焼刃と簡単に通用させてはもらえなかったりして。
それ故に修の苦悩が際立ち、読者の議論も活発になるわけです。
近頃は「最弱」「落ちこぼれ」みたいなキャッチコピーを前面に出しておきながら、
その実蓋を開ければ特別な力を持ち合わせていたり、最強クラスだったりみたいな作品が多い気がしますが、
ワートリは本当に弱い主人公が、シビアな境遇の中でどう振舞うかというのが楽しめる作品で、
実際そこがこの作品独自の面白さとして持て囃されていることが多い気がしますね。

保たれる強弱のバランス・キャラの格

前述のように弱者をしっかり描いている一方、
では強者サイドはどうなのかというと、こっちの描き方も巧みなのがワートリでして。
素晴らしい点の一つとしては、所謂パワーインフレが起きず、強弱のバランスがしっかり設定されているところでしょうか。

まず、個別に特殊な力を持つ「ブラックトリガー(以下黒トリ)」の使い手が圧倒的に強く、
量産型ノーマルトリガーの使い手では束にならないと対抗できない、一人で戦況をひっくり返すほどの存在として頂点に君臨している。
その下に、単独でも戦局に応じて柔軟に動けて、黒トリ攻略の主攻になるA級隊員級の精鋭。
黒トリとやり合う時もサポート・数の力要因等として役立ち、きっちり最低限自分の仕事は果たしてくれるB級中位まで。
雑魚掃討要員としては使えるが、未知の敵や黒トリ級とやり合う時にはほとんど何もできなさそうなB級下位以下。
「黒トリ>>>A級>B級中位まで>>B級下位以下」
……だいたいこんな感じのバランスが、少なくとも13巻現在までは保たれていると思います。
厳密には、A級隊員でも隊員個人の強さとしてはそこまでじゃなさそうなキャラとか、
B級部隊でもA級と遜色ないチームや、B級隊員でも個人の能力ではトップクラスのキャラとかもいるのですが。だいたいの区分ということで。
序盤から黒トリを使う遊真や迅、ノーマルトリガーでNo.1の肩書きを持つ太刀川といったトップ層が登場してその戦闘が描かれているので、
後から後から「さらにこんなにも強い奴が〜」ってのを、少なくともボーダー内部では出せないっていうのが一つの理由でしょうか。
あとは「このクラスのキャラは、これくらいの働きが出来る」っていう概ねのイメージにちゃんと見合った戦闘結果になって、
強さの認識を上手く作品と読者とで共有できているってのもあるかな。
というかどんどんインフレ進んだりしたら、それこそ「簡単に強くなれない」修が完全に置いてけぼりくらっちゃいますからね…w

また、そういったきっちり強弱のバランスが管理された中で、
個々のキャラがちゃんとみんな強そうに見えて、立派に「格」を保っているのも素晴らしい点でして。
B級下位以下は流石に雑魚ってイメージしかないんですけど、
B級中位くらいになると、最低限の仕事はしてくれるだろうなってくらいの信頼感はあるし、
A級クラスが参戦すると、「これで戦局好転するかな」と思わせてくれる頼もしさがあるんですよね。
その理由として考えられるのが三点くらいあって。
一つ目は主人公の修がB級下位クラスだから、その視点で見ると相対的にみんな強そうに見えるから。
二つ目は、安易に「全く通用しないかませ」としてキャラを処理せず、
上述したように「このクラスのキャラならこのくらいの仕事が出来る」という概ねの働きをきっちりこなしてくれて、ちゃんと肩書きに信頼感が生まれるから。
そして三つ目、
これが個人的に凄く気に入っているところなんですが、とにかく「強者が相手を褒める」から…というものでして。

ワートリのバトルでは、「こいつ、出来るな…」みたいな感じで闘う相手を評価するシーンが非常に多い。
しかも、「強い・勝った側」が「弱い・敗者側に向けて」って形のものが多いんですよね。
内部競争あっても有事は味方なボーダー隊員同士はもちろん、侵略してきた近界民との戦いですらそれは例外じゃなくて。
圧倒的な武器性能や豊富な戦闘経験でボーダー隊員を圧倒・ベイルアウトさせた人型近界民たちが、
「手強い」、「いい動きだった」、「素晴らしい戦いぶり」、はては「捕えて部下に加えたかった」とまで、倒した隊員を褒めまくる。
そうすることで、「あの強敵にそこまで言わせた」ということで敗者側の株はあまり下がらないし、
驕らず相手を評価する目と器量を持っている勝者側の株もより上がるんですよね。
このWIN-WINの関係が、敵も味方もみんなちゃんと強く見える、格を保っているギミックなわけです。
実際、確か葦原先生が新人賞の審査員した時のアドバイスコメントだったかで、
「強者からの評価は嬉しいよね」みたいな感じでこのメソッドを紹介していたような記憶があるので、意図的にやっているのでしょう。
主人公サイドが不自然なくらい周囲から落ちこぼれとか馬鹿にされまくって「見返してやるぜー!」…みたいなのはちょっと読んでてしんどくなってきたお年頃なので、
ワートリキャラの紳士的佇まいは大変読んでいて気持ちいいです。
クソ雑魚の修でも、「弱いけど、弱いなりに出来ることをしっかりやっている」と肯定的に褒めてもらえるから読んでて安心するし嬉しくなるのよね。

ちなみに、そんな紳士だらけの強者集団において、
人型近界民の中に一人、エネドラという猿だの雑魚だのと他者を口汚く蔑む例外的な敵がいまして。
登場時は、「あー、いかにもかませの小者・四天王最弱ポジション的なキャラが出てきたなあ」という感じだったんですが、
しかしこのエネドラが「黒トリ使い」であるが故に、ちゃんとA級隊員他が束にならないと勝てない難敵として描かれていたのが、
どんなに努力しても凡人が簡単には強くなれない一方で、
「どんなに人格がアレでも、強い奴は強い」という本作の強弱バランスへの信頼を決定づけたような気がします。
とはいえエネドラさんも、言動はアレでも内心ではちゃんと敵の戦力を見積もっていたり、状況を分析したりとそれなりに頭の回るキャラだったんですがね。
お勉強が出来ない的な面でのおバカキャラはいても、
頭を使わずただ力任せで戦う、戦闘面でのいわゆる"脳筋"的なキャラはほぼ皆無なんですよねこの漫画は…。

集団戦の面白さ ①vs近界民防衛戦の場合


ワールドトリガーを持ち上げるためにおそらく最も多く使われている文句が、「集団戦が面白い」じゃないかと。
組織単位で防衛、チーム単位で戦うテーマの漫画だから他のバトルよりも集団戦の数そのものが多くて目立つってのもあるだろうけど、
贔屓目抜きにしてもワートリの集団戦描写は非常にクオリティ高いと思います。
最大の要因はやはり、
キャラ個人個人が頭を使って動き、チーム単位組織単位できちんと戦略性のある戦いが描かれていることでしょうか。
集団でのバトルって描くのが非常に難しくて、
いつの間にかメインのキャラ以外が棒立ちしてるだけになってたり、作品の都合でマヌケになってたりする光景をよく見かけますが、
ワートリは複数のキャラを並行して動かすのが非常に上手くて、ちゃんとキャラ全員が自分の考える最善の行動を取っているんですよね。
13巻収録のB級上位戦では、3vs3vs3vs3の4つ巴戦という非常に難易度の高いシチュエーションを見事に描ききっていて感心させられたものです。

また、一括りに集団戦が面白いといっても、
組織単位で戦う防衛戦である近界民侵攻編と、
チーム単位で戦う内部競争のランク戦編では、それぞれ違った醍醐味があると思うんですよね。

兵力を結集しての組織単位での大規模な衝突、いわば戦争のような体をなすvs近界民防衛戦の肝は、
とにかく膨大な情報量と、それに伴う対応策の応酬でしょうか。

トリガー文明による戦争は、各地で何が起きているかはもちろん、
個々の隊員が見ている視覚情報等ですら、瞬時に全員が取得・共有できるという非常に近未来的な戦いでして。
故に敵・味方双方の司令官の元には膨大な情報量が届けられ、
それに対してお互いに次の一手を選択し合い、戦局が二転三転していく様がスピーディかつダイナミックでたまらなく熱い。

また、そういう戦いである故に「情報を得ること」が非常に重大要素になっていて。
全体の戦いでいえば、
敵勢力の武力規模や、攻めてきた敵の狙いを突き止め、
それに応じて兵力を動かすことが戦局を左右する最大級のポイントになる。
そして個々の戦いでいえば、敵の武器性能や技を暴き出すことが勝利への鍵となっています。
何が飛び出してくるか分からない黒トリはもちろん、
ボーダーとは異なる進化を持つ遂げている近界民のトリガーは、通常の量産トリガー武器でもどういう性能なのか分からない。
そして、トリオン体とベイルアウトのおかげで簡単に「トリオン体の死」を描ける、一撃必殺が基本のワートリ戦闘では、
未知の武器・予想外の策略による「初見殺し」が非常に有効でして。

敵味方問わず、これがきっちり決まればどんな強者でもリタイアに追い込まれていきます。
しかもワートリはお互いにペラペラと自分の能力を喋ったりしない、HUNTER×HUNTERタイプのバトル展開なので、
相手の武器性能を把握したり、「初見殺し」の奥の手を引き出したりすることそれ自体に価値があるわけです。
大規模進行編では、敵のチート級武器や初見殺しで味方の精鋭が次々とベイルアウトしていくのですが、
彼らの暴き出した情報が、後々別のキャラが戦うときにきっちりと役立つから、必要な犠牲としてちゃんと活きてくるんですよね。
隊員が犠牲と引き換えに手に入れた情報を元に対策を立て、
強力な武器性能や「奥の手」を逆手に取って、敵の親玉を追い詰めていくクライマックスなんかは実に鮮やかでカタルシス満点でした。

あと大規模進行編でいえば、とにかく敵の人型近界民が圧倒的に強かったので、
強大な個人に物量とチームワークで立ち向かう、「個の力」vs「数の力」的な展開だったのも見所でしたね。
先述の「先人の犠牲によって敵の情報を得る」というのもそうだけど、
敵の力が分かった上でも尚、基本的にこちらも同条件の戦力を揃えないと太刀打ちできない世界観なので、
複数人が力を合わせてなんとかそれを攻略していく…っていう展開になるんですよね。
純粋に強大な武力に対して、10対1という数的有利を上手く活かして勝利したランバネイン戦や、
黒トリの反則的な性能を、技術者も動員して二重三重の策を巡らせることで攻略したエネドラ戦なんかはホント完成度高かった…。

集団戦の面白さ ②ボーダー内ランク戦の場合

長くなってきたので分割。

vs近界民侵攻戦が、緊迫した状況の中で未知の文明を持つ敵に立ち向かう戦争的な面白さなら、
あくまで犠牲の出ない模擬戦であり、手の内知ったる仲間同士の戦いであるランク戦は、競技化されたスポーツ的な面白さが醍醐味だと思います。

ランク戦では特別製の黒トリ等は参加不可能、全員が規格化された汎用武器・同条件で戦い、
整備されたルールの元で勝負が行われ、その結果で順位の変動やらがあり、おまけに試合シーンには実況と解説までつくという。
なんというかサバゲー部の大会、みたいな感じのノリなんですよね。
元々葦原先生は前作(リリエンタール)の終了後にスポーツ漫画ものを構想していたところ、
担当編集から「葦原くんはもっと自由にやったほうがいい」という有能な助言を受けて、
一から作り上げたオリジナルなルール上でキャラが戦うワートリにたどり着いた…というエピソードがありまして。
(参照:「ジャンプ+」掲載の過去の読み切り作品に付属しているインタビュー記事)
ランク戦展開は「メインの対近界民展開に対する修行展開・回り道」みたいなに捉えられて、早く本筋進めろよと言われたりもしてるけど、
こういう経緯を鑑みると、元々やりたかったこととしてはむしろランク戦の方が本旨に近いものがあるんじゃないかなーとか思ったり。

…と、ちょっと話が逸れちゃったかな。
ともあれそんなスポーツ競技敵構図で、部活の大会的な空気の漂うランク戦の見所としては、
①チームカラーの違い、②競技としての戦略性、③実況解説の存在、④チームごとのドラマ性、辺りが思い浮かぶポイントかな。
順番に解説していくと、まず①チームカラーの違いは、
同じ条件の中で部隊同士がぶつかるが故に、各隊ごとの構成や戦法といった個性が浮かび上がるというもので。

基本的にはどの隊もだいたい3人編成(オペレーターを除く)なんだけれど*7
主人公チームが(個々の性能はややピーキーだが)近・中・遠に1人ずつという王道構成なのに対して、
狙撃手3人のみの部隊という変態構成の荒船隊とか、
逆に、ポジション分けに中距離が人望厚い隊長・近距離が絶対的ワンマンエースという内訳まで含めて丸被りな鈴鳴第一とか、
隊ごとにそれぞれ見所や、主人公チームと対比させた時の面白さがあり、それらのチームとどう戦っていくかというのが非常にワクワクさせてくれるのです。

次に②競技としての戦略性
近界民戦は1人の強敵に対して10人がかりで対処したりと、真剣な戦争故に何でもアリなわけですが、
ランク戦は一定のルール上、ほぼ公平な状況での戦いなので、
同条件の中でどうライバルに差をつけるか、どう相手に対処するか互いに知恵を絞り合うところに面白みがあります。
また、未知の文明に対して情報を集め、対処していくのが近界民戦と違って、
互いに相手の手の内知ったる状態での戦いなので、対戦前の情報収集や対策会議にもかなり焦点が当たり、それが大きく戦局を左右するという「戦う前から勝負が始まっている」感じも好きだったり。
そして、ランク戦の一番の肝は3or4チームによるバトルロワイヤル形式なところでしょう。

3つ以上の勢力が入り乱れることで単純な「味方vs敵」という構造にならず、複雑で見応えのある戦闘展開を実現しているのです。
複数のチームと同時に戦わなければいけない故に、なかなか思い通りにコトが運ばなかったり、
各チームの動きを予想した上で、戦局を自分有利にコントロールするという高度な戦略戦が繰り広げられたり…と。
対戦チームの中で最も順位が低いチームにはステージ設定を選ぶ権利があるのですが、
これを上手く利用して戦局をコントロールしていた修達が、
順位をあげると今度は下位チームから分析され、不得手な状況に放り込まれたりする流れは分かりやすくこの戦いの面白さに気づかせてくれて、どんどんその奥深さにのめりこんでいきました。

敵も情報を集め知恵を絞ってくるので中々思い通りにはいかなくて、
何だかんだ混戦を制するうえで最も必要なのは「チームとしての、個人としての地力」であることが次第に浮彫りになっていく。
最初はわりと楽勝的な空気が漂っていて、A級昇格→遠征編までの繋ぎ展開っぽくも感じられていたのが
上手いこと段階を踏んで修達と読者にB級隊員達の手強さ・ランク戦の難しさを実感させていって、
「どうすれば玉狛第二がランク戦に勝てるか」を、読者達があーでもないこーでもないと熱心に討論し始めた経緯にこの章の手応えを感じ取ったのでした。

それから③オペレーターの務める実況・隊員の務める解説の存在。
これは②の補足的な話でもあるんだけど、
実況、解説があることで単純にスポーツ的な臨場感が増すだけでなく、
各チームの戦略がどう効果的であるかを具体的に分かりやすく言及してくれるので、ランク戦の戦略性を楽しむうえで一役買ってくれているわけです。
そして基本的にどの解説者も隊員の動きや戦術を「褒める」スタンスを取りがちなので、
前述の通り強者が褒めることで褒める側・褒められる側共に株の上がるWIN-WINの作用をしているのも大きい。
さっき話に出た太刀川を筆頭に、A級隊員は戦闘せずとも解説によってランク戦で株を上げてきましたからね。
戦果を上げられずベイルアウトした隊員に対して、「でも結果的にこういう好作用があったよね」とかフォローを入れられるのも大きい。
あと、戦闘中に生じた読者の疑問を拾う役割を担っているというのもあるかな。

玉狛第二の作戦勝ち扱いだったvs諏訪隊・荒船隊で、
「でもこれ遊真が強いだけじゃね?」「玉狛第二の作戦は千佳に対して過保護すぎじゃね?」と疑問を抱いていたら、
それが決着後に気持ちいいくらいにピンポイントで拾われたのはちょっと痺れました。
想定しうる読者の疑問をきっちり拾って答えてくれる葦原先生の真摯な作劇にはホント頭が下がります。こういう作風だからファンが真剣に考察で盛り上がれるのよね。

そして④チームごとのドラマ性
ワートリは話の展開に合わせて、とにかくキャラやチームを次から次へとガンガン出してくる漫画なんだけど、
ランク戦はそんな彼らの内部ドラマに焦点が当たって、掘り下げが進む貴重な機会でもあるわけで。
個人ごと、チームごとに抱える様々なドラマの一端が明かされるのは後々の展開にも活きてくるし、
ランク戦そのものも、それぞれのドラマが絡み合うことでより熱さを増してくるのです。

特に11〜12巻収録・玉狛第二vs鈴鳴第一vs那須隊のランク戦は、
もうすぐチームメイトが一人脱けるという那須隊のドラマに焦点を当てて、その視点から主人公チームのエグさ・いやらしさを実感させてきたり。
似たようなチーム構造の玉狛第二と鈴鳴第一を重ねて、
その中でさらにお互いのエースである遊真と鋼を、「眠って強くなる鋼」「眠らずに強くなる遊真」として鮮やかに対比させたり…。
バトルそのもののロジック的な面白さに加えて、こういったドラマ面での熱さも上乗せされた非常に完成度の高いエピソードでしたね。

ゲーム感覚

ワールドトリガーには至るところにゲーム的なエッセンスが散りばめられているように思います。
ここまで話題に出てきたものだけでも、
・架空の肉体・トリオン体によるバトルと死亡時の離脱システム
・規格化された汎用武器と、それらをトリガーにセットすることによって自分だけの武器の組み合わせを作る仕組み
・いかにも"サバゲーっぽい"ランク戦のシステムと、その勝敗によってB級○位といったクラスや順位の変動が起きる
辺りは非常にそれっぽい要素じゃないかと。

(この位置レーダーや武器スロット画面のビジュアルなんかもゲーマー脳全開だと思う)
実際ランク戦なんかは、昨年大流行だったスプラトゥーンと通じるところがあるらしく*8
スプラトゥーンにハマってる人達が、
「ランク戦はスプラトゥーンっぽくて面白い」「ワートリ読んでるとスプラトゥーンやりたくなってくる」みたいな感じで二つを絡めてワートリの感想書いてたのが印象的でした。
私もスプラトゥーンの流行に便乗してワートリゴリ推しする記事とか書いてみたかったけど、如何せんプレイしたこと無いからなあ…。

あとは、各隊員の使用武器ごとにポイントというのが割り振られていて、個人ランク戦によってそれを奪い合いしていること。
そしてこのポイントによってチーム順位とは別の、攻撃手○位とか個人総合○位といったソロでの順位が決められているところなんかもザ・ゲーム要素って感じですね。
数字とかランキングとかが大好きな私なんかは、こういうの見ると凄くときめいてしまいます。
まあキャラクターの強さを数値化して表すのはバトル漫画ではわりとお馴染みな手法ですが、
ワートリのソロポイントはハッタリを効かせ、キャラの強さに格を持たせるだけの機能はしっかり有しつつも、
遊真みたいに入隊したてで実力のわりにまだポイントが少ないキャラとか、
ランク戦にあまり熱心じゃなかったり、サポート役メインであるが故に実力のわりにポイントはそんなに伸びてないってキャラもいて。
「ポイントが高い=強い、凄い」っていう説得力と、
「あくまでポイントは一つの目安で、それだけが全てじゃないよ」ってのを両立させている辺り上手くやってるなーと思います。

大規模進行編のあとに功労者への戦功表彰を行って、功労者にこのポイントを付与している描写があったりするのも個人的ツボ。

一方で、これだけゲーム的・娯楽的で楽しそうな環境が整っていることで、
侵略者との戦い、街や市民の防衛といった大義があるわりに、隊員達がどこかゲーム感覚で戦っている・部活の延長線上みたいな感覚で活動しているようなところがあって。
「隊員達がヘラヘラしながら戦ってるのが緊張感を削ぐ、熱さがなくてつまんない、ムカつく」みたいな批判を見かけることもあります。

ボーダーでの活動やトリガー武器による戦闘が「楽しいこと」であり、
「楽しく競いあって強くなる」のは組織の理念でもあるということが作中でも言及されているので、
ゲーム感覚で戦う隊員達、というのは意図してこういう感じになっているものと思われます。
こうした方向性になった理由として考えられのは、

・元々部活もの漫画が前提にあって、その環境を整えるために近界民やボーダーといった世界観を作っていったから
・大人の作った組織で戦わされる子供たち、という設定の歪みを和らげるため
・楽しそうに戦ってる方が、読者に「俺もボーダーに入ってこういうふうに戦いたい」みたいに思わせられて夢があるから
(実際作中でもボーダー隊員はヒーロー扱いで、子供達はわりと気楽に俺も隊員になりたいと憧れていたりする)

ってところかしら。
しかし、ワートリでは近界民の侵攻によって生じた犠牲とそれに対する戦後処理だとか、
戦争だらけの日々を過ごし、父親も失った主人公遊真の経歴だとかシビアな面もしっかり描かれてたり、
隊員の中には、姉を殺した近界民への復讐に燃える三輪君みたいなどシリアスなキャラも少数ながらいたりして。
そんな世界観の中で、「ヘラヘラ戦ってる隊員たちへの違和感」という意見が出てくるのは一理あるなーとも。
大規模進行編終盤の切迫した状況で、尚も今ひとつ真剣味が足りないように見えるキャラがいたりするのは実際ちょっと気になったりもしましたからね。
それでもまあ、めちゃくちゃ面白いし何より夢があるからいいじゃん!って感じで私は概ね気にしてないのですが、
確かに「ゲーム感覚な隊員」と「シビアな世界観」がどこか歪なバランスで成り立っているのは否定できないところです。
「部活感覚かよ」って賛否両論だった那須隊のランク戦へのモチベーションと、
そのきっかけとなったシリアスな背景(大規模進行の被害)とのギャップなんかが特に象徴的かなー。

自分でもドン引きするほどの長さになってきたこのエントリー、
ついに文字数制限に引っかかったっぽいので、残りは後編に分割します。
ここまでほとんどバトルの話だけに終始してたのでは、後はそれ以外の魅力を掘り下げていく感じで。
既に相当な人を置き去りにしてそうですが、まだ残ってくれている方はもうちょっとお付き合いよろしくお願いします。

続き:ワールドトリガーの面白さを語り倒したい(後編)

*1:正確には作中で多くのキャラが近界民と呼んでいる怪物は、「トリオン兵」という機械兵器のようなもの。それを操っている本当の敵は向こうの世界に住む人間達であり、彼らは「人型近界民」と呼ばれている

*2:B級隊同士で戦いを重ね、最終的な戦績で上位2チームがA級への挑戦権を得るチーム対抗での模擬戦のようなもの

*3:特殊能力みたいなもの

*4:ちなみにボーダー隊員が子供ばかりなのは、①ボーダー自体が出来て間もない組織であることと、②トリオン供給器官の成長が20歳前後で止まるといういかにも都合の良い漫画的設定があるから

*5:共に弾丸トリガーを使って戦うが、銃手はアサルトライフルやマシンガンといった銃型トリガーを使って弾を打ち出すのに対して、射手はキューブ状にした弾丸を直接操作して攻撃する。射手の方が臨機応変に戦え自由度が高いが、銃型トリガーを使った方が扱いが簡単でかつ射程のボーナスがつくという利点がある。

*6:作者曰くこの作品の主役は遊真・修・千佳・迅の4人らしいのですが、千佳はヒロイン・迅は影の主役という趣が強いため、実質的には遊真と修のダブル主人公と見られがち。加えて修は、物語が彼の視点で進むことが多い共感型の主人公であるため、主役という認識がより強くなっているような

*7:厳密には1〜4人までならどれでもアリで、2人や4人構成の部隊も少数ながら存在する。ただしランク戦で登場しているチームは今のところ全て3人部隊

*8:近・中・遠距離に分かれた汎用武器、少人数チーム戦、勝敗結果でレート(ランク)が変動、血飛沫が飛び散らず「ビジュアルがグロくない」TPS…辺りが共通する要素かしら