3年ぶりに読んだSKET DANCEを再評価したり振り返ったり

SKET DANCE 1 (ジャンプコミックス)

SKET DANCE 1 (ジャンプコミックス)

篠原先生の新連載が始まったということで、
ジャンプ+のサイトで「SKET DANCE」全巻が期間限定で無料公開されていて、ここ数日ずっと読んでいました。
一日につき4〜5巻という割とキツイスケジュールだったので、一週間これにかかりっきりになっちゃいましたねw

SKET DANCEは連載当時かなり応援していた漫画で、
特に初期の十数巻くらいまではコミックスも買ったりしていて、近年のジャンプ連載作品の中ではかなり思い入れの強い作品です。
15年くらいジャンプ購読し続けていて、本誌で読んでるのに単行本も買った作品ってスケダンとワートリだけですからね。*1

スケダンといえば、ネットで話題を漁っていると大抵「作者が痛い」「シリアスパートが寒い」「劣化銀魂」みたいな感じで、
ネットのジャンプ漫画談義が基本的に黄金期至上主義なことを差し引いても、いっつもボロックソに叩かれてるイメージがあります。
作者の人格どうこうとかは、私はそういうのを持ち出すのは馬鹿げていると思う性質なのでそこは置いといて、
シリアス回のノリがちょっとアレな感じなのは……うん、まああまり否定できないのが正直なところです。
でも、ギャグ漫画としては非常にクオリティの高い作品で、
私としては、少なくとも自分が読んできたジャンプのギャグ漫画では一番の出来だとまで思っています。
今回一気読みしたときも、自分にしては珍しく声を出して笑ってしまう場面が幾度かあって、改めてそう感じました。
まあ、ギャグ漫画はそもそもセンスが自分のツボに入るかどうかの問題が大きいので人によって評価は割れるでしょうけど、
テンポよく小ネタを積み重ねて、ラストで回収して畳み掛ける構成力の高さとかはセンス云々別にしても素晴らしい。
絵柄やネタの内容もスッキリしていて読み味が良いのも好印象。(ただし修学旅行回を除く)
だいぶネタが枯渇してくるであろう終盤でも一話完結で切れ味鋭い回を残してるのも凄くて、
SKET DANCE 29 (ジャンプコミックス)
特に、表紙からハチャメチャすぎる29巻は、この時期でまだこれだけクオリティ保ってるのすげーなあと。
あとは、ギャグ主体の回でも登場人物の成長とか、シリアス回への前振りとかを挟んで物語全体での意味を持たせているのも上手いですね。

今回読んでて一つ気づいたのが、
スケダンのそういう小物を絡めた小ネタ積み重ね→回収してオチにっていうギャグ回の構成は、どことなく陣内智則辺りの芸風に似ているところがあるなあと。
陣内の映像ツッコミネタも凄く好きだったので、こういうところが自分の笑いのツボに直撃だったのかな。
あと、個性的なゲストキャラにスケット団がツッコムっていうパターンの多いこの漫画は、ゲストキャラによってかなりギャグ回のクオリティが左右されるようなところがあるなあと。
ロマンとかゲスリング部みたいな、アンケの反響によって出番増えたと思われるキャラの回はやっぱり毎回面白いし、
逆に一回で使い捨てられるようなキャラクターの回はあまり面白くない。
でも、ギャグ回でメイン張って出番一回切りってキャラは後半に出てきた数人くらいなので、
全体的にはわりとキャラクターを大事にしてる漫画じゃないかなあという気がしますね。
ちなみに、生徒会のキャラは切り捨てられないポジションにも関わらず最初凄く滑っちゃってる感じがあって、
校長の銅像を修復する回で、「あれ、あの生徒会メインでもこのレベルの面白い話作れるのか」みたいな反響が結構多かったように記憶しています。。
椿が弄りやすいキャラになってきてからは、生徒会もいい感じに馴染んてきてたかな。
初登場時から連載終了時までで、自分の中で一番株が上がったキャラは彼かもしれませんね。
ちなみにギャグ回でぱっと思いつくお気に入りなのは、
ロマン、クソゲー山野辺先生、ゲスリング部辺りのメイン回と、
ガチャガチャ回みたいな小物キャラクターが出てくる系統の回、
桃太郎改変、校歌制作、椿のTシャツ制作みたいな創作回、
チュウさんの薬でアレコレする回、
あと、スケット団3人メインで回す話全般は完成されている分安定して面白かったかなと。


ともかくそんな感じで、やっぱりギャグ漫画としては珠玉の出来だなーと再確認いたしまして。
一方、評判の宜しくない「真面目な話」についてはどうだったかというと、
今回の印象は、「思ってたほどは悪いもんでもなかった」ってとこでしょうか。
いや、連載当時も謎解き系の回とかはトリック凝ってて気に入ってたし、
人間ドラマ系の話もスイッチとヒメコの過去編までは、内容の賛否はさておき良く出来てるなあと素直に楽しんでたんですが、
「ボッスンと椿が双子」という渾身のネタをやりたいがためにいろいろ強引すぎたボッスンの過去編辺りからちょっと狂い始めた感じで。
それ以降のシリアス回はさらにお粗末なものが多かったので、どんどん印象が悪くなって行ったんだと思います。
加えて、後半からは安形妹をプッシュしての中途半端なラブコメ展開とか、
生々しすぎてどんな下ネタよりもキツかった修学旅行とか、
イマイチ好きになれなかった生徒会とスケット団の次世代キャラ展開とか、
あまり好みじゃないエピソードが増えて間延びし始めたので、
合間合間のギャグ回はやっぱりめちゃくちゃ面白いと思いつつ、作品全体には少しずつ冷めていったように記憶していますね。
コミックス買うの止めちゃったのも、確かサーヤ登場→修学旅行の辺りだった気がするし。

シリアス回、特に後半のもので個人的に一番宜しくないと思うのは、
不良とか悪徳教師とか、薄っぺらい悪役を使った話作りに頼りすぎているきらいがあるところですね。
椿とデイジーの話・忍者キリの話・大阪旅行の話とか、当時冷めた気持ちで読んでいた中盤以降のシリアス回はいずれも、そういうキャラを使った話なんですよね。
パターン化しすぎて「またこういうのかー」ってなっちゃうし、
バトル漫画じゃないから「ぶっ飛ばしてスッキリ!」って気分にもなれず後味も良くないし、
何よりエピソードそのものが薄っぺらく感じてしまうのがもうダメダメですね。
篠原先生が器用な作家なだけに、手癖で安易にさらっと書いてるんじゃないかなーこれって感じちゃいます。
改めて最初から最後まで通して読んでみるとホント開盟学園は生徒も教師もクズ多すぎて、
生徒会とかが学園を良くしようぜ!みたいなこと言ってるのもちょっと虚しく聞こえちゃうし、
ラストのエピソードでボスキャラの新理事長が学校改革みたいなことを言い出した時、この学校ならやむ無しだよなと思ってしまった…w
悪役に頼りすぎ問題はスケット団員の過去編にもある程度共通してるんだけど、
こっちは日常回から細かく伏線貼ったりして、
中身が充実してるのも作者の気合も伝わって来るから、そういう面での悪印象はなかったかな。

そういえばスケット団メンバー、とりわけスイッチの過去編については、
「ギャグメインの漫画でこんな重い設定つけてどうすんの」「こんなん見たらもう笑えないわ」みたいな声もあるみたいだけど、
そこについては当時も今も全然気にならなかったですね。
たぶん自分はこういう、不幸な過去設定をつけてキャラ立てするっていう手法がわりと好みなんじゃないかなーと。
とりあえずキャラ皆に不幸な過去つけとけ、みたいなノリの軌跡シリーズとかも好きですし…w
ともあれ個人的には、ああいう話があったからよりメイン三人のことを好きになれたって面の方が強いですね。
ただの一学生が人助けに拘る理由に説得力を出せるのも、ああいう話があってこそっていう側面もあるし。

ちょっと話がそれましたが、
そんな感じで今読んでもやっぱりマイナス面が目に付きがちなシリアスパートではあるのですが、
ではなんで、「思ってたほどは悪いもんでもなかった」かというと、
一つは、個人的には何だかんだスケット団のメイン3人が凄く好きだから、彼らの魅力である程度押しきれちゃうから。
微妙すぎた大阪旅行の話でも、ヒメコの代わりに体を張ってボッスンが闘う展開はちょっと来るものがあるな、とか。
筋書きが薄っぺらくても、キャラへの好感度で多少は帳消しにして読めちゃったわけです。
ただ、「人気者の生徒会に対して、はぐれ者の集まりであるスケット団」みたいな初期の立ち位置が好きだったから、
ボッスンがどんどん普通にヒーローっぽくなっていくのはちょっと微妙なところだったんだけど、
まあ、主人公がそういう過程を辿っていくのは物語上必然の展開なのかな。
んでもう一つ、まあこっちの方が圧倒的な大きな理由なんですが、
つまるところ、結局イマイチなシリアスパートが締める比重なんてそれほど大きくもないかなと。
主要キャラの過去編以外は、せいぜいどれも3,4話くらいで終わりますからね。
一週一話ずつの週刊連載読んでると、「あー、こういう展開に入っちゃったかあ」という気分になって、
そこから1ヶ月近くテンションの上がらない状態が続いちゃうから、どうしても作品全体へ熱も冷めていっちゃうんだけど、
コミックス、しかも全巻一気読みとなると、パラパラっと読めばまたすぐ面白いギャグ回パートに戻ってくるので、
テンションがすぐに回復する…というかそもそもあんまり下がらなかったのです。
連載当時、前半頃はいつか来るであろう「スイッチ加入・スケット団結成秘話編」、及び「スイッチが自分の声で喋るシーン」をかなり楽しみにしてたんですが、
ボッスン過去編(10巻)〜スケット団結成編(27巻)まであまりにも間が空きすぎて、
その間にだいぶ作品に対する熱が冷めちゃってたので、肝心のそういったシーンにも熱くなりきれなかったんですよね。
でも今回は、熱を持続したままそのシーンを読むことが出来たので、展開を知っているのに当時よりも感動できちゃったのです。
特にスイッチが喋るに至る経緯は、いろんなエピソードに前振りを仕込んでいたのもあって、
それらをしっかり覚えた状態で読むと一層くるものがあって、今更ながらちょっとホロリときちゃいました。

他にも、当時「あー、そろそろ終わるのかな」と何となく読んでいた終盤のエピソードの一つ一つが、
キャプテン、振蔵、ロマン、結城さん、ダンテ等々序盤からの名物サブキャラ一人一人の物語をきちんと精算していたり、
ラストの文化祭エピソードはオールスターできっちり飾って、
こうして見ると、概ねかなりいい感じの終わり方をしていたんだなあと。
当時あんまり印象よくなかったスケット団と生徒会の後輩も、
「次の世代に引き継いで終わる」っていう青春ものらしい良さを取り入れた分悪くもなかったかなと。
キリなんかは舎弟ポジション化してからはギャグ回でもけっこう活きていたし。
ただ、サーヤ登場からの微妙なラブコメ展開はいらなかったなーってのだけは変わらなかったですね…w
恋愛要素自体は青春モノの一つとして悪くはないと思うんだけど、
告白してから半年位放置されて、思い出したように突然セルフ失恋して都合良く身を引くサーヤとか、描写がちょっとおざなりすぎて。
ボッスンとヒメコをくっつけるための踏み台にするのならそれもアリなのかもしれませんが、
結局その2人もあんな感じで終わっちゃうし、こんな描き方するならプッシュしなくてよかったなあと。
ボッスンとヒメコのあの夫婦みたいな親子みたいな関係性自体は凄く好きだし、恋してアタフタしてるヒメコは可愛かったんですけどね。

ともあれ、何だかんだ全巻読み終わったときの読後感はかなりいい感じだったので、
非常に良い形で幕を下ろせていたんじゃないかなあと。
そして、改めて「にしてもこの漫画が32巻も続いて、こんなにきっちりした形で終われるとはなあ…」なんて改めてしみじみしたり。
スケダンが読み切り時代からちょっと刺さるもののあった漫画で、
連載始まったときもすぐにどことなく応援したくなる枠に入っていたのですが、
みるみるうちにドベ付近まで掲載順が落ちていって、
当時のジャンプは今よりも見切りが早かったこともあり、
10話すぎでオールスターキャストの演劇回が始まったところで「あ、もうここでゲームオーバーか」と悟ったものです。
実際、ロマン回ヒットの大逆転がなかったら、そういう未来もあったんじゃないかなあと…w
そこから奇跡的に持ち直して、一時的にプッシュ枠に入ったものの、
一年くらいしたら、やっぱりまたドベ2辺りが定位置になり始めて。
当時、自分の応援していた漫画*2はいずれも50〜100話くらいで打ち切られていたので、
スケットダンスもどうせまたそのパターンなんだろうなーと思っていたら、
おそらくヒメコ過去編辺りのアンケが良かったのか、その辺からまたじわじわ上がってきた、
そこからはずっと真ん中辺りでわりと安定していたように記憶しています。
それでも、いつ打ち切り候補枠に振り切れてもおかしくない漫画みたいなイメージが最後まであったので、よく生き残ってくれたもんだなあと。

それよ、こうやって一気にまとめ読みをしてひとつ感じたのが、
たぶんほとんどの漫画が、週刊連載で一週一話ずつじわじわ追うより、ある程度コミックスでまとめて読む方が面白いのかもなあと。
今一番ハマってるワートリも、コミックス読み返す推奨漫画の最たる例みたいなところあるし、
長すぎて気持ちが切れるワンピースの長編とかも、あとで一気に読むと練られてて面白かったりしますしね。
ジャンプの漫画は特に、引き伸ばし・長期化でクオリティの落ちた晩年の印象が強くなっていって、
作品全体にもなんかつまんないイメージが蔓延しちゃいがち
だから、こうやって改めて読んでみることに価値があるかもしれません。
スケダンと同じように、一時期めちゃくちゃ面白いと感じていたのに、
完結する頃にはちょっと気持ちが切れていたアイシールド21辺りも、いずれ再チャレンジしてみたいなあ…。

*1:厳密に言えばハンターハンターもなんだけど、あれは休載で間が空いた時に話を思い出すために買って読んでるって側面が強いので…

*2:もて王、P2、エムゼロなど。あとはスケットダンスより後発だけど、保険室の死神も忘れがたい