「ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて」感想
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2017/07/29
- メディア: Video Game
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もう倒すべき敵も消化すべきイベントも無くなり、ついには自分史上初めてトロフィー取得率が100%になり、
いい加減やることもないなあ…という感じなんですが、面白すぎたせいで未だに熱が冷めてくれません。
熱が残りすぎている今の段階で冷静な評価をするのは難しいですが、
個人的にはシリーズナンバーワンを5と争うくらい、
世間的にも、3・5・11がドラクエ三大傑作なんて位置づけられてもおかしくないんじゃないかなとくらいに思えるほどの傑作でした。
そんなわけで、溜め込んだ熱い思いを放出するためにアレコレ感想を書いてみようかなと。
(※以下ネタバレ満載なのでご注意ください)
1人で完結するドラクエ
DQ11の情報が出始めた頃、
まず一番嬉しかったのが、「どうやら久々にオフライン専の、1人プレイで完結するナンバリングタイトルらしいぞ」ということでした。
自分のDQプレイ歴をおぼろげな記憶を頼りに書いていくと、
1・2(GB)→5(PS2)→4(PS)→8(PS2)→3(GB)→7(PS)→9(DS)→6(DS)…といった感じで、一応10以外は一通りプレイしています。
この中で一番面白かった作品は頭一つ抜けて「5」なのですが、
一番思い入れの強い作品はとなると、5以上に「8」の存在が大きいように思います。
見ての通り、ほとんどがリメイク版での後追いプレイという中で、
はじめて原典の作品に、しかも発売当日からリアルタイムで触れたという記念すべき作品が8だったんですよね。
しかも、当時は小学6年と無邪気にゲームの話題に花咲かせられる年頃だったため、
毎日のように学校で進行状況についてワイワイ語り合ったりとか、そういう体験が出来たおそらく唯一の作品だったのも思い出補正に輪をかけています。
作品の中身自体も、手堅くまとまりすぎてる感はあるもののよく出来た良作でしたしね。
そんな楽しい8のプレイ体験後に、次はどんなドラクエを楽しめるのだろうかとワクワクしていたものですが、
だからこそ、続作の9や10が発表されたときは、正直ガッカリ感が強かったです。
やっぱりドラクエ、というかRPGは一人でじっくり、物語や世界観に浸りながらプレイするのが好きなので……。
9は一応本編もきちんと遊べるように作られていたとはいえ、
通信要素・クリア後のやりこみに重きが置かれているように本編が薄味すぎて、シナリオの記憶が残らないし語られない。
10に至ってはオンラインゲームになっちゃったものだから、もうついて行けないわーと未だに手を出す意欲すら湧いてこなかったり。
顔の見えない人と意思疎通交わしながらゲームするってのがそもそもあんま肌に合わないし、
しかもそれがRPGで、ドラクエで、ってなると…。食わず嫌い良くないとは思うんですがね。
ともあれそんなわけで、久々に誰とも繋がる必要がなく、ガッツリ物語や世界観に没入できるドラクエが遊べるのかと思うと非常に胸踊りました。
特にPS4版だと、グラフィック的にも8からの進化が見えるから、「あの頃待ちわびていた続編」感が強いですからね。
しかし、大好きなシリーズがあれもこれも、回を重ねるごとに全盛期の輝きが薄れてしまっているようなこのご時世、
「8からもう13年も経ってるのに、あの頃みたいな面白いドラクエがまだ作れるの?」みたいな疑いがあったのもまた事実でした。
そんな不安も抱えつつ、いざ遊んでみた「11」は……、
期待していたハードルを遥かに超える面白さ!
堀井雄二の才能はまだまだ錆び付いちゃいなかった!
これだけのものが遊べるなら、13年待った甲斐もあったわ!
などなどと、不安も何のその、賛辞の言葉が止まらない大傑作でしたとさ。
オマージュに溢れた30周年記念作
発売前から"3"とのリンクを匂わせていた時点でそんな予感はしていましたが、今作はとにかく過去のシリーズを思い起こさせる展開が多かったです。
中でも特に、3・4の二作の要素はかなり詰め込まれていたように思います。
3は言わずもがな、まず大陸名が「ロトゼタシア」だし、ロトのつるぎや過去の勇者(ローシュ)パーティ等のビジュアル面、
16歳になって旅立ち、ジパングのBGMが流れる和風の町、6つのカラーオーブを集める展開、
終盤のフィールドBGM・乗り物BGMが冒険の旅とラーミア、そして極めつけはあのエンディング……等々ともう天辺からつま先まで3要素だらけ。
一方の4は、3と違って直接的な繋がりはないけれど、
個性豊かな8人のパーティの顔ぶれ(武闘家の姫とお供の老人魔法使い、魔法使い職と僧侶職の双子姉妹、王国仕えの戦士)に4っぽさがあるし、
シナリオ的にも勇者の故郷の田舎村が滅ぼされる(実際は無事だったけど)スタートだとか、
さえずりの蜜の登場、巨大な大樹を登る展開、宿屋で見る不吉な夢、聖竜の存在とかけっこう共通点が多くて、
あとは何といっても懐かしの面々が出てくる武闘会。まさか今になってイエティのグラフィック使い回しじゃないベロリンマンが見られるとは思わなんだw
他にもOPで魔物に滅ぼされる王国とか、情けない王子、船の行く手を阻む巨大クラーケン、人魚と人間の恋話、氷漬けの町、虹の橋、呪われし〇〇、幼馴染との結婚……etc、とどこかで見たようなシーンのオンパレードである。
ナンバリングタイトル以外だと、手の紋章や特技諸々にド直球の六軍将とか「ダイの大冒険」要素も多かったですね。
あと、DQじゃないけど大崩壊からの結集展開とヒロインの断髪展開はスクエニのもう一つの看板・FFの6と9を想起しました。まあこれはどっちも超定番的な展開ではあるけれど。
ともあれ、ここまであからさまに既視感ある展開の連続なのは、当然「ネタ切れ」ではなく30周年記念での意識的な「オマージュ」なんでしょうが、
ただファンサービス感覚でオマージュ展開を無作為にぶちこむだけじゃなくて、
ちゃんと11単体でのストーリー・世界観をしっかり構築したうえで、ファンならニヤリと出来る…的な使い方だったのが良かったですね。
序〜中盤辺りでは正直、そういうオマージュ展開をツギハギしただけの無個性作品になっちゃってるんじゃないかという危惧もあったのですが、
大樹崩壊後辺りから11オリジナルの楽しさがどんどん見えてきて、そこにいい塩梅でオマージュ要素がのっかってくるのでめっちゃ楽しかったし熱かったです。
勇者の物語
ドラクエといえば「主人公=勇者が冒険する」的な構図を思い浮かべますが、
でもこういう感じ、長らくなかったよなあと。
というのも5で「勇者は主人公ではなくその息子」という変化球を投じて以来、
6、7では誰でもなれる職業になり、8や9では最早勇者が登場することすらなかったからですね。
だから今回、主人公=選ばれし勇者という構図が大々的に打ち出されたのは凄く懐かしいところに帰ってきた感じでした。
「悪魔の子」扱いされて迫害されるという仕打ちは今までなかったけれど、
世界を救うため勇者としての使命を帶びて旅に出て、同じく使命を持った仲間がついてきて、理解者には希望の象徴として尊ばれ……久しぶりに勇者としての冒険をしているなあと。
ただ、今作が素晴らしかったのはただ勇者の冒険に原点回帰するだけじゃなくて、
そこからもう一つ進んで、"勇者"というテーマを今までよりも深く掘り下げたことじゃないかと。
今まではただ、選ばれたものだから冒険してるっていう感じでしたけど、
今作では過酷な体験に対する主人公の怒りや悲しみを、喋らせない範疇で今までよりも鮮明に描いていたから、
それでも…だからこそ戦わなきゃいけない勇者の使命や覚悟みたいなのを感じ取りながらプレイしていた気がします。
特に象徴的なのが、大樹崩壊〜デルカダール奪還辺りの流れでしょうか。
今作の勇者はただ強いとかデイン系魔法が使えるとか以上に、
ピンチで助けてくれる、道を開き示してくれる、万能すぎる手の紋章パワーが勇者オンリーワンの強みって感じだったのですが、
あろうことかその紋章パワーを魔王に奪われてしまい、大敗北を喫してしまう。
そこから再起しようというところで、匿ってくれていた海底の民をまたピンチに晒してしまい、辛い別れがあるわけですが、
その時に海底王国の女王がかけてくれた言葉が今作の一つの肝だと思っています。
「勇者とは、最後まで決してあきらめないもの」
ちょっとドラクエらしからぬ気もする少年漫画的なベタベタにカッコイイセリフですけど、でもこういうの大好きなので震えましたよ。
そしてこの後、勇者の力が無い状況でもデルカダール王国を奪還するという大仕事をやってのけ、
文字通り、暗黒の世界に一筋の光を指す希望の象徴として扱われ、世界最強の英雄から「"勇者の盾"になる」と忠義を約束される。
血縁とか、特別な力とかそういう受動的な理由だけじゃない「勇者の姿」を描いたこの辺りの展開はDQの歴史に新たな一ページを刻んだような感動があったし、
だからこそ今作は今までのどの作品よりも、「勇者」というテーマを深く・熱く掘り下げていたんじゃないかと思います。
最終的に今作の主人公が真の"ロトの勇者の原点"というオチになるのも、
DQ史上もっとも勇者を体現していた彼ならばふさわしいのではないかと納得です。
ドラマチックな仲間の物語
「勇者の物語」を描ききったこともそうですが、
今作はそれ以上に、魅力的な仲間たちのドラマチックな物語が胸を打つ作品ではないかと思います。
11はホントパーティメンバーの個性が強くて、
それこそオムニバス制で各自主人公を務めた4と並んで、シリーズで1,2を争う"キャラゲー"的な側面が強い作品じゃないかと思います。
これだけ仲間たちの印象が強くなる理由の一つとして、シナリオ中で終始仲間が存在を主張してくることがあるんじゃないかと。
DQって主人公が喋らないゲームでもあるけれど、"仲間が喋らないゲーム"でもあると思うんですよね。
もちろんパーティに加わるまでは会話するし、仲間入りの過程にドラマがあるんだけど、
一度仲間に加わったあとは基本主人公の後ろに付いてくるだけで、イベントシーンで台詞を発することってあんまり無いように思います。
PS版以降の「はなす」コマンドを使えばその時々に応じた仲間のリアクションが見られるようになったけれど、メインシナリオに割り込んでくるわけじゃないですし。
しかし唯一、仲間が喋らないと画的な違和感が強すぎる8だけは仲間キャラが終始イベントシーンでそこそこ口を挟むようになって、
そしてその流れを汲む今作では、さらにガンガン喋るし、能動的にアクションも起こすようになったなと。
氷の魔女対策に乗り出してくるベロニカとか、ホメロスの来襲に先陣きって蹴りかかっていくマルティナとか、
主人公を差し置いてイベントシーンで仲間がアクション起こすのって、DQだとけっこう新鮮だった気がします。
例えば11のノリで今4を作ったら、5章のキングレオやバルザックとのボス戦で、モンバーバラ姉妹やサントハイム組が熱く啖呵を切るみたいなイベントが挿入されそう。
加えて、11は大樹崩壊→パーティ再結集の流れがあることで、
最初に仲間になるときと再会したときとで、仲間メインのドラマを2回も展開していたのが大きいですよね。
特にカミュとシルビアなんて、二回目の町のドラマやボスとの戦いがまんまそのキャラために用意されたエピソードって感じでしたし。
「一つの町でイベント発生→お使い・ボスを倒す→また次の町へ」という流れの繰り返しが基本なDQですが、
今作では各町で起きるイベントのほとんどが仲間キャラのドラマに絡めたもので、終始仲間のドラマを見ていた印象が強いですね。
仲間達のドラマとあんまり絡まない大きめのイベントといえば、人魚の恋話と火竜の話くらいじゃないかしら。
対照的に7なんかは、仲間よりも一つ一つの町ごとのドラマを見せるっていうコンセプトが強いですよね。
11の物語を語っているところを見たら「ベロニカが〜」「マルティナが〜」「グレイグが〜」とかになるけど、
7の物語を語るときは「レブレサックが〜」「ルーメンが〜」とかになりますからね。いや7もキーファの離脱とかはよく語られますけども(笑)
あとは仲間全員の思いを込めた勇者の剣だとか、
勇者との絆で六軍将の呪縛を打ち破るとか、
仲間たちの絆パワーみたいなのが強調されていたのも、テイルズとかのキャラゲーっぽくて今までのDQにはない感じだったかな。
ともあれここまでキャラの個性・ドラマを見せることに重点を置いたのはちょっとDQらしからぬ感じで賛否別れるかもしれないけれど、
魅力的な仲間たちを動かせる、一緒に旅ができるのが凄く楽しかったので個人的には凄く気に入っています。
大樹崩壊後のストーリー
11をプレイしていて一番熱かったのは、間違いなく大樹崩壊〜パーティ再結集辺りのくだりだったと思います。
上述した「勇者とは決して諦めないもの」から始まるスタートや、
仲間たちのドラマが再展開されて、同時にスキルパネル解放でシステム的にも"覚醒"感が出るのが凄く熱かった。
というかそもそもこの手の敗北・離散→再度仲間集めという展開自体が大好物なんですよね。
その理由の一つが再加入時にもう一度仲間のドラマを作れることで、
もう一つが、「再加入する順番」の妙にあるんですよね。
RPGでのパーティメンバー加入の順番って、OPや説明書・公式HPのキャラ紹介順とかを見たらだいたい想像がついちゃうんだけど、
中盤以降・一度キャラ紹介を終えた後の離散→再加入はどういう順番になるのか読めなくて、
「まず誰から仲間に戻るんだろうか」とワクワクしながら再会を心待ちにするのが凄く楽しいんです。
結果11ではオッサン・ジジイ・オカマという異色の渋いパーティが最初に完成して、
序盤の若者4人組とはテイストの違う冒険が出来て上手いこと楽しませてくれましたね。
このメンバー(+進行順番次第でカミュ)が、次に出会う呪われしマルティナのエロ攻撃に翻弄される構図も面白かった。
あと、11のストーリー展開の巧さとして、
他のメンバーが全員揃ったところで、最後に会いに行ったベロニカが実は既に死んでいて、しかも皆が助かっていたのはベロニカのお陰だった…という結末が待っていること。
大樹崩壊の段階でベロニカが命を張って皆を助けるシーンが挿入されてもそれはそれで熱かったとは思うんですが、
この魅せ方だからこそベロニカの死に対するやるせなさとか、
知らずに旅してきた皆を陰ながら守っていたベロニカの尊さとかが際立って、凄く上手い魅せ方だったなあと。
そして、このショッキングな出来事を経た上でのセーニャ覚醒シーンがもう最高すぎて。
気弱な子が辛い出来事を乗り越えて覚醒するとか、ヒロインの覚悟の断髪とか、シチュエーションそのものが私好みすぎたのもあるんですが、
今作のこのシーンは、その演出がまたホントに素晴らしくて……。
まず、「ベロニカとセーニャは聖賢の力を分かち合った双子である」「死者への手向けに髪を切って炎にくべるラムダの風習」という前振りがあって、
あの優しく切ないハープのメロディに込められた意味や姉の偉大さ・自身の不甲斐なさが語られて、我慢していた涙がこぼれ落ちる。
そして、決意の言葉と共に衝撃の断髪。 姉への別れにと天に捧げ、風に舞い上がる髪の毛。
…ここまではまあ、よくある自分好みのいいシーンだなあという感じだったんですが、ここからの魅せ方が凄かった!
まず、そのまま風に飛ばされていくかと思った髪の毛が、突然燃え始めて焼け落ちていく。
そして、セーニャに宿るベロニカの"炎の魔法"の力。
「ベロニカの呪文とスキルがセーニャに継承された!」のシステムメッセージ。
そして慌ててスキルパネル画面を開くと、そこにはガッチリ噛み合ったベロニカとセーニャ2人分の合体スキルパネルが!
ただ断髪・力の継承という王道展開を描くだけじゃなく、
「髪を切ること」「力を受け継ぐこと」にこれ以上ないくらい物語上の意味を持たせ、画的にも感動的に演出してみせる。
さらには、スキルパネルの合体というゲームシステムを利用した演出までクライマックスに用意しているわけですよ。
なんらかの形で2人の力が一つになる…的な展開は設定上あり得るかもなあとは思っていましたが、
2人のスキルパネルがちょうど組み合わさるようになっていたのはありがたいことに気付けていなかったので、あの画面を開いた瞬間はホント鳥肌ものでした。
このセーニャ覚醒では今作で一番、歴代のDQでも三本の指に入るくらいの個人的名シーンですね。
過ぎ去りし時を求めて
そんなわけで、最高潮の大樹崩壊後〜ウルノーガ討伐までの流れが終わったあと、
まさかのクリア後になって待ち受けていたのがタイトル回収、時間巻き戻し展開。
ある意味ここからが真の本番ともいっていいドラクエ11のシナリオですが、この件は良い点もあり悪い点もあり…って感じでしたね。
まず、面白かったのが「本編よりも弱い状態での魔王を倒す」というシチュエーションと、
魔王が誕生しなかったせいで、かえってそれよりも強い邪神が蘇ってしまう展開の妙。
魔王の影響と邪神の影響と、違う形で起きる各地の混乱の差異を二度楽しめるのもなかなか乙なものでした。
そしてなんといっても、ベロニカとの再会シーンの感動。あそこは台詞回しとかも相まって素直にグッときましたね。
それから、時を巻き戻したときはベロニカと会えることしかすっかり頭になかったんですが、
ドゥルダに行ってみたらニマ大師が生きててビックリしたりとか、大樹崩壊時空で失われたものが戻ってくるのも良いですよね。
ベロニカ以外にもいろんなものが戻ってくるからこそ、勇者達が時を巻き戻した行動にもただの仲間可愛さだけじゃなく大義名分が出てきますし。
各地の悲劇がリセットされる…特にホムラの火竜の悲劇があっさりハッピーエンドに書き変わるのとか凄くお気楽な展開なんですけど、
表の時空でわりとハードな展開を見てきているから、コントラストで裏のおめでた展開も素直に受け入れられたし面白かったです。
ただ、大樹崩壊とか関係ない段階の話だった、人魚の死が何故か書き変わっているのは今作最大の汚点でした。
人魚死亡ルートを選んでたから、入り江に行ったら何故か人魚がいて、生存ルートを選んだらしい扱いになってたのが唐突すぎて面食らいました。
人魚の話は今作で貴重な濃いサブイベント、しかも感動的で出来のいいお話だっただけに、この展開は台無し感強かったですね。
まあでも、人魚の話は所詮サブイベントだからまだいいとして、
時間遡り展開で一番残念だったのは、表時空での仲間たちともう会えなくなってしまうことですよね。
本作で一番熱かったのは前述したように大樹崩壊→仲間再結集の展開であり、
あそこで絶望からの再起やそれに伴う成長があったからこそ、今回のパーティメンバーはもの凄く魅力的だったわけじゃないですか。
だから、その記憶がスポイルされて共有できない巻き戻し後のパーティメンバーはどうにも満ち足りない別人感があったし、
ベロニカも加わって凄く賑やかでハッピーな旅のはずなのに、
勇者の心情に立つとどうも空々しいというか、孤独を感じずにはいられませんでした。
カミュの贖罪達成とかシルビアの父親との和解とか再回収はしてるんだけど、
元の展開と比べるとやっぱりドラマ的に弱いし、グレイグなんかは加入の経緯に重みが無さ過ぎる。
そしてなんといっても、一番のお気に入りキャラだった覚醒セーニャにもう会えないのが寂しくて仕方なかったです。
さらに言えば、大樹崩壊後の悲劇を乗り越えてきた世界各地のNPC達の物語がリセットされるのもちょっと惜しいよね。
例えばホムラの村のテバ少年の成長とか、
もっと細かいところだと、デルカダール下層にいるコソ泥モブキャラの改心が無かったことになっちゃうとか。
まあ、NPCうんぬんは流石にいいとしても、
超ご都合展開でもなんでもいいから、パーティメンバーの記憶は巻き戻し前のものと統合してほしかったですね。
ちょいちょいデジャブを示唆するような描写あるから、最悪エンディング後にでもそういう展開が来るんだろうと期待してたのに、結局無いままでガッカリ…。
やっぱり、あの本物の仲間たちにベロニカを加えた完全なパーティで旅をしたかったし、
悲しい別れを覚悟しながらも、ベロニカのために勇者を過去に送り出したあの愛おしい仲間たちとベロニカを再会させてあげてほしかった。
ベロニカを失った後の覚醒セーニャの頑張りをベロニカが褒めてあげて、セーニャが涙を流して抱擁を交わす…みたいなシーンを見たかったですよ。
勇者の系譜
今作のストーリーでもう一つ面白かったのは、
ローシュ・セニカ・ウラノス・ネルセンの先代勇者パーティの物語が前提にあることでした。
伝説の先陣達の意思を受け継ぐ…的な形がまず好みだし、
ずっと彼らの冒険の軌跡をたどっているようで、
実は邪神討伐に失敗してローシュは命を落とし、セニカやネルセンがあんなことになっていたという意外な展開も面白かった。
彼らが成し得なかった邪神討伐を最後に成し遂げるのは、先代勇者を超えていくみたいな感じで胸熱でしたし。
そして、最後に待ち受けていたのが「11の主人公=初代ロトの勇者」という種明かし。
ここから3のOPに繋げる締めは痺れたし、そうきたかーと唸らされる結末でした。
エンディングの解釈はいろいろ分かれてるみたいだけど、
私が最初に見たときは、
「セニカが過去に戻り、生存ローシュと結ばれるパラレルワールドが誕生し、その世界で生まれた子孫(?)が3主人公」
「自分を救ってくれた11勇者達の伝説をセニカが語り継ぎ、それが3主人公の呼び名"ロトの勇者"のモチーフになった」
というふうに捉えて、感心してました。
「勇者の原点=ロト伝説の出発点となった3勇者」というイメージがあったけれど、
そういえば確かに、3の勇者についた"ロト"という称号名がどこから来ているのかは謎でしたもんね。*1
そこに「ロトゼタシアを救った、ロトの勇者」というのが先回りするのはなるほどなあと。
ローシュパーティのビジュアルからして、11の物語は3勇者達の伝説を受け継ぐようなコンセプトなのだろうと思っていたら、
逆に11の方が3の原点を描いていたというのは一本取られた気分ですね。
11勇者と3勇者の世界が時のオーブ破壊で分岐したパラレルワールドとするならば、
11勇者の物語は、あくまで別世界のおとぎ話的な扱いとなり、
1〜3の世界での「3の勇者=勇者伝説の出発点である」というアイデンティティは崩れず、3勇者の株も下がらないというのも上手いと思います。
一方、そういう結末に関心しつつ、いろんな感想や解釈とかを求めて反響を読みあさっていたら、
見かけて驚いたのが、「ベロニカが死んだ最初の世界はどうなってるの?」という議論でして。
ベロニカを救うために主人公が時のオーブを破壊した時点では、
「オーブ破壊=時の巻き戻し」であり、「その時点で巻き戻す前の世界はそのまま"無かったことになる"」と捉えていたんですが、
エンディングでセニカがオーブ破壊したときは、主人公たちのいる世界はセニカを失っただけでそのまま続いていて、
勇者の力を受け継いだセニカとローシュが再会するパラレルワールドが新しく誕生したように見える。
そしたら、「最初に主人公がオーブを破壊した世界も、主人公を失っただけのままでそのまま続いてるんじゃないのか」という話ですね。
その可能性にまで頭を巡らせてなかったので、なるほど確かになあという感じでした。
でもそうすると、ベロニカだけじゃなく勇者も失って取り残された最初の世界の仲間たちが不憫で、一気にモヤモヤした気分が湧いてきちゃいました。
そうすると別れのシーンにもより味わいは出てくるんだけど、でもその後のことを思うと彼ら、特に唯一の親族を失ったロウとか悲惨すぎじゃないかと。
いろいろ見てると、「勇者のオーブ破壊=巻き戻し、セニカのオーブ破壊=パラレル分岐で両者は別物」なんて解釈もけっこう根強いみたいで、
ちょっと都合良すぎじゃないかとも思いつつ、でも気持ち良い思い出のまましまっておくためには、そうであってほしいなあと思わずにはいられないですね。
こういういろいろとめんどくさいことになるから、時を遡って書き換える展開って厄介ですよね…w
とりあえずストーリー面での話はこんなところでしょうか。次はシステム面の話など。
システム関連あれこれ
・スキルパネル
仲間キャラが没個性化する6,7の職業システムよりは8のスキルシステムの方が好みだったので、今作のこれもわりと気に入ってます。
ちゃんとキャラの設定に合わせてある程度方向性を定めつつ、その中で適度に育成方針を工夫できるバランスがいいですね。
PS2版8は仲間キャラが4人しか関係上ある程度このキャラはこの役割で育てなきゃ…という制約を感じましたが、
控えメンバーまで揃ってる今作だと、ある程度自由気ままに育成方針考えられるのも良かったですね。何よりいざとなったらスキルリセットもあるし。
まあ、今作の難易度だと誰を使っても、どう育てても簡単にクリアできちゃうんだけど……w
パネル式にしたことで視覚的な楽しさが加わったのも地味に大きいですね。セーニャとベロニカのパネル合体演出という粋な計らいもあったし。
やっぱりスフィア盤システムはいろんなゲームにパクられてるだけあって偉大ですわ。
あと、武器ごとに仕える特技が変わるシステムだと、
今までDQであまり使うことがなかった、戦闘中の装備変更に戦略性が生まれるのもちょっと面白かったです。
例えば主人公だと単体火力を出したいときは両手剣で剣の舞、
全体攻撃や回復がしたいときは片手剣+盾に持ち替えてギガブレイク撃ったりベホマズン唱えたりとか。
8のときは複数武器のスキル上げるようなところまではレベル上げてなかったら、こういう楽しさに気づかなかったのよね。
残念だったのは、同じ武器のスキルはどのキャラでも似たようなスキルしか覚えないことでしょうか。
片手剣とか主人公・カミュ・シルビア・グレイグで4人も使用者がいたけど、皆似たような技しか覚えないんだもんなあ。
火炎斬りが稲妻斬りや真空斬りに変わるとか、同じ武器でもキャラごとにもっとスキルに変化をつけてそれぞれの個性を楽しませて欲しかったですね。
・ゾーン、連携
シンプルに完成されている戦闘にゴチャゴチャと余計なシステムを加えると、得てしてゲームバランスが崩れてしまうことが多いのですが、
今作のこれはそこまで自己主張するほどでもなくて、まあ良かったんじゃないかと思います。
ゾーンのタイミングがコントロール出来ないから、序盤はせっかくの連携技がなかなか発動出来なくてイライラさせられたんですが、
メンバーが増えて、ゾーン突入キャラを控え待機させられるようになってからはそこもだいぶ解決しましたしね。
ただ、せっかく演出が凝ってる連携技が最終的には通常特技と大差ない程度のダメージしか出なくて、あんまり使う気起きなかったのはもったいなかった。
序盤は火炎陣とか凄く重宝したんですけど、最終的にはトドメのロマン技でクロスマダンテを使うくらいで後はさっぱりでしたね。
まあスーパールーレットとスペクタクルショーはめちゃくちゃ使いましたけど…w
あと、一部の特殊ペアを除いては勇者が絡む連携技しかなかったのはちょっと残念。
パーティ間の横の繋がりも魅力的な今作だし、もっと勇者以外でのペアでの連携があっても良かった気がします。
特にマルティナ×グレイグペアとか辺りはあってしかるべきだと思うんだけどなー。
・仲間キャラの性能
今作は魅力的な仲間メンバーが揃っているわけですが、
その仲間たちが性能的にも皆優秀で、明らかにベンチ外になっちゃうような捨てキャラがいない。
好きなキャラを使って存分にクリアできるようになっていたのは嬉しかったですね。
皆優秀なせいで、後述するように今作の戦闘難易度が非常に緩くなってしまったという副作用もありましたが。
あと、もう一ついいところとして、11って自然と仲間メンバーをバランス良く使えるようになっているんですよね。
崩壊前と崩壊後で仲間に入る順番がシャッフルされる関係で、
マルティナ以外の仲間達は全員、最低でも一度は4人のパーティに必ず入る機会が用意されている。
んで、キャッチーなキャラのマルティナを全く使わないってプレイヤーはそういないでしょうから、
ほとんどのプレイヤーが、8人の仲間全員をそこそこの回数レギュラーメンバーとして使用したんじゃなかろうかと。
しかも、自分がプレイした感覚だと時期によって強いキャラがコロコロ変わったので、一軍パーティが固定されず柔軟に入れ替わっていったのも面白かったですね。
時期ごとの個人的ベストパーティを振り返っていくと以下のような感じでした。(主人公は基本固定プレイ)
・虹色の枝入手まで…主人公、シルビア、ベロニカ、セーニャ
・オーブ集め〜大樹到着…主人公、マルティナ、シルビア、ロウ
・大樹崩壊〜ラムダ再到着…主人公、ロウ、他2名(気分に応じて入れ替え)
・ケトス入手〜ウルノーガ討伐まで…主人公、カミュ、シルビア、セーニャ
・クリア後〜邪神討伐
パターンA・守備重視版…グレイグ、主人公、シルビア、セーニャ
パターンB・攻撃&ロマン重視版…主人公、カミュ、ベロニカ、セーニャ
こんな感じで、どのキャラも一度はベストパーティに入ってきているのです。
特に、前半のボス戦ではベンチ固定気味になっちゃってたカミュとセーニャが、
後半から最大火力・要のヒーラーとして存在感を発揮して巻き返してきたのは良く出来てるなあと関心しました。
あと、こうして見ると終始スタメン率の高いシルビアさんが今回のMVPって感じですね。
・戦闘バランス
万人向けに基本易しめに抑えつつ、
最初から最後まで簡単すぎず難しすぎず、適度なバランスのまま遊び続けられる安定感がDQの良さというイメージがありまして。
その点今作はというと、なんだか終始簡単すぎてちょっとガッカリでした。
レベルアップ全回復+キャンプとMP回復手段が豊富な関係で雑魚戦では全体攻撃脳死ぶっぱで片が付き、
レベルがどんどん上がるうえに仲間キャラが皆高性能だから、ボス戦でもこちらのペースでスイスイ進められちゃう。
全体攻撃ぶっぱであっさり片付く雑魚戦は、まあストレス緩和の観点からしてこれはこれでいいかと思いますが、
ボス戦にはやっぱりある程度の歯ごたえを求めたいので、
そこで全滅どころか仲間が一人死ぬようなことすらほとんどなく、終始ゆるゆるで進められたのは物足りなさすぎましたね。
表クリア後の世界ではネドラ邪戦で初めて全滅を経験したりとか、ようやく緊張感を味わえるようになってくれましたが、
やっぱり本編の中でブオーンやドルマゲスみたいな、手ごわくて印象に残るレベルのボスを1つ2つ用意して欲しかったところ。
ホメロスさんとかそのくらいの強敵にしておけば、もうちょっとキャラとしても存在感を出せただろうに勿体無い。
逆にボス戦で良かった点だと、今作はいつもよりも複数で挑んでくる敵や状態異常を駆使してくる敵が多かった気がすることでしょうか。
敵が複数いると、ボス戦でもイオ系みたいな全体攻撃ができる技が役割を持てるようになるし、
状態異常の防止や食らったときの立て直しに追われることで、
攻撃・回復とバフ・デバフの単純な繰り返しになちがちなDQの戦闘に、一つ新しい醍醐味が生まれてくれた感じがありました。
・攻撃魔力、回復魔力
魔法のダメージや回復量がこのステータスによって左右されるシステム、9の頃から導入されていたとは記憶しているんですが、
9の頃は特に意識させられなかったこのシステムが、今作だと凄く良要素に感じられました。
というのも前述したように、11の仲間は皆優秀・多芸でいろんなスキルを習得するのですが、
同じような攻撃・回復魔法を取得するキャラが複数いても、
ステータスにより発揮される効果に差がつくことで、数値が固定されていた頃よりも魔法特化職にアドバンテージが生まれるのです。
皆が全体攻撃スキルを揃えてくる中でも、攻撃魔力に特化したベロニカのイオ系の雑魚散らし性能は最後まで郡を抜いていたし、
敵から受けるダメージがどんどん大きくなってくるにつれ、他よりも回復量の大きい僧侶職セーニャの存在感が高まってくる。
特にセーニャについては前半だとシルビアのハッスルダンスやロウのベホマラーに押されていたのが、
最終的に賢者の石やハッスルダンス、ロウのベホマラーすら回復量が心もとなくなってきて、セーニャのベホマラー頼りになるのが上手いこと出来てるなあと。
まあ全回復のベホマ・ベホマズン覚えてしまえば最終的に回復魔力はあんま関係感じにもなっちゃいますが、
それでも一応ザオリクの回復量というアドバンテージは残りますしね。
そういう意味ではザオリクを全回復にせず、回復魔力に左右されるようにしたのはとてもいい判断だと思いますね。
キャラクター語り
繰り返すようですが、11はホントに仲間キャラがみんな設定的にも性能的にも残らず皆優秀で素晴らしかったです。
個別に見ても魅力的なキャラ揃いですが、
全体的に見ても若者から(見た目だけ)幼女にオカマ、オッサン、ジジイまで性別・年齢層のバランスが綺麗に取れていて、パーティとしてもとても魅力的でした。
他にシリーズ追ってるRPGがペルソナとか軌跡とか若者だらけのパーティだから、余計に魅力的なオッサンやジジイのいるDQ11パーティが尊く感じられましたね。
天下の鳥山明先生にこんなことを言うのも超失礼なんですが、
11のキャラクターってデザインだけ見るとそんなに目を引く感じじゃない気がするというか。
個人的にも世間的にも発売前から注目されていたのは、イケメン・お色気美女でそこそこキャッチーなカミュとマルティナくらいだった気がします。
しかし実際蓋を開けてみると、もちろんカミュもマルティナも期待通りかそれ以上に良いキャラだったんですが、
この2人以上に、発売前時点ではノーマークだったセーニャ・ベロニカ・シルビア辺りがお気に入りキャラとして浮上してきて。
いやあ、ホントに大事なのはやっぱり見た目より中身だよなあと。
11メンバーの"中身"がこれだけ魅力的な理由として、
一つは前述したような、本編の中でそれぞれのキャラにスポットを当てたドラマチックな展開が用意されているというのもありますが、
もう一つ大きな柱として、凄く地に足のついた、堅実なキャラ描写が出来ていることがあるように思います。
今回のパーティって、皆どこで生まれて、どう育って、どういう経緯で今の立場にいるのかっていう"これまで"のバックボーンの描写が凄くしっかり描かれてるんですよね。
(強いて足りないところを挙げればグレイグについて、生まれ故郷が滅亡するまでの描写がちょっとボヤッとしてたかなってくらいでしょうか。)
そして、どういう目的で主人公の仲間に加わり、旅の中で何を感じ、何を得たかという"これから"の描写も余すところがない。
故にどのキャラにも感情移入が出来るし、どのキャラで魔王戦に挑んでもそれぞれドラマ性を感じられる。いろんな視点で物語を楽しめるのです。
こんだけキャラ描写がしっかりしていて、命が吹き込まれていると感じられるRPGってなかなか無かった気がします。
ただカワイイ・カッコイイ今時デザインのキャラに人気声優の声を付けるよりも、こういうのが真の"キャラ重視RPG"の姿なのかもなあとか。
DQもなんだかんだボードゲームだの無双だのとお祭りキャラゲーの機会は多いので、
これだけ魅力的なキャラ揃いの11パーティメンバーは、今後の作品のためにも貴重な財産になりそうですね。
特に動かしやすいカミュやシルビア辺りは、久々にトルネコみたいなスピンオフ主人公ゲームに抜擢されてもおかしくないのでは。
以下、個別のキャラについて徒然と。
・主人公
田舎育ちの純朴少年だけど実は亡国の王子であり勇者の生まれ変わりという出自に、
"悪魔の子"として追われ、生まれ故郷が滅ぼされ後に蘇り、
相棒や唯一の肉親等との出会い、魔王への敗北と絶望からの再スタート、
呪われし父親の救済と勇者の力の再覚醒、仲間の死、時を遡ってのやり直し、幼馴染との結婚、最後は初代"ロトの勇者"に…etc。
…と、こうして見ると、"5"ほどではないにせよ歴代主人公の中でもかなりドラマチックな経験をしてきたキャラだと思うのですが、
如何せん今作は周りの仲間の存在感が強すぎる故に、若干埋もれてしまう感がありますね。
不評だったサラサラヘアーデザインは、なんだかんだ今作の主人公のコンセプトにはハマってると思うんですが、
最終的にロトの勇者の元ネタになるという伝説感を考えると、もうちょいストレートにカッコイイデザインでも良かったんじゃないかって気もしますね。
そういえば、等身の上がった8もそうでしたが、今作はけっこう主人公が喋れない制約による画的・物語的な違和感や苦しさを感じるシーンがちょくちょくありました。
その最たる例が、過ぎ去りし時を求めた後のホメロスやウルノーガとの再戦展開でしょう。
あそこは作中で喋って意志を見せるタイプの主人公なら、
かつての敗北経験を逆手に、戦略を練って敵を手玉に取るような展開が入りそうなものですが、
イベントに対して常に受身なDQ主人公だからか、敵の誘いに素直にのっかりすぎておいおい大丈夫かこいつって感じでした。
好意的に解釈すればギリギリまで引きつけて反撃する腹積もりだったのかもしれませんが、
にしても、就寝中にウルノーガ扮する王様に近づかれるシーンとか無防備すぎてなんか凄く間抜けでしたね。邪神さんも内心ヒヤヒヤだったのでは。
キャラ性能としては剣スキル+回復、ギラ・デイン辺りの攻撃魔法という超オーソドックスな勇者タイプ。
今作はほかのキャラが特化型だったりユニークなスキルを持ってたりな分、主人公はちょっと地味な感じでしたが、
素のステータスも高いしなんだかんだ安定して使えるキャラでしたね。
勇者といえば王道は片手剣でしょう、ということで本編では主に片手剣+盾スタイルで使っていたのですが、
序盤、特に隼斬りを覚えたあたりからはメインアタッカーとして活躍するも、
マルティナがタイガークローを覚えたり、カミュが超火力を発揮しだした辺りからは微妙な立場になり、
表のラスボス戦ではアイテム係しつつ、暇な時はそこそこの火力で殴るというまさかの持て余し中途半端ポジションになってしまいました。
しかしクリア後は両手剣に持ち替えてみると大幅に火力アップして存在感が増し、
何よりベホマズンを覚えるとパーティの安定感向上が凄まじく、最終的には主人公らしく頼もしさを発揮してくれたかなと。
あと、今作はデイン系の威力が非常に高く設定されていて、勇者の魔法らしい格の高さを保ってくれて嬉しかったです。
まあ、単体火力なら剣の舞or全身全霊斬り、全体攻撃ならギガブレイクってなるからギガデインを使う機会はあんま無かったんですけど…。
・カミュ
「主人公の相棒ポジション」というと思いつくのは6のハッサンと8のヤンガス、あとはまあ7のキーファと5のヘンリーくらいかなって感じですが、
カミュは歴代でもトップクラスに、画的にも物語的にも"相棒感"を強調されてるキャラでしたね。
本人もちょっぴり気にしていたように、パーティ中随一の凡人的な出自なこともあって、
他の仲間たちの優秀さにやや押され気味な感じもありましたが、
覚醒後の再加入シーンとか時渡りのシーンとか、所々できっちり1番の勇者の理解者・相棒的な特別感を出してくれるのが嬉しかったです。
とりわけ選ばれし者感を強調されている今回の勇者の相棒が、最も一般人的なカミュっていう図式もいいなあと。
まああのアホみたいな火力は、とても一般人の枠に止めておけるものではないですけど…w
性格面でいえば、ビジュアル的にククールみたいな軟派なキャラなのかなとか思いきや、
パーティ中ぶっちぎりの硬派で真面目なキャラでしたね。
ダーハルーネのイベントとか、使命を持って旅しているはずの聖賢姉妹よりもクソ真面目だったし。
話しかけてみてもいっつも次の目的地についての無難な話題ばっかりだしで、ちょっと面白みに欠けましたね。
表クリア後に各地で皆の反応を楽しみたい時に、カミュだけひたすら「グロッタの南に行こうぜ」しか言わないのとか象徴的でした。
贖罪の旅をしているっていう重い背景もあるんでしょうけど、もうちょっと砕けた感じも欲しかったかなあと。
加入後いい感じに弄りがいのあるネタキャラと化してくるグレイグさんを見習って欲しい。
キャラ性能的には、最もプレイ途中で評価のひっくり返ったキャラクターでした。
盗むや"分身"の画的ロマンを求めて序盤はかみわざスキルに全ツッパしていたんですが、
とにかく火力がなさすぎて、しかも補助魔法もろくに使えないものだから、シルビア加入後は真っ先にボス戦ベンチウォーマーになっちゃいました。
"盗む"目当てで雑魚戦ではスタメン率100%でしたけど、それにしたって盗むの成功率低すぎてイライラさせられるし…w
シナリオ上の立ち位置的にも最終的にはスタメンに加えたいなあと思いつつ、こいつホントに使い物になってくれるんだろうかと不安が募りました。
しかし、スキルポイントが溜まってかみわざの次に短剣スキルを伸ばすと一気に大化けしましたね。
再加入後のキラゴルド戦で、
「まあここはシチュエーション的に絶対カミュ使いたい。でもこいつ役に立つかなあ…」と疑いのまなざしを向けつつ使ってみたら、
分身+バイキルト+タナトスハントで、2000前後くらいのそれまで見たことなかったインフレダメージ数値を叩きだして呆気にとられました。
そこからはマルティナを押しのけてパーティのメインアタッカーになり、ウルノーガ戦では体感上ダメージの7〜8割くらいをカミュが与えるなど完全に主人公喰ってましたね。
タナトスコンボは準備に時間かかるし途中に状態異常や凍てつく波動でキャンセルされちゃうこともあるのですが、
それだけに、敵の行動の合間を縫ってぶち込んだ時のカタルシスが非常に大きくて楽しかったです。
クリア後は片手剣に持ち替えて心眼一閃してみても、ブーメランでデュアルブレイカーしてみてもやっぱり圧倒的な火力で笑いました。
攻撃力高い武器で特技叩きこむのが大正義、っていうシステム上二刀流があんま役に立たない中で、
カミュだけは極意のおかげで二刀流を上手く使いこなせて気持ちよかったです。
ついでにいえば盗むの成功率も最終的には体感6〜7割くらいになるしで、もう言うこと無しでした。
ここまで大器晩成って感じのキャラはDQだと初めてじゃないでしょうか。
・ベロニカ
まさかの展開で、結果的に11という作品を象徴するようなキャラになったベロニカちゃん。
発売前は、もっとマリベル的なじゃじゃ馬キャラなのかと思っていましたが、
こちらも思ったより真面目というか、勇者の導き手としての使命感が強い立派な子でしたね。
前半の旅の時点ではあまりそういう印象はなかったのですが、
あの衝撃展開を経てから見る意識が変わると、そういう覚悟の強さが言動の随所に感じられるようになりました。
特に涙の再会シーンは、ベロニカと会えたことそれ自体以上に、
勇者を守る決意を誓う彼女の人柄に強く胸打たれましたね。
セーニャとマルティナがヒロインらしく勇者のことを少なからず異性として意識しているような描写がある一方で、
ベロニカはあくまで勇者とその導き手の関係として、そういうところから一線引いているように見えるのも印象的でした。
ともあれこの作品プレイして、ベロニカを好きにならないわけがないというステキなキャラで、
それはもちろん、ああいったストーリー展開の補正があればこそのものなんだけど、
逆に、あのポジションに座ったのがベロニカだったからこそ、11のシナリオがここまで良いものになったという面もあるように思います。
キャラ性能としては終始vs雑魚戦のエースとして活躍してくれて、
特に敵のHPが高くならクリア後世界からは、ベロニカのイオグランデは手放せませんでしたね。
シナリオ展開的に皆ベロニカを使おうってなる段階で、一番役に立つターンが回ってくるのは良く出来てるなあと。連武討魔行でもマダンテが大活躍だしね。
今作は攻撃魔力次第で魔法によるダメージがかなり高く出るように設定されてるので、
ベロニカみたいな魔法アタッカーキャラを活躍させられるのが良かったです。
本来魔法使い職はMP消費というコストや、キャラ自体の耐久性の低さという難点があるかわりに高火力・複数同時攻撃といったメリットがあって然るべきなのに、
特技がローコストハイリターンすぎた作品ではそのお株を奪われ気味でしたからね。
まあ今作も結局単体火力では物理スキルに叶わなくなっちゃうんですが、
前述したように今作ではお供を呼ぶボスが多いおかげで、最後まで全体火力トップのイオグランデのメリットが活きてたし、
とっておきの最終兵器マダンテもあるしで、役割が喰われているとまで感じることはなかったですね。
そういえばベロニカ自身の性能についてではないですが、
ベロニカの使う魔法は終始イオ系一強だったので他の魔法、特にメラ系の空気っぷりが悲しかったです。
全体一斉掃討のイオ系・単体火力+コスパのメラ系でDQ攻撃魔法二大巨頭なイメージだったのに、
今作は単純なダメージ量でもイオの方が上だし、MP節約の心配もあんま無いしでかつてないほどメラ系を使わなかったなー。
・セーニャ
性能面の評価で最も評価をひっくり返したのがカミュならば、
キャラ自身の魅力の評価で、最も逆転特大ホームランをかましたのがセーニャでした。
正直前半の段階では一番目立たない・今作で最も微妙なキャラだなあと思っていたのですが、
そこからまさか、魅力的なキャラ揃いの今作の中でも一番好きなキャラにまで上り詰めてくるとは思いもしませんでした。
やっぱりあの、ベロニカ死亡からの断髪覚醒展開がスマッシュヒットすぎましたね。
こういう頼りない感じのキャラが、辛い出来事を乗り越えて成長するというシチュがホント好きすぎるし、特に今作のそれは演出が絶妙すぎましたからねえ。
ベロニカのものと合わさったあのスキルパネルを見た瞬間、もうセーニャの永久スタメン固定は決まったようなものでしたよ。
だからこそ、時渡り展開とともにあの聖賢セーニャが失われてしまうのは、
キャラ性能的なロマンの上でも、キャラのパーソナリティ自体の魅力の面でもホントに惜しかったです。
ベロニカとの対比で余計に能天気っぷりが際立ってくる元のセーニャも、これはこれで可愛いのだけれど、
やっぱりあの熱い成長経緯を辿ったセーニャの圧倒的な好感度の高さには叶わないですね。
シナリオ面と同様、性能面でも前半の時点ではベホマラー習得の早いロウの陰に隠れ気味だったのですが、
こちらもやはり、あの覚醒展開を期に大逆転を起こしましたね。
元のステータス上攻撃魔法の火力はそんなに出ないのだけれど、
ヒーラー特化性能に加えて、攻防あらゆる種類の補助魔法を使いこなす圧倒的守備範囲がやはり驚異なのと、
やまびこスキルでスクルトやマジックバリアみたいな二段階強化式魔法を一気に消化したときの無敵感がたまんなかったです。
そんな夢のような大賢者セーニャも失われてしまい、またベンチに逆戻りかと危惧していましたが、
クリア後世界では敵ボスの全体火力+状態異常の厄介さが跳ね上がったため、
回復量の大きいベホマラー・ベホマズンや万能すぎるキラポンを使えるセーニャは最重要キャラといっても過言じゃなく、
結局後半は終始パーティの要としてスタメンで大活躍してくれましたね。
・シルビア
ここまで良いキャラしてると予想付いた人はなかなかいなかっただろうというくらい、素晴らしいキャラだったシルビア兄貴姉貴。
オカマキャラって元々あんま好きじゃなかったし、そこに旅芸人という要素も加わってまあネタポジションなんだろうなと思ってたんですが、
まさかこんなにストレートにカッコ良く美しいキャラだとは。
シルビアのキャラ造形の素晴らしさは、人格の根底に"騎士道精神"が流れていることにあると思います。
おかげでただのおもしろオカマってだけじゃなく、一本筋の通った勇ましく頼もしい勇者の仲間となったし、
旅芸人としての振る舞いも、彼女なりの騎士道の体現として捉えると凄くカッコイイものに映りますもんね。
発売前に公開されてたパレードの映像が、まさかあんなに痺れるシーンだったなんて誰が予想ついたでしょうか。
「男キャラにベタベタセクハラするようなテンプレオカマ描写が無かったのが良かった」みたいな意見を見ましたが、
確かにそういう下品で安っぽい描写がなく、ナチュラルに乙女成分を醸し出してる感じだったのも良かったかもなあと。
騎士道精神に溢れるゴリアテ兄貴のままだとカッコ良すぎて旅芸人としてはちょっと堅苦しくなりそうなので、
シルビア姉貴成分がいい感じにバランスを保って、騎士成分とエンターティナー成分とを両立させてくれてましたしね。
まさに男の女のいいとこどりみたいな感じで、間違いなく自分史上No.1のオカマキャラじゃないかと。
このバランス感覚や圧倒的なキャラ立ちに加え、
人格者ぶりや船をくれるなどのシナリオ上の有能さまで隙がなく、
今作の中でも1,2を争うくらいキャラ造形の完成度が高いキャラクターのように思えます。
そんな終始好感度ど安定のシルビアですが、戦闘面でも終始活躍してくれたキャラでした。
旅芸人って器用貧乏そうだしあんま使わないだろうなーと思ってたんですが
修行を重ねた騎士だけあって素のステータスが高めでなかなか崩れない上に、
ハッスルダンスで第二回復役、ツッコミで立て直し、バイキルトで火力補助と柔軟に立ち回れるのが実に頼もしく、
ウルノーガ討伐までの前半戦は最後までずっとボス戦でのスタメン安定でしたね。
元々攻撃力はやや不足気味な上、クリア後はハッスルダンスの回復量が足りなくなって、流石にそろそろ器用貧乏化…と思いきや、
そこを完璧にフォローできるチート技「レディーファースト」を覚えてまた化けてくれましたね。
火力キャラのマルティナ・ベロニカに攻撃ターンを回せるというのも優秀なんですが、特にセーニャとの相性補完が絶妙でして。
劣勢だったり守りを固めたいときはセーニャに行動譲って回復魔法orキラポン、
磐石なときはシルビア自身がバイキルトを唱えてアタッカーの火力強化…と、シルビアの立ち回り次第で戦局をコントロールできちゃうんですよね。
おかげで後半もバリバリ活躍してくれて、最終的には主人公に次ぐボス戦採用回数の多さを誇るようになりました。
自分はなんだかんだ勇者・戦士(武闘家)・魔法使い・僧侶みたいなテンプレパーティを組んじゃうタイプなので、
こういう変化球ポジションのキャラを使い込めたのは新鮮で実に楽しかったです。
・マルティナ
プレイヤーと製作スタッフからの下衆い欲望を一手に担うエロ武闘家マルティナさん。
ビジュアルのキャッチーさに加えて、
パーティインまでの経緯(武闘会での強キャラアピール、昔守れなかった勇者を今度こそ守るという決意など)も熱くて、
仲間になるのが最も待ち遠しかったキャラでした。
しかし、どうもそこがピークだったというか、
仲間になった後は、他のキャラクターたちがドラマチックな活躍をする中でやや喰われてしまった気がします。
「勇者を守る」というポジションをグレイグやベロニカに持って行かれたのと、
大樹崩壊からの再加入時に皆熱いドラマがある中、マルティナだけあんなエロ展開になってたのが痛かったかなあ。
やっぱり仲間加入後ももうちょっと熱くスポットが当たる展開がほしかったというか、
基本的な設定やビジュアルが良いキャラなだけにちょっと惜しさが残りますね。
あと、マルティナの代名詞の一つでもあるお色気技は、画的には確かに良いものなんだけど、
王家の血を引く気品ある武闘家っていうキャラ設定からはちょっと違和感もあったり。
ウインクとか投げキッスとかは、女の武器の使い方もしってる大人の女性って感じで魅力的にも見えるんだけれど、
ヒップアタックとかまでいくと、流石に絵面が間抜けすぎてやりすぎ感がありましたね。
戦闘では安定の物理攻撃特化アタッカーとして活躍してくれました。
特技の手数が多いうえに会心率が高いから、マルティナで攻撃してるととても快感があって楽しかったですね。
「素の火力を上げて特技で殴る」が最適解っぽいゲームなので最終的には槍持ち爆裂脚に落ち着くのですが、
武闘家といえば爪のイメージだったので前半戦はずっと爪装備でタイガークロー運用しちゃってて、でもこれはこれで十分強かったです。
最終的に火力面ではカミュに抜かされちゃいますが、
デビルモードで自己強化・安定して殴り続けられるというメリットもあるしで埋もれることはなかったかなと。
・ロウ
絵に描いたような、渋い魅力の光る好々爺という感じで、
一番好きなキャラとして名前が挙がるタイプではないけれど、こういうキャラが脇を固めてくれるのは凄く大事だと思います。
豊富な知識や経験・各地の有力者との人脈等で旅の指針を示してくれるのが頼もしかったですね。
ロウが加わってから、行き当たりばったり感のあった冒険が引き締まり、世界が広がった感がありました。
勇者にとって唯一の肉親という、お互いにとって特別感ある存在なこともあって、
ロウとの結びつきは他の仲間たちとはまた一風違った味わいがありました。
冥界での修行バトル→連携技のくだりとか凄く熱かったし、
時を遡るときの別れのシーンなどはグッとくるものがありました。
共に旅した仲間の方が圧倒的に親近感湧くプレイヤー側の心情からすると、
エンディング後の勇者にはイシの村でのんびりするよりも、ロウと一緒にユグノア復興の日々を送って欲しいところ。
加入時はベロニカとセーニャの性能を併せ持った強キャラという感じ、
特に回復役としてはベホマラー習得タイミングの関係で僧侶職のセーニャのお株を奪うくらいで、
大樹崩壊時までずっとメイン魔法職キャラとして使ってましたね。
再加入時もウキウキで連発するグランドクロスが便利だし、
セーニャ再加入までが遠いこともあって、ずっと第一線で活躍してくれました。
しかしセーニャ覚醒以後は、流石にあの展開でセーニャを使わないとかないわーってなるし、
最終的には攻撃魔法、回復魔法共に中途半端な感じが拭えず、
残念ながら移動時の回復要員みたいな感じになってかなり影が薄くなっちゃいました。
とはいえ中盤まで長らくスタメンを張ってくれたこともあって、別にいらない・使えないキャラみたいな印象は無いですね。
・グレイグ
11のパーティは凄く魅力的なんだけど、
強いて言えば皆細っこくて、頼もしいガチムチパワーファイターみたいなキャラが足りないかなー…なんて思っていたら、
見事その穴を完璧に埋めてくれたサプライズ枠。
ぶっちゃけ仲間入りのネタバレを踏んじゃってたんですが、それでもあの仲間入りの経緯は震えるものがありましたね。
堅物なキャラ故にパーティの中で浮かないだろうかという不安もあったのですが、
例のエロ本リアクションのシーンで一瞬にして解決されちゃいました。
パーティ内のムードメーカーであるシルビアとの繋がりを持たせたのも、そのへん解消する上で大きかったですね。
主人公カミュ、ベロニカセーニャ、マルティナロウ、そしてこのシルビアグレイグできっちり2×4の組み合わせが作れるようになるのもあって、なるほどここを繋げるのかと凄く感心しました。
大国の英雄騎士というポジションのストレートなカッコ良さに加えて、
むっつりスケベやバンデルフォン音頭といった弄りがいのある隙も兼ね備えて、
加入タイミングの遅さというハンデを物ともしない良キャラでした。
他のメンバーと最も差別化できる斧+盾の構成で使っていましたが、
パワーファイターでありながら斧スキルでのデバフ、補助魔法でのバフ、
そして回復魔法まで熟せる役割の多さで、同じ物理キャラのカミュマルティナと差別化できてましたね。
両手剣に持ち帰ればアタッカーとしても十分なダメージをたたき出せるしで、
実に万能で頼もしい、英雄の二つ名に偽りなしなキャラ性能でした。
ただ、強いと評判の仁王立ちは、
全体攻撃一手に引き受けるとすぐ死んじゃって、立て直しに追われている間にパーティの安定が崩れるのでイマイチ強さがピンと来なかった。
スカラやマホカンタ等のサポートをもっとつぎ込んだ上で使えば活きたのかなあ。
・その他サブキャラ等
・エマ
発売直後は皆頑張ってパンツをのぞきみようと盛り上がってたのに、
クリアしちゃうと案の定、disとネタ扱いの対象になってしまった幼馴染のエマちゃん。
8のミーティア姫とかもうそうだけど、
やっぱりどうしても一緒に旅をして戦ったプレイアブルヒロインの方が思い入れ強くなっちゃうもんね。
「幼馴染のエマよ!」って台詞のいかにもなメタ臭さは迷台詞感あって好き。
・ファーリス王子
DQ恒例のボンクラ王子枠ですが、
何だかんだ彼なりに民や国を想っている面も見て取れるし、勇者達のことはちゃんと立ててくれるのでそんな不快感は無かったですね。
デススコルピオンの一件が終わった後も急に覚醒するとかじゃなく、
彼なりのペースで成長している感じが良いなあと思います。
・ハンフリー
今作最大のネタキャラとして語り継がれるであろうハンフリーさん。
あまりにも堂々としたドーピングっぷりは笑わせにかかっているとしか思えませんでした。
孤児院を思う根はいい人という扱いでしたが、
にしてもやらかしたことの重さを考えるとあっさり無罪放免になってるのは流石に違和感ありましたね。
(ホメロスさんには表裏時空どっちでも容赦ないというのに…。)
勇者一行が救った今回はともかく、前回大会の時に攫ってエキス抽出されたであろう人々の安否が分からないのがマズいんですよね。
リーズレットとかマヤとかも大概だけど、死の予感を感じさせる分ハンフリーさんの方がよりたちが悪いというか、この辺もうちょいフォローしてほしかったなあと。
・セレン女王
何気に魅力的な熟女NPCが多いと評判の11ですが、
中でも特にこの人は、苦しい時に世話になったことや別れ際の名台詞等もあって印象的でした。
しかし、あれだけ悲壮感ある別れのシーンがあったにも関わらず、
ジャコラを倒してみたら海底王国が全くもって平和そのものな様子だったのはちょっと拍子抜けでした。
無事だったのはいいにしても、もっとボロボロになりながらなんとか持ちこたえた…みたいな感じの方が良かったんじゃないでしょうか。
・ニマ大師
時を遡った後にドゥルダで会った時は「ああ、そっかこの人も生きてることになるんだ!」と感動したものですが、
連武討魔行で無限魔物召喚された時は思わずこのクソBBAと叫びたくなりました。
・ホメロス
ストーリー上の立ち位置の大きさではゲマとかドルマゲスみたいになってもおかしくないのに、
どうにも小者感が拭えず、戦っても大したことないしで残念な印象の残るキャラでした。
闇堕ちの経緯からいってもそういう人格面は狙って描写してるところもあるんでしょうけれど、
ただラスボスの前座として使い捨てられるだけじゃなく、
強大な壁としてこのキャラを活かしてくれたら、より後半のストーリーにメリハリ生まれたんじゃないかなと。
・ウルノーガ(ウラノス、預言者)
こちらも本編途中まではそんなに…って感じのボスだったのですが、
クリア後の世界でいろいろな話が明かされてから面白さが見えてきたように思います。
なんといっても、実は前勇者の仲間だったという種明かしは、さり気なくネーミングや杖のデザインで伏線貼られていたこともあって衝撃的だったし、
一度は復活阻止に成功していたという裏ボスとの関係も興味深い。
勇者の親や仲間の直接の敵であり、魔王verと覚醒前魔道士verで二度闘うことができ、
表ボスでありながら裏ボスの復活を阻止し、正体は勇者を裏切った人間であり…と、こうして見るとなかなかドラマ性のある魔王だったなあと。
ただ、せっかくの面白設定でありながら、
ウラノスの設定前振りがやや不足気味だったため、話にちょっと唐突感があったのは惜しかったかな。
あとから危うさがあった〜みたいな話をちょこっと聞けましたが、
最初はローシュとセニカがイチャイチャしてるのが気に食わなくて曇ったのかとでも思ってましたw
この辺の話をもっと掘り下げられてたらさらに面白く深みある物語になったかもしれませんね。
・セニカ
今のご時世でも余裕で通用する3女賢者デザインは偉大だなー、と思わされる王道可愛いビジュアル。
あのおっぱいがラムダ姉妹に受け継がれなかったのは力を二等分しちゃったからなんでしょうか。
ベロニカとセーニャの力を一つに存在と思うと超ハイスペックだし、
さらに遡り後の世界では勇者の力まで身につけているかと思うと、とんでもない化物ですよね。
デインを唱え勇者の剣を振るう女賢者とか想像すると画的にめちゃくちゃロマン溢れてます。
グラフィック
オリジナル追加要素のある3DS版にも後ろ髪を引かれつつ、
折角なら最新鋭ハードで…とDQ11初プレイにPS4版を遊びましたが、PS4版の高画質グラフィックは今作を楽しむ上で一役かってくれたなあと。
美しいロトゼタシアの自然は本作の世界観をさらに魅力的にするし、
フィールドで思い思いに動いているモンスターたちの挙動は見ていて楽しいし、
何より今作の魅力的な仲間キャラクター達の表現、とりわけイベントシーンでの活き活きとした表情演出が良かったなと。
ゲームデザイン上の問題もあって主人公の表情は堅いのですが、
仲間たちの喜怒哀楽から複雑な感情まで読み取れる表情の豊かさは、今作のドラマチックなシナリオを素敵に彩ってくれました。
2Dイラストに頼らず、3Dモデルの力だけでここまでキャラクターの感情を見せられるのは流石最先端ハードだなあと。
普段携帯機中心であんまり最新鋭のゲームをプレイしていないだけに、余計に感心させられました。
大樹崩壊シーンとか、最後の砦での魔物との戦争とかもかなり画的なインパクトあったし、
1周目はPS4のグラフィックで本作の劇的なストーリーを存分に堪能し、
2周目は付加要素のある3DS版で単なる繰り返しにならないプレイを…という順番は我ながらいい選択だった気がします。
音楽
11はとにかく過去BGMをふんだんに使う様が豪華ドラクエBGMオールスターって感じでしたが、
その反動で、今作の新規BGMで印象に残るものがあんまり無かったようにも思えます。
今作のBGMで、これはシリーズ史に残る名曲だ!って言えるものは「愛のこもれび」(セーニャの竪琴・命の大樹のBGM)くらいじゃないかなあと。
ただ、これは新作BGMの出来そのものがイマイチとかいうよりも、
シナリオ上のいいところを過去BGMが持って行きすぎてるのが大きいように思います。
自分の中では劇中BGMの評価って使われるシーンの感動・思い出補正がかなり働いてますし、
「愛のこもれび」が抜けた評価なのも、今作の重要テーマとしてたびたび劇的な使い方をされていたからこそでしょうしね。
それをいうと今作は、ここぞっていう劇的シーンで使われるが過去作の曲ばっかりだったような…。
もちろん今作のコンセプトを考えるとそういう作りになるのは分かるし、
過去作とリンクする場面でその曲が流れるのは確かに感動する、特にラーミアBGMの演出は鳥肌ものでしたけれど、
でも、必ずしも過去BGMをチョイスしなくても良さそうな場面では、もうちょい新曲で勝負して欲しかったかなあと。
例えばカッコイイシーンで度々使われていた6ムドー戦のBGMとか、
確かに名曲だしその場面を劇的に彩ってくれるんだけれど、
でもここで「おっ」と思うような新曲が流れたら、シーンとの相乗効果もあって新たな名曲が誕生したんじゃないかという勿体なさもありますね。
その他もろもろ
●「自由度の高いゲームが正義! 一本道はクソ!」みたいな意見をよく見かける昨今ですが、
やることが膨大な状態で放り出されるとモチベーションの湧きづらいタイプとしては、別に一本道って悪くないよなあと思っていて、
そこをいうと今作はその辺のバランスが実に自分好みだったなあと。
指針を示し制限を加えてメインシナリオルートをハッキリさせてくれたうえで、
ストーリーの攻略順をある程度コントロールできたり、
オーブ集めを無視して聖地ラムダにいきなり突っ込んで周辺の魔物に苦戦してみたりとか、
自分の裁量で回り道を楽しめる余地も適度に残されてる。このくらいがベストだなあと遊びながら感じていました。
●ファルコムの軌跡シリーズにハマって以来、NPCとの会話の楽しさにすっかり目覚めた私ですが、
改めて遊んでみると、DQのNPC会話テキストって凄く楽しいなあと。
そもそも堀井雄二の独特なテキストが読んでて面白いし、
モブ一人一人にきちんと生活感があって、物語が進むにつれてモブそれぞれにも細かなドラマ性が用意されている。
シナリオのちょっとした進行度合いに応じて細かく会話内容が変わることもあって、
本作のプレイ時間の大半をモブ会話収集に費やしていた気がします。
「早く本編を進めたい、でもモブの会話を一つでも見逃したくない…」そんな葛藤に苛まれながら何度も何度も町をグルグルしていました。
あと、本編のドラマチックなシナリオを楽しむうえで、
NPC会話で得られる細かな情報が一役かってくれるのも印象的でした。
例えば今作一の名シーンと語ったセーニャの断髪覚醒シーンにしても、
「ベロニカの後を追うだけだったセーニャにこの旅は過酷、もう無理だ」みたいなモブの前振りや、
「切る髪の長さは故人への思い入れに比例する」「セーニャはベロニカと同じ髪型にしたくて髪を伸ばしていた」みたいな情報を集めていたおかげで、より感動が大きくなったように思います。
今作は次の目的地がマップに示される便利設計なこともあってか、
まっすぐメインシナリオだけを追っているだけっぽい人だと
「ベロニカとセーニャはラムダにいる親の実子ではなく、長老がある日聖賢の生まれ変わりとして見つけてきた拾われ子」
というNPC会話で聞けた重要な設定すら把握してなかったりして、けっこう差がつくもんだなあと。
●シナリオ進行に合わせて細かに変わるステータス上各キャラの肩書きが何気に楽しかったです。
大樹崩壊直後の主人公が「さすらいの魚」になってたりとかw
ずっと「ベロニカの妹」というシンプルな肩書きだったセーニャが、
大樹崩壊後の再会時に「聖賢を継ぐ者」になっていて成長を感じさせた後、
ベロニカの力を継いだ後にもう一度「ベロニカの妹」に戻るのとか凄く粋な演出だったと思います。
惜しむらくは、最終的に「勇者の相棒、導き手、祖父、盾」と大半が「勇者の〜」シリーズになるので、
ここまで来たらシルビアとマルティナも含めて全員「勇者の〜」で統一してほしかったなあと。
●3DS版のサブイベントに対してPS4オリジナル要素として用意されていたボウガンアドベンチャーですが、
全くアドバンテージとして感じられないダメダメっぷりでした。
的当てそのものがつまんないしめんどいだけなのは最悪無視すればいいとしても、
ボウガンをうっかり誤射しちゃうことがが多くて余計なストレスになっちゃったのはちょっとなあと。
●PS4オリジナル要素といえば、
カジノでのマジスロもたぶんめちゃくちゃ作りこまれてるんだろうなあというのは分かりつつも、正直何が楽しいのかさっぱりでした。
あれが楽しすぎる、やめらんないみたいな感想が少なからずあるところを見ると、
おそらくそもそも向いてないということなので、私がパチスロにハマることは一生ないだろうなあと。
●リメイク版8はコレジャナイ感あったので、今回キャラボイスを付けなかったのは正解だと思うんですが、
ちょくちょく挟まるムービーシーンの形式だと、あれでボイスが無いのはちょっとむず痒かったでしたね。
というかムービーシーンはなんかキャラの顔が普段と別人すぎて違和感が。
特にセーニャはムービーの顔だと全然可愛くなくて凄く残念でした。逆に言えば通常のモデルの出来がいいということでもあるんでしょうけど。
●久々のDQということでウキウキしながらけっこう前情報を集めてプレイしたと思うのですが、
遊んでいると、DQの前情報の出し方ってけっこう上手いなあと。
有名タイトルだけあっていろんなところで露出しているわりに、大事な部分はキッチリ隠しているというか。
序盤に仲間になるラムダ姉妹でさえ、2人の関係やベロニカが本当は10代後半だという前情報は見かけていなくて、
ベロニカが「妹のセーニャを探している」と発言した瞬間、その辺の謎がスルスルっと解けてなるほどなあと。
王女であることが推察できたマルティナにしても、
ユグノアではなくデルカダールの王女という捻りを加えて驚かせてくれましたし。
去年アホみたいに情報垂れ流しまくるポケモンサンムーンに凄くガッカリ…*2みたいなことがあっただけに、DQ公式のこのバランス感覚は凄くありがたいなあと。
もう これで 終わってもいい
ちょっとしんみりした話になっちゃいますが、
制作サイドの三大看板、特に音楽担当すぎやま先生のご年齢とかを考えると、
今作が従来の体制で作る最後の、ひいてはDQ最後のナンバリングタイトルになっちゃう可能性も否定できないと思います。
そういう中で、もう遊べないかと思っていた8以来の正統派ドラクエを久々に遊ばせてくれて、
しかもこれだけの傑作に仕上げてくれたことを本当に嬉しく思います。
それも、ただの傑作というだけでなく、
王道回帰にして過去作のオマージュシーン満載なストーリーに、シリーズの名曲オールスター。
「過ぎ去りし時を求めて」というサブタイトル。
ラストは1〜10を振り返るエンディングから、シリーズの原点ロトシリーズへの帰結……。
この"集大成感"バリバリの作りは、ただ30周年記念作というだけじゃなく、
「これが最後のナンバリングタイトルになってもいいように…」という想いが少なからず込められているんじゃないかなと。
実際今、「これが最後のDQなら、寂しいけど文句は無い。有終の美だ」と感じている自分がいて、
そういう作品を用意してくれたのはイチ、ドラクエファンとして凄く喜ばしいことだし、
堀井さんはじめスタッフたちの情熱に尊敬と感謝の念を禁じえないです。
もちろん、まだまだ新しいナンバリングタイトルが遊べるならそれはそれで大歓迎なんですけどね。
またこういう正統派な新作が来るなら、
11が王道だった分、次は6・7みたいなちょっと捻った世界観の作品か、
もしくはロトシリーズリンクの11に対して、今度は天空シリーズとのリンクを強めた作品を遊んでみたいかなあ。
大概長くなっちゃったのでこの辺で締め。お付き合いいただきありがとうございました。