「アイドルマスター2 The world is all one!!」4巻感想

なんか新作プロデュースゲームの情報も出てきましたが、そちらはもうちょい情報揃ってから語るとします。
時代はもう新しい世界に映っていくのかもしれないが、
現在進行形で、「アイマス2」の世界観の物凄く素敵な物語を紡いでいる作品がここにあるのだ。

WAOについては毎回すげーおもしれーと騒いでましたが、
もう4巻にもなると、あら今回も流石の出来ですねで済むような感覚が出てきたように思えます。
では以下そんな4巻の感想を。ネタバレ含みます。
表紙を竜宮小町がジャックしたように、今回はSprouTの出番は抑え目で、
IA大賞戦線から離脱してゆく他のアイドルたちの描写に尺を割いた感じでしたね。
アニマスの「みんななかよくトップアイドル!」とは違って、
WAOはどこまでいってもアイマス2を基にした物語だから、競争とそれに伴う勝敗が生じることは避けられないわけで。
主役のSprouT以外は物語の都合上、どうしても敗者側に回らざるを得ない。
一時創作と違って「引き立て役にしていいキャラ」というのがいないだけにこの辺難しいよね。
敗因に961プロの妨害を絡めて来たり、なるべくキャラの格を落とさないよう気を遣ってるんだなというのが伝わってきました。

でもまあ、全体的にアイドルみんなの描写が爽やかでさっぱりしていたし、
何より一人ひとりがそれを受け止め前に進もうとする姿を描いてくれたから、それほど悲壮感みたいなものが無いのはよかったです。
というかゲームのシナリオだと賞獲れなきゃバッドエンドだから負けちゃだめみたいな印象があるけど、
本来は必ずしも何か一つの栄冠を掴むことだけがアイドルたちの成功の状況じゃなかったもんね。
大賞はとれなくてもみんな引き続き人気アイドルとして支持を得ながら活躍しているし、
それぞれ精神的にも成長している。それだけで十分だと思うのだ。

続いてメインの竜宮vsジュピター。
まあここでジュピターが倒されるとも思えないし、妨害フラグもあるしで竜宮が負けるのは分かり切っていた。
IAノミネートまで進めたし実力も認められているしで、原作のシナリオよりははるかにマシだけど、
「それでも結局竜宮は負けちゃうんだな」と、残念に思う気持ちが無かったと言えばウソになる。
ゲームで何度もしつこく見せつけられたあの展開は、ある種のトラウマみたいなもので今も僕に重くのしかかっているから。

けれど、やはり実際に竜宮は負けたものの、不快感のようなものは全くなかった。
というか、勝とうが負けようが、この一連の勝負に関する僕の評価はあんまり変わらなかったと思う。
勝敗どうこうというより、竜宮のみんなが最高のステージが出来たと達成感を覚えている。それだけでもう十分に思えたのだ。
そして何より素晴らしかったのはステージ最中の竜宮と律子のやり取り
目線でパフォーマンスで心配するなとエールを送る3人。
律子の絞り出すような、「頑張れ、私の竜宮小町という一言。思わず目が潤みました。
Pとアイドルの信頼関係、お互いに対する思いやりの気持ちといった描写を大切にしている本作ですが、
特にこのシーンからは、その絆の強さのようなものが強く感じられたのです。
律子のあの、思わず漏れた一言はもうトドメの一撃って感じでしたね。
ステージが始まってしまえば、見守る事しかできないプロデューサーの闘いの辛さ、もどかしさ。そしてこぼれ出した竜宮小町への愛。
今まで見てきたどの「プロデューサー・秋月律子」描写よりも素晴らしい、最高の描写・演出でした。
それが見れた喜びだけで、竜宮の勝敗どうこうはもう二の次になってしまったのです。

けれど、やっぱり伊織だけは悔しくて泣いちゃうわけで。
そういう伊織ももちろん好きなんだけど、それ以上に励まし包み込む亜美がよかった。
「一発芸『はるるん』」のお茶目で健気な励ましから、
髪解いてマジ天使状態での、抱きしめて「いおりんの意地っ張り」のコンボは亜美株沸騰間違いなしでしょう。
ああいう亜美はなかなか見られないだけに嬉しいよね。いおあみわっほい!
なんかWAOの亜美はゲームよりも大人びているというか、
泰然自若としていて余裕がる感じだよね。普段ヘラヘラしているようでしっかり芯が通ってるのがカッコいい。
んであずささんはいつも通りあらあらうふふだから、
怒ったり悲しんだりといった感情表現を伊織が一手に引き受けているような……w

最後の後書きで人気が出たおかげで延長が認められ丁寧さを追及できたと書かれていたけど、
たぶん当初の予定ならP連れ戻し後にすぐ竜宮敗北→SprouTとジュピターの決戦って感じで、
竜宮やその他のアイドルたちの扱いは今よりおざなりになってしまっていたんじゃないかって気がしますね。
今回SprouT以外の10人に長い尺を取って丁寧に描写してくれたのを見ると、
本当にこの素晴らしい物語の話数延長が認められてよかったなと強く思います。
編集者さんの判断、何よりそれに値する評価を勝ち取ってきた裕佑先生に感謝ですね。

……と、ここまできてまだSprouTの話を全くしていないわけですがw
前巻でもうPもアイドルもすっかり地盤が固まって安定感抜群という感じですが、
今回で一つ言うと響の扱いが実に上手いなと。
ユニットとして固まってきて、実力的にも安定したけれど、竜宮やジュピターの域に至るには何かが足りない。
そんな停滞した状況で、今までずっとレッスン指導役を務めていた響にスポットが当たるのがなるほどなーと。
個人的にSprouTって、17歳トリオのダンス枠が真から響に変わったくらいの印象だったんですが、
たぶん真だと、春香や雪歩と横並びな感じになりそうだからこうはいかないかもしれない。
961プロ所属の強敵だったこともある、ダンス以外も完璧ハイスペックな響だからこそこういう役割が担えるのではないでしょうか。
WAOはPが技能面に関してはド素人なだけにその役割というのがまたデカいよね。
基本的な中心は春香だけど、Pを連れ戻す大役は雪歩に、終盤の一押しは響に担わせる。
改めてこの作品の役割振りの適材適所っぷりに感心しました。
しかもこれが、自信家な響が自分のセンスの壁にぶつかるという形で、響の掘り下げにも繋がっているのよね。
センターの春香と、ドデカい見せ場があった雪歩に比べるとちょっとだけ響が弱いかな、なんて思っていたんだけど、
終盤にもう一つこういう展開を残していたとは御見それしました。

ジュピターとの最終決戦が、人気アイドル入り乱れの「アイドルマスターフェスティバル」ってのもめちゃくちゃ熱いよね。
魔王や雪月花が漫画リレのビジュアルだったけど、流石にファンサービス程度のもので本編には出てこないかなw
何かもうプロデューサーがどんどん有能になっていくけど、
しかし事務や営業はこなせても、経歴の関係上歌やダンスを指導する技術なんかは全く無くて引け目を感じているから、
もしPが最終的にハリウッド留学を希望しても納得がいくよう伏線を積み上げているのもまた上手いよね。
まだ必ずしも留学エンドになると決まったわけでは無いかもしれないけれどw

後はまあ、いつも通り絵が可愛く綺麗でアイドルたちがとっても素敵でしたと。
真の物まねをする雪歩とか、エンドレス抱擁たかまみとか、髪留めクルクルしてる亜美とか凄く可愛かった!

話ももうだいぶ終盤という感じで、このまま行けば6巻くらいで完結でしょうか。
今回は竜宮が表紙を飾りましたが、次はまたSprouTに戻るのかな。
それ以外のアイドルたち6人ってのも考えたけど、今までのレイアウトからズレちゃうからなあ。
展開的にはジュピターが表紙ってのもわりと妥当なんだけど、流石に可能性低いかなw
次の表紙がどうなるのかも含めて、相変わらず次巻が待ち遠しくて仕方ありません。